16. 『超巨大製粉用風車小屋』

 クーオも加わり小麦の収穫は全部終えた。

 実は収穫中に増えた『農業機器』がひとつある。

 それは『麦用小型乾燥機』だ。


 収穫した麦は乾燥させないといけないらしい。

 普通は麦と麦わらを分ける前に干して乾燥させるらしいけど、コンバインで収穫した麦は最初から分けられているためそれが出来ない。

 そんな悩みを解決してくれたのが『麦用小型乾燥機』である。

 使い方は簡単で装置の上から小麦を入れ、蓋を閉めたらスイッチを押して乾燥が終わるのを待つだけ。

 必要なだけの乾燥が終われば自動的に止まるから乾燥しすぎもない。

 本当に便利な『農業機器』だ。

 これもクーオが案だけケットシーの里に持ち帰るらしい。

 動いているところは実際に見ているし、注意事項も書き込んでいるから多少は役に立つだろう。


 小麦の乾燥も終わり、あとは小麦を小麦粉にするだけだ。

 ここでも新しい『農業機器』が活躍しそう。

 ただ……名前がね。


「『超巨大製粉用風車小屋』ですかにゃ?」


「そうらしいよ」


「『農業機器』スキルの規模で『超巨大』ですかにゃ……」


「そうらしいよ……」


 うん、名前からして困っている。

 いままで使ってきた『農業機器』はすべて『小型』だ。

 それでも人ひとりで扱うには十分過ぎるだけの大きさを持っていた。

 そこに『超巨大』なんて物が現れたらどんなサイズになるんだろう?

 しかもこれ、一度設置すると動かせなくなるみたいなんだよね。

 置く場所は慎重に選ばなくちゃいけない。

 そうなると、置く場所の最有力候補は……。


「……寝泊まりしている小屋の隣が無難だよね」


「はいにゃ。新しい井戸とは反対側、薪置き場のある方に設置しましょうにゃ」


「わかった。……うーん、本当に大きいな」


「どれくらい大きいのですかにゃ?」


「地面の部分だけでかなり大きめのお屋敷くらいの大きさがある。高さは出してみないとちょっと」


「わかりましたにゃ。出してみるにゃ」


 僕は意を決して『超巨大製粉用風車小屋』を取り出す。

 すると、僕の目の前が急に真っ暗になり、上を見上げると先が見えないほど巨大な塔が立っていた。

 その塔からは途中木の枝のように何本もの塔が飛び出しており、それらの先には必ず風車がある。

 中央にある巨大な塔にも風車が付いているみたいだ。

 さすがは『超巨大』、スケールが違う。


「うーん、想像以上に大きいにゃ」


「はいですニャ。ここで小麦粉を作れるのですかニャ?」


「名前からするとそうだと思うよ。とりあえず中に入ってみようか」


 風車小屋……というか塔の中にはいると置いてあったのはたくさんの袋と箱、大量の物をしまっておくのに十分なスペース、それらを活用するために必要な機器たちだ。

 僕にはなんとなく使い方がわかるんだけど、どうしたものか。


「バオア、ここにある機器はなんにゃ?」


「主に麦をしまっておくために使う物かな。あっちの『農業機器』は『フォークリフト』って言って前に付いている棒を箱や籠の下に刺して物を運ぶんだ」


「そういえば乾燥した小麦粉の箱には下に穴がありましたにゃ」


「フォークリフトで持ち運ぶことを前提に作られているんだろうね。僕たちじゃとてもじゃないけど重くて持ち運べなかったし」


「ですにゃぁ。それで、部屋の中央付近にある装置はなんですかにゃ?」


「あれは自動製粉機だよ。麦を入れると製粉とふるいにかける作業を一気にやってくれるんだ。つまり、あれだけで上質な小麦粉が出来ることになるね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る