第7話 それ嬉々として報告してくることじゃないだろ

「破局のキューピッド?」


 嫌な予感しかしない。


「そうだ。具体的には、俺が今にも告白しそうな男女の情報を仕入れるから下田がその男女の仲をどんな方法でもいいから引き裂くんだ」


 やっぱり。


「嫌だよ!! なんでそんな嫌われ役を買って出なくちゃいけないんだ!」


「あのなぁ、理由はどうあれ元の原因はお前だろ。それに何もしなくても嫌われるのは確定だ。校内はおろか登下校も別々となるとみんなの青春は三年間閉ざされることになる。だけどな、お前が引き裂く予定の仲は時間が解決してくれる。人は何度でもやり直せるんだぜ。下田」


 「いい話風にまとめるな!」


 結局一時間目の授業が始まる直前になっても決まらず時間だけが過ぎていく。午前中の授業なんかこれっぽっちも頭に入ってこなかった。だってそれどころじゃないんだもん。しかし四時間目の終わりごろには腹の中から物資の供給を知らせるサイレンが鳴り響いていた。どんなに悩んだところで腹は空く、卑しいな俺の体は。


 うじうじ考えたって仕方ないことはわかっている。ただ他に方法はないのか……

 行動しても嫌われる、行動せずとも嫌われる。先のない未来を人はどうやって選択していくのだろう。そんなことを考えながら俺は過去の偉人から学びを得たく、スマホで 偉人 悩み で検索して見つかるはずのない答えを模索していた。


 長考してる間に肉倉ししくらが俺の席までもじもじしながら近づいてきた。


「下田君。あのもしよかったら今日も一緒にお昼ご飯食べませんか?」


 正直、驚いた。昨日初めて喋ったばかりだし今日なんか朝から騒がしい感じだったというのに今度はあっちから話しかけてくるなんて。何だかとても嬉しい。


 だが


 今はそんなことをしている場合ではないのだ。仮に今日楽しく昼食を囲ったとしても鎧塚先輩から課せられた難題を解決しなければ明日はないのだから。

 下田剛しもだつよし、我慢だ。みんなの明るい未来のため泣いて馬謖ばしょくを斬るんだ!!


「ごめん。今日ちょっと用事があるから」


 ぐぬぅ……


「そうですか……わかりました。ではまた今度お誘いしますね。」


 肉倉は少し残念そうな顔をしたが快く了承してくれた。


 俺はなんてもったいないことをしたんだ。しかしまた誘ってくれるということはそれなりに好感はありそうだ。


 そんな自己犠牲の精神に浸っているのもつかの間、春人が息を切らしながら俺のもとまで駆け寄ってきた。


「おい下田、二年生に一組見つけたぞ。昼休み旧体育館の裏で告白するらしい。これはチャンスだぞ!!」


 それ嬉々として報告することじゃないだろ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る