第5話 ウチ、あんさんのお母はん、好きやで!
「あれーっ、お母さーん! お兄ぃが起きてるよーっ!」
「ウソでしょ? どうせ起きて来ないと思ってまだ朝ごはん作ってないわよっ! おまけにお弁当もいらないなんて、どーすんのアンタ? ダイエットする程太ってないじゃない!」
階段を降りてリビングに行くと、母と妹はまるで俺の事をレアアイテムを見つけた様な目で見ていた。
「たまたま早く目が覚めただけだよっ、さっ、シャワーでも浴びようかな?」
「お兄ぃ、やっぱり変だぁーっ! ガッコで臭いとか言われてイジメられてるのぉーっ?」
俺の一個下の妹、
何でも吹奏楽部がそこそこ強いらしく、すぐに入部して中学から始めたフルートを頑張っている、ってのが理由みたいだが……。
「お兄が臭い訳ないだろっ、ほらっ、どうだっ!」
俺は知にギュッと抱きつき、ショートカットの髪を優しく撫でた。
「……もぅ、汗臭いよ、……でも、お兄の匂い……好き♡」
すると母さんが、
「ほらほら、アンタ達が仲いいのは母さん嬉しいけど、知は早く食べちゃいなさい!
※
「それじゃー、いってきまぁーす!」
何でも吹奏楽部は朝練があるみたいで知は俺より先に家を出て行く、……ハズなのだが、すぐに戻って来て、
「お兄ぃーっ! めっちゃ可愛い女の子が家の前に立ってて、『おはようさん』って挨拶されたんだけどぉーっっ!!」
玄関で大声で叫んでいた。
「えーっ、約束の時間より三十分も前だぞっ!」
つい口走ってしまったら、知が俺の襟を掴んで、
「お兄ぃ……いつから彼女出来たのっ?」
「えーっと、……昨日かな?」
「「えぇーーーっっ!!」」
母と知が驚いてすぐに玄関を開けた。
すぐさま母が、
「そこのアナタ! そんなトコ居ないで暑いから中入って!」
彼女を見て手招きしていた。
すると、
「あっ、お母はん、おはようございます、ほなお言葉に甘えて……」
行儀よく挨拶をしたかと思ったらズンズンと玄関の中まで入って来て、
「あんさん、おはようさん♪ 何や嬉しゅうなって、早よう来てしもたわ♪」
ニッコニコの笑顔で俺達三人を見回した。
「ウチ、昨日から悠一さんとお付き合いさせて
深々とお辞儀をした。
「まぁ、まぁ、可愛らしい! アンタっ、だから今朝早起きして来たのねっ! ヨシヨシッ!」
髪をグシャグシャにされ知にはフルートで脇腹を突かれた。
「とっ、とりあえず行かなきゃ! お兄っ、……帰ったら分かってるわねっ?」
知は彼女にペコリとお辞儀をして、慌てて走って行った。
「ほらっ、蘭華ちゃん待たせてないでアンタも早く支度しなさいっ! さぁ、狭いトコだけど上がって上がってっ!」
母さんは彼女をリビングに連れて行き、ウッキウキで話しかけてる。
俺は急いで支度をして、リビングに戻って来た……頃には二人、楽しそうに話をしていた。
「あっ! あんさんっ、あんさんのお母はん、楽しい人やなぁ、ウチ、いっぺんで好きになってしもたわ!
「いややわぁ! 蘭華ちゃん、そげん事ゆーても何もでんとよ!」
母さん、……色々おかしいぞ!
「それじゃ蘭華ちゃん! 今晩ウチにご飯食べに来なさいよ! 一人で食べるのなんて可哀想だわ!」
「ありがとうお母はん、ほなお言葉に甘えさせてもらうけぇ、よろしゅう頼みます!」
ペコリと頭を下げて俺を見上げて、
「ほな、行こか?」
手を出してきた。
「あらあら、まぁまぁ♡」
母さんは俺の背中をバシバシ叩いて、
「私が言うのも何だけど、悠一は芯の通ったいい男だから、蘭華ちゃん、えぇ買い物したな!」
「クラスで真っ先に目に付いた『お買い得品』やったけぇの!」
「「あははははははー」」
もう、……恥ずかしい。
「桜蘭、行くぞっ!」
俺はギュッと手を握って玄関を出た。
「ほな、気ぃつけてなー!」
「お母はん、いってきますー!」
母さんは俺達が見えなくなるまで手を振っていた。
「お母はん、ノリが良くてええなぁ、流石はあんさんのお母はんや!」
彼女は俺の手をブンブン振りながらとても嬉しそうだった。
「桜蘭が良ければ自分のオカンだと思ってくれて構わないからなっ!」
そう言ったら彼女はビクッとして、
「そんな事言うたらまるでウチら、何もしてへんのにもう家族みたいやないかいっ!」
真っ赤になって言うもんだから、
「母さんも喜んでるし、そんな事どうでもいいじゃんか!」
「……また出た!『じゃんかじゃんか』 でも、……ありがとうな、あんさん♪」
そう言って指を絡めて来た。
「やっぱりウチら付き
そう言ってまた、嬉しそうに手をブンブンと振って俺達は学校に向かった。
第6話につづいとーと
※※
桜 「ヤバいよ、黒桜ちゃん、文字数オーバーだよっ!」
黒桜「そんな事言っ……
♪読んで頂きありがとうございました♪
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