第2話 ウチな、今朝、粉物食べて来てん♪


 「あんさん、ちょっとえーか?」



 そう言って彼女、桜蘭さくらんが俺の返事を待たずに机をくっつけて来た。


 「なっ、何? サクランさん」


 「ウチ、引越しばっかでな、よう分からんけど教科書ないねん」


 グイッと俺の顔を覗き込んで

 「……一緒に見せてくれへんかの?」


 かっ、可愛い……。

 下からの上目遣い、反則的な可愛いさだった。な、何か喋らなければ……。


 何故か俺は、

 「……じゃ、じゃあサクランさん使いなよ、俺は教科書要らないから」


 などと訳も分からぬ返事をしてしまった。

 ……すると、


 「ほぇ〜、あんさん教科書要らんなんて、天才やな? でもそう言う訳にはいかんき、一緒に見よや?」


 机と共に椅子も寄って来た。

 そして、肩と肩が触れ合うと、少しだけ照れ臭そうに、



 「ちぃと、……近すぎやな?」





 やられた……。

 俺は一瞬にして彼女に心を射抜かれてしまった。



 ※

 


 そして授業が始まり、二人で教科書を見ているつもりだったのに、俺はもう彼女から目が離せなかった。


 「ん?」


 視線に気付いた彼女は、

 「なんや、……もう惚れたんか?」


 照れ照れで言ってきたので、思わず、

 「可愛いなぁ、と思って……」


 無意識に声に出して言ってしまった。


 たちまち真っ赤になった彼女は、


 「オトンのゆーた通りや、東京のオトコは調子ええて、騙されへんで!」


 人差し指をピンと立てて立ち上がった。


 クラスのみんなが一斉に俺達を見た。


 先生も、

 「おーい、ソコ、静かにしろっ!」


 怒られてしまった。

 クラスのみんなの笑い声が聞こえる中、彼女はヒソヒソ声で、


 「ホラ見ぃ、あんさんが変な事言うから怒られてしもーたきに」


 そう言って肩を軽く叩かれてしまった。



 ※



 その後も肩と肩が当たる距離で授業を受けていた俺達。


 くん、くん、

 「……何かいい匂いがするんだよなぁ?」


 思わず小声で言ってしまった。


 それには彼女も小声で反応した。


 「せやろー、今朝な、粉物こなもん食べて来てん♪」

 「粉物って、……お好み焼き?」

 「ちゃうわ! 広島焼きじゃけぇ、あんさん、そこんトコ間違えんといてや!」


 そう言う彼女の髪に目が留まり、そっと髪に触れたら彼女は驚いて、


 「なっ、ナニ? 東京のオトコは朝からソユコトするんか? ここガッコやぞ、ワレ?」


 アワアワしていたので、髪に付いていた焼きそばを取って彼女に見せた。


 「あっ、あぁ〜っっ! あんさん取ってくれたんか? 何やもうゆーて〜!」


 ホッと胸を撫で下ろして、


 「……て事は、ウチ、ずっと焼きそば付けたまま歩いたっとったんか、恥ずかしいわぁ……」


 更に俺は彼女の頬に手を伸ばした。

 すると彼女は意を決したかの様に、


 「あらためて、言うヤツやな! もう慣れたわ」


 ふぅーっと息を吐いて、


 「東京のオトコは授業中でもグイグイくんねんな、ウチ、もう腹くくったわ、好きにしーや!」


 そう言って目をつむってあごを上げて来たので、ほっぺに付いてた青のりを取ってあげた。


 「ん、んっ、♪」


 彼女は目を閉じたまま何度も顎をクイクイするので、肩を叩いて小声で教えてあげた。


 「サクランさん、青のり付いてたよ」


 「ほぇ? 今度は青のりて、……顔はあろたで! 食べる前にやけどな、歯ぁだってちゃんと磨いたし、……ホレ見てみぃ?」


 そう言ってニッとして、歯をむき出しにした。


 「な! 青のり付いてへんやろ?」


 「……ん?」


 得意気に笑った口元が気になり、今度は口元に触れようとしたら、彼女は顔を赤らめて、


 「あんさん、発情期なんか? ……まぁ、ウチは覚悟が出来たけぇ、えーけどな」


 またも目を閉じて、今度は唇を突き出して来たので肩を軽く叩いた。


 「……」


 彼女は片目だけ開けて、


 「ココまできてナニ? ウチからせぇゆー事なんか? ホンマ東京のオトコはイクジがないなぁ……て、今度はソース付いてた?」


 彼女は自分の手のひらでおでこを叩いて、


 「何やソレ? もうウチ店開けるやん!」


 一人でボケたあと、


 「……ってソコ、ツッコむトコやで! コレだから東京のオトコは……て、ソレ舐めるんかいっ!」


 ん? 俺は舌で味を確かめて、

 「コレ、……おたふくソースじゃないね?」


 彼女は目を大きく見開いて、


 「あんさん、分かるんかっ?」

 声が大きくなって、しまいには立ち上がり、


 「あんさんつうやな! コレな、広島住んじょった時に使つこうてた『ミツワソース』じゃけえの!」


 「さぁ〜くぅ〜らぁ〜っ!」

 コツン


 彼女は先生に教科書で叩かれてしまった。


 あはははははっ♪


 みんなに笑われて照れ臭そうに頭を撫でて、

 

 「あいたたたた……、もぉセンセ、ソコ角やで!」

 

 そして今度は俺に向かって小声で、


 「怒られてしもたわ、てへ!」


 クシャっと笑って舌をペロっと出した仕草が可愛らしくて、目を逸らしてしまった。


 「あんさん、顔、赤いで! ……なんやどうしたん?」


 「さっきのペロが可愛かったんだよ!」


 「ナニゆーとるん? そないな事言われたらウチかて恥ずかしゅうなってしもたわ!」


 彼女は顔を両手で隠してしまった。



 ※



 ……ん、今度は彼女が俺をじっと見てる。


 「何、……サクランさん?」


 「ウチの事ばっかゆーとるけど、あんさんもたいがいやで!」

 

 そう言って俺の頬に触れ、米粒を取った。


 「『お弁当つけてどこ行くの』やで♪」


 彼女はその米粒を口に入れ、更に小声で、



 「コレで、『おあいこ』やな♡」





 第3話につつくで〜



 ※※


 はい、『粉物こなもん回やけぇど、何や何処ぞの『左手でナンとか』さんとは関係ないでぇ!


 あんまりここで文字数費やすと、無理や!


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 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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