15. 初めての麦刈り

 麦の穂が実ってから10日ほどで黄褐色に変わり収穫時期を迎えた。

 もちろん僕には『農業機器』スキルがあり、朝確認したら新しい『農業機器』が増えている。

 今回増えていた『農業機器』は『小型麦用コンバイン』だ。

 使い方は簡単、小型トラクターのように操縦席に乗り、刈り取りスイッチを押して麦に向かい進むだけ。

 ただそれだけで麦刈りをすることができ、更に麦の実と麦わらを別に貯めてくれるらしい。

 本当に『農業機器』は便利だ。

 早速使ってみよう!


「はあ、これが『小型麦用コンバイン』ですかにゃ? 『小型トラクター』の時も思いましたが、『小型』と付くわりにかなり大きな機械なのにゃ」


「そうだね。『小型トラクター』と同じ操縦席も付いているし操縦は似たような感じのはず。変わったのは……後ろにものをつなげなくなったところかな?」


「そのようですにゃ。クーオも数日前に呼んでありますから明日にはやってくるはずですにゃ。麦刈りも一日では終わらないでしょうし始めるとしますかにゃ」


「うん、そうしよう」


 僕は小型麦用コンバインの操縦席に乗り、小型麦用コンバインを起動した。

 低いうなり声を上げながらゆっくり動き始めた小型麦用コンバインは、僕の操縦に従いまっすぐ麦畑へと向かう。

 麦畑の端につき、刈り取りスイッチをONにするといよいよ麦刈りのスタートだ!


「おお、このようになっているのですかにゃ!」


「みたいだね! 楽々刈り取れてすごいよ!」


 小型麦用コンバインの先ではピンとまっすぐ巻き上げられた麦が刈り取られ、どんどん後ろへと送られていく。

 操縦席の後ろの方でも大きな音がしているということは、そこでもなにかをやっているんだろう。

 一度小型麦用コンバインを止めて様子を見にいってみると、コンバイン左手側の籠に小麦が、後ろの籠に麦わらが貯まっていっているみたいだ。

 どちらにせよ、僕はまっすぐ進んでいるだけでどんどん収穫作業が進んでいくのでとても楽しい。


 再度操縦席に乗り込み小型麦用コンバインを稼働させ収穫を続ける。

 畑の端まで来たらUターンして次の列を狩り取っていく。

 それを三周ほどしたところ、麦刈り機がストップした。

 表示を見ると小麦と麦わらの籠がいっぱいになったらしい。

 さて、どうしたものか。


「にゃ? どうしたのにゃ?」


「ああ、どうやら収穫した小麦と麦わらがいっぱいになったみたいで……」


「なるほどにゃ。でも、そういうときは『農業機器』を確認にゃ。きっと新しい『農業機器』が増えてますのにゃ」


 そんな都合のいい……と思っていたら本当にあった。

 今度の『農業機器』は『小型輸送用ケージ』ふたつと『ケージキャリアー』、『積み替え用リフト』だ。

『小型輸送用ケージ』は小麦と麦わらが入っている籠の代替品。

 これを『積み替え用リフト』を使って入れ替える。

『ケージキャリアー』は『小型輸送用ケージ』を載せることが出来る荷台だ。

 こっちはトラクターにつなげて使うらしい。


 ホーフーンにも手伝ってもらいながら何度も籠を取り替え、麦刈りを進めた。

 籠は満杯になるたび新しい物が『農業機器』に増えているから、数こそ増えたが足りなくなることはなかった。

 2日目からはクーオもやってきて食い入るように小型麦用コンバインの仕組みを観察していたね。

 これも魔道具でなんとか出来そうとのことだけど、ケットシーの魔道具ってどれだけ進んでいるんだろう?

 そのうち僕のスキルもいらなくなるんじゃないかな?

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