第3話 ウチと『恋人ごっこ』せえへんか?
今日はGW明け初日と言う事で、学校は午前中で終わった。
午前中だけだというのに何でこんなに疲れてるんだ、俺?
まぁ、原因は分かってるんだけどね。
さっ、とっとと帰って家でゲームしよっ!
と、思って帰り支度をしていたら、その疲れの元凶が声を掛けて来た。
「あんさん、この後ヒマやろ? 一緒にお昼ご飯食べに行かへん?」
暇なのは間違いないが、こうも断定されるとちょっとムカつく。
でも、こんな可愛い子(黙っていれば)と昼飯が食えるなんて、俺の高校生活にもいよいよ春がやって来たんじゃないか?
俺は努めて冷静な声で言った。
「暇じゃないけど、サクランさんとなら食べに行ってもいいかな」
すると彼女は
「ホンマ東京のオトコはスカしててイヤやわぁ、ほな、一人で食べるわ」
ツカツカと歩いて行ってしまった。
「ウソだよ! ウソやねんだよ! 俺、暇だし、サクランさんと食べに行きたいよ!」
廊下を走って追いかけ腕を掴んだ。
振り向いた彼女はニマっと笑って、
「『ウソやねんだよ』って何やソレ? 関西バカにしとるん?」
「サクランさんだって謎の方言使ってるじゃんか!」
「おっ、出た出た東京弁の『じゃんかじゃんか』覚えたで!」
彼女は『メモメモ』と言って手のひらに何か書いてるフリをしてクククと笑っている。
ちょっとだけ俺はムッとして、
「いいから一緒に昼飯食べに行くぞ!」
そう言って彼女の手首を持って歩き出した。
後ろを歩く彼女がボソっと、
「……何や東京のオトコもオトコらしいトコあるねんな」
何か言ってたけど、よく聞こえなかった。
※
女の子と二人でご飯なんて食べた事など無い俺は、何処に行ったらいいのか分からず、とりあえずファミレスに入った。
「やっぱり何処に行ってもファミレスは全国共通やね!」
とりあえずのドリンクバーで俺はアイスコーヒー、彼女は何かと何かを混ぜた謎の飲み物を持って来た。
「やっぱり東京のオトコはこういうトコ女の子と来るの慣れてるん?」
彼女は持って来た謎ドリンクをストローで混ぜながら聞いて来た。
「実は俺、……恥ずかしいんだけど女の子と二人でって、初めてでさ」
「そうなん? あんさん、慣れてる風やったで」
「そういうサクランさんはどーなの? 今まで彼氏とかいっぱい居たの?」
すると彼女はストローで謎ドリンクをチューと音を立てて飲み、
「何ゆーとるん? それやとウチが行く先々でオトコ
プリプリしながら俺のアイスコーヒーに自分のストローを差しチューっとやった。
「そんな訳あるかい! ウチ、仲良うなったらすぐ転校ばっかで彼氏なんて居た事ないねん! …………あとな、その『サクランさん』ってやめーや、『桜蘭』でええよ!」
メニューと睨めっこしながら俺の顔は見ずにボソボソと続けた。
「じゃけぇウチ、……友達おらへんねん。せっかく仲良うなってもすぐにサヨナラや、寂しいやろ、そんなん……」
あんなにテンションが高かった彼女が不意に見せた一面に俺の心臓が忙しく鳴った。
「じゃ、……じゃあ何で俺とはご飯食べに来たんだよっ!」
「…………からや」
「何? ……よく聞こえないよっ!」
「一緒に居て楽しかったからやっ! ……ウチかて一人は寂しいねん、彼氏とか作って夏の思い出とか作りたいねん! でも、……またすぐに転校するし」
「それなら俺が会いに行くよ! SNSだって繋がってるんだから、そんな切ない事言うなよ!」
彼女は俺のアイスコーヒーを取り上げて、自分のストローを差し込み飲み出した。
「俺が友達になるから、一緒に夏の思い出作ろうよっ!」
俺は、……なんて恥ずかしいセリフを口走ってるんだ?
彼女は下を向いたままズズーっと音を立てて俺のアイスコーヒーを全て飲み干した。
「せやたら、転校するまで…………ウチと『恋人ごっこ』せえへんか?」
彼女は真っ赤になりながらも俺の目見て囁いた。
その恥じらう顔を見て……俺の心臓は爆発しそうだった。
「おっ、俺で良ければ、……その、……ヨロシク」
彼女はホッと胸を撫で下ろして、
「ありがとさん、……誰でもええって訳やないけぇ、あんさんだからやで!」
空になった氷だけのグラスをストローでかき混ぜながら微笑んだ。
「全部、……飲んでしもうたから、おかわり取りに行こ!」
俺の手を取り空のグラスを持ってドリンクバーに歩き出した。
「『桜蘭スペシャル』教えたるわ、飲んでみ!」
笑顔でドリンクを混ぜ合わす彼女の姿が、とても可愛らしくて思わず頭を撫でてしまった。
「ほえぇっ?」
みるみる顔が赤くなった彼女は照れ臭そうに、
「なんやオトコの人に頭撫でられるの、気持ちええなぁ♡」
自分でも分かる、…………今の俺の顔は真っ赤だ。
第4話につづきると♡
※※
どや? キュンとしたやろ? やっとタイトル回収やで! それより、このペースで書いてて2万字で収まる?
♪読んで頂きありがとうございました♪
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