第6話 詰み天秤

 あの後結局、俺の意見は一向に通らず鎧塚よろいづか先輩の一方的で無茶な要求を承諾するほかなく頭を抱えて教室に戻ってきた。


 春人はるとが微妙な表情で俺の席まで寄ってきた。


「おい、下田大丈夫だったか? 結局何の話で呼ばれたんだよ」


「……終わったわ」


 俺は生徒指導室で起きた出来事を一言一句誇張なしで春人に伝えた。


「は? それマジ? お前以外の奴も女子と一緒にいられなくなるってことだよな……」


 告白ブームを終わらせるってどうすればいいんだ。何をどう行動すればいいのかさっぱり分からない。


「そ、そもそも男女別々にするなんて本当に出来るのか?」


「下田。お前は知らないかもしれないが、噂だと鎧塚先輩がいた中学では持ち物検査の時不要な物を持ってきた生徒は後日、部屋中を家宅捜索されて不要物と関連性のある物も一緒に没収されたらしい。あの人は風紀のためならなんだってするはずだ」


 正直、たかがテストの平均点が下がるくらいでそこまでやるかと半信半疑な気持ちでいたが春人の話が本当ならかなりまずい。


「お前ならどうする? どうやってことを収める、春人」


「そうだな……みんなに事情を知ってもらうために話しまわるのが無難だけど……下田。お前に好きな相手が出来た時にイチャイチャせずに勉強してくれって言って納得できるか?」


「……無理だな。勉強なんて手に着くはずがない」


「そうだろ。仮にもその場で事情を理解できたとしても見えないところでいちゃつくはずだ」


 これは完全に詰んだか……。俺が原因で学校生活男女別々になるなんてことがバレたら今在籍してる先輩から同級生、はたまた来年入学してくる後輩からも罵詈雑言を浴びながら三年間を過ごすことになるだろう。というか、三年間この学校に在籍できるかすら危うい。


「……ただ」


「これは正直おすすめしないやり方だが、そんなことも言ってられないよな」


 春人は神妙な面持ちで俺にその提案を持ち掛けた。


「下田。お前がみんなの縁を切りまくるになるんだ」

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