第4話 ヤリモクRTA

肉倉ししくらさん。今日一緒に帰らない?」


 今日、初めて話してお昼を一緒に取り、

 さらには一緒に帰ってそのまま肉倉の家でゴールイン。

 完璧すぎる計画。我ながら自分のコミュニケーション能力が恐ろしい。

 いや、それは俺の能力じゃなかったな…

 だがしかし、お昼無理を言って昼食を一緒に取れた時点で確定していることがある。この女、押しに弱い!! 一緒に帰ってる途中でそうだな、気分が急に悪くなったから休ませてくれとか言って押しかける。あとはなんか流れで行けるだろ!

 そんなことを考えながら俺は肉倉に声をかけた。


「ごめんなさい。今日はその…」


 肉倉はなんだかもじもじしている。


「その?」


「は、歯医者に行かなきゃだから…」


 別に歯医者に行くことってそんなに恥ずかしいことでもないと思うが…

 でもなんかあれだな。恥じらいっていいな。

 いや、そんなことはどうでもよくて。どうする歯医者が終わるまで待つのは流石にキモイか。だが押せば行けるはず。でも歯医者待つって聞いたことねーよ。


 俺の中の理性と性欲が鬩ぎ合せめぎあってるのを感じた。


 落ち着け俺、別に慌てることないだろ。今日じゃなくてもいつだってチャンスはある。ここはグッと堪えて未来に思いをはせるんだ。


「そ、そっか。じゃあまた今度」


 くそくそくそ。なんでよりにもよって今日歯医者なんだ…

 あの大きく実った瑞々しい果実まであと少しだったのに…


 この溜まりに溜まった気持ちを直ぐにでも発散してしまいたいが、次のチャンスに向けて力を留めることを胸に誓い帰路についた。


「はぁー」


「下田! おはよう。昨日はどうだった?」


「いや、それがさぁ」


 俺は春人はるとに放課後の教室で交わしたやり取りをすべて話した。


「お、お前。ぷっ、あー、あーそうか。なるほど、なるほどね。」


 春人は笑うのをがんばって堪えてるようだが、俺の怒りが堪えられると思うなよ。


「もういい。お前には相談しない」


「ごめんごめん。でも真面目な話、お前の下心が透けて見えて適当な理由で避けられたんじゃないのか?」


「いやそんなことは……」


「がっつきすぎなんだよ。もっと余裕をみせるんだよ」


 こっちは色々我慢してるのに何で春人こいつと俺はこんなに違うんだ。

 昨日したせいでイライラが募りに募って色々限界だった。


 その時、勢いよく扉が開けられ教室が静まり返った。


「このクラスに下田剛しもだつよしという男はいるか?」


 そこには長い髪を一つに括ったスタイルのいい女が立っていた。

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