第3話 バッドコミュニケーション

 四時間目の授業も終わり昼休みが始まった。


「下田! せっかくなら昼飯に肉倉誘えよ!」


「お、おう。行ってくるわ」


 時間が空いたせいか、もう一度話しかけるのにすごくハードルを感じる。

 うわ、なんか急にめんどくさく感じてきた。だが、夢にまでみた快楽のためだ!!

 ここで避けてたら将来ダメな大人になる。そんなことでは駄目だ。

 落ち着け、俺。

 相手はカーストでいうと俺と同じ、もしくはそれより下の肉倉ししくらだぞ。

 弱気になるな! 

 そう自分に言い聞かせて俺は肉倉に声をかけた。


「…あのー肉倉さん」


「は、はい」


「よ、よかったら今日一緒にお昼食べない?」


 よし言えたぞ。いや、言えて当たり前なはずだ。

 俺の心とは裏腹に右瞼と話しかける声が震えてるのはおそらく気のせいだろう…


「あの、ごめんなさい。友達と食べる約束してて…」


 嘘だろ…肉倉って友達いたのかよ…

 やばい。心がもうすでに折れそうだ。いやしかしここで折れたら

 きっと将来大事な所でも折れてしまうに違いない。

 耐えろ。まだ見たことない景色の向こう側にいくんだ!!


「…あー、そうなんだ。じゃ、じゃあよかったらその友達も含めて一緒に食べない?」


「……わかりました。では一度一緒に食べていいか聞いてみますね」


「あ、ありがとう!」


 よしよしよし! 流れ完全に来てるぞ。おい!!

 このままどうでもいい話でもして、適当に相槌を打てば。

 勝ったな。この勝負


 五分後…


 やばい。空気おっっっも…

 結局、正面に肉倉、左右に肉倉の友達一号、二号が席を隣り合わせるように昼食をとることになったが、なんか肉倉の友達めっちゃ俺のこと睨んでるし…

 とりあえず何か、何か会話をせねば。


「み、みんなは何か部活とかやってんの?」


 肉倉の友達一号、二号が答える。


「…特に」


「…ゴニョゴニョ」


 一人はまったく会話が弾まねーし、もう一人は何言ってるか全然聞こえねー。

 購買で買ってきたパンの味が全くしない。なんだこの時間。俺今なにしてんだろ。

 誰でもいいからこのお通夜みたいな空気を一掃してくれ!!


 その時、一筋の巨乳が亀裂のある机の境界に橋を架けた。


「私も興味はあるのですが、運動が苦手で。下田君は何か部活に入られてるのですか?」


「俺もまぁ運動苦手で帰宅部なんだよね」


「そうだったんですか。私たち同じですね」


「お、同じかな?」


「同じです! 特にこれが苦手という物はありますか? 私は走ることが少し苦手でこの間も――」


 そこから肉倉はみんなに話を振り、優しく受け答え、まるで抜いた後のような清々しい気持ちで昼食を終えることができた。


 この時、俺は確信した。肉倉は見た目こそ地味系ではあるが、コミュニケーション能力でいえば断然上だということに。というか朝、会話した時も妙に話しやすかったのは単に肉倉のコミュニケーション能力が高かったからか…

 俺はまた自分と他人の差に気づき気分が落ちてしまった。


 いやでも、性格がよくてエロい体してるって最高なのでは?

 何が何でも肉倉の家でワンナイトを迎えてやる!!

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