第11話 それじゃ早速だけどしよっか。

 食べたってつまりそういうことをしたって事だよな・・・・・・。しかも性別関係なくってこの女の貞操観念はどうなってんだ。


 百花ひさきはどや顔で話を続けた


「本当感謝してよねー。大変だったんだから、体力的な意味で。まぁ実際のところ君のやってたこととあたしの趣味がたまたまかみ合って都合がよかったてだけの話なんだけど。すれ違いが起こりそうな男女って本当に付け込みやすくてたすかるわー」


 この話が本当なら俺はこの人に間接的に助けられていたということか。


「それで結局、下田君はどうしてあんな悪いことをしたのかなー?」


 この人にだけは絶対に言っちゃいけない気がする。行動と言動から察するに絶対に口が軽いタイプだし。

 俺はたった今適当に思いついた嘘をつくことにした。


「いやまぁ、憂さ晴らし的な感じっす。僕今まで彼女出来たことないんで、カップルうぜーなみたいな……」


 頼む。バレないでくれ!!


 俺の嘘を聞いた百花ひさきは突然ケタケタと笑い始めた。


「うわ!! ちょーわかる。君全ッ然モテなさそうだしね」


 この女絶対に許さない!!!! 俺は心に固く、ひたすら固く誓いを立てた。いつの日か必ず何らかの形でこの女を痛い目にあわせてやると。


 百花はひとしきり笑うと笑いすぎて溢れた涙を人差し指で拭い、不敵な笑みを浮かべながらこう言った。


「そんなに溜まってるならさ、この後あたしの家に来なよ。何回でも相手してあげるから」


「え?」


 意外な言葉が飛び出てきて呆気に取られてしまった。

 いつもと変わらない正午、いつもと違う二人っきりの教室。


 なんでだ。さっきまで腹が立って仕方なかったのに……

 どうしてだ。窓際にいる彼女がとても魅力的に見えてくる。


 その日は六月なのにやけに暑く、エアコンも設置されていない教室に唯一あるのは五秒に一回生温い風を運んでくる扇風機だけ。

 そんなものじゃ到底この暑さはしのげない。


 彼女の汗で微妙に透けた制服や風に乗ってくる甘い香り

 気がおかしくなっても仕方ない。きっとこれは暑さのせいなんだ。


「行きます。行かせてください」


 俺は先ほど立てた出来立てほやほやの誓いをあっさり捨ててしまった。


 ちょうど補習終了のチャイムがなり俺はそそくさと荷物をまとめた。


「それじゃあ行きましょうか!」


「片付けるの早すぎ! どんだけ溜まってんの」


 そんなこんなで俺と百花ひさき先輩は学校を後にした。


 先輩の家に向かってる道中、期待と不安が募りやっぱり断ろうかとも思った。が据え膳食わぬはなんとやら。普段の俺なら、男に二言は〜とかくだらないプライドだと切り捨てもするだろう。だがこんなチャンスをみすみす逃すわけにはいかないのも事実。

 こんな事本当にやってもいいのだろうか、だが誘ってきたのは先輩の方だ。一人悶々と葛藤をしていることを俺の前を歩いてる女は気づきもしないだろう。


 誰宛かもわからない言い訳を考えていると百花先輩の住んでいるアパートについていた。

 百花先輩は玄関の鍵を開け客人である俺を先に招き入れると、ドアを背に鍵を閉めた。


「それじゃあ先にシャワー浴びてこようかな。適当に座って待ってて」


 そう促され細い廊下を通り、奥の部屋に行ってみるとそこには驚くほど何もなかった。あるのは一人用のベッドと散乱した空のペットボトル。以上それだけ。とてもJKの部屋とは思えない場所だ。


 疑問はありながらもベッドに腰をかけているとシャワーを浴び終えた先輩がオーバーサイズのTシャツ一枚で歯ブラシを咥えながら出てきた。


「つひ、シャワーどうお」


 俺は言われるままシャワーを浴びた。あっちのコンディションは緊張も相まってそこそこと言った所だ。それにしてもあの何もなかった部屋が気になる。もしかしてシャワーを浴びてる間にもぬけの殻にでもなってるんじゃなかろうか。持ち物が目当てだったらどうしよう。

 そんなことを考えながらシャワーを終え、親切にも新品の使い捨て歯ブラシがあったので歯とメンタルを磨き直した。


 歯磨きも終わりいよいよこの時がやってきた。洗面所から出て部屋を見ると暇そうにスマホを眺めてる先輩がいた。よかった。どうやら罠ではなさそうだ。ホッとして俺は先輩に声をかけた。


「あ、お風呂あがりました」


 すると先輩は妖艶な笑みを浮かべ手招きをした。


「それじゃ早速だけどしよっか。ズボン脱いで」


 ズボンとパンツを脱いで一気に戦闘準備に入った。俺の刀は上下に牽制をしている。先輩からシャンプーのいい香りがしてすでに切れ味はマックスだ。百花先輩は慣れた手つきで俺の刀を研ぎ始めた。

 なんだこれは……一人でする鍛錬とはわけが違う。

 初めて触る柔らかくも弾力のある感触、初めて見る鞘の形、初めて嗅ぐ雌の香り、初めて舐める味、初めて聴く肉と肉の弾ける音、五感全てが刺激される。

 それからのことは頭に血が上りすぎてよく覚えていない。気が付けば全てが終わってて、俺はベッドに裸の状態で腰を掛けていた。隣には先輩がスマホを見ながら横たわっている。フィニッシュまでにかかった時間は体感五分といったところか。


 初めての感想としては、正直よくわからなかった。


 肉体的に言えば気持ちがよかったけど、なんだか後悔のような罪悪感のようなモヤッとしたものが心に残った。


 本当にこんなことのために今まで沢山努力してきたのか。

 いくら考えても解の無い自問自答を心の中でしていると百花先輩が突然身の上話のようなものをし始めた。


「あたしさ、見ての通り一人暮らししてて小さいころに両親を亡くし――」


 駄目だ。話が全く入ってこない。そんなことはどうでもいいんだ。俺は今このモヤッとした気持ちが何なのか知りたくてたまらないんだ。


 百花ひさき先輩の話に適当に相槌をしてると、今日は疲れたからもう帰ってくれと追い出され、その日はそれで幕を閉じた。







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