14. 麦の実り

『小型ドローン』で水まきを終えたクーオは、小型ドローンとそれを操縦するための兜をスケッチして機能の注釈を書き加えたものを作り去っていった。

 あれ元にケットシーの里でも似たようなものが作れないか試作してみるのだそうだ。

 ただ、ホーフーンの読みでは『小型トラクター』と『小型耕運機』、『小型種まき機』はすぐにでも類似品を作れそうだけど、『小型ドローン』だけは苦戦しそうらしい。

 ホーフーンには『小型ドローン』が飛ぶ仕組みもわかっているみたいなんだけど、大量の水を抱えて運ぶのはかなり大変なんだそうな。

 そこをクリアしないといけないというのが理由だ。

 ホーフーンにもいい案は思い浮かばないらしいからケットシーの技術者に頑張ってもらおう。


 その後、『小型ドローン』で定期的に水をまきながら麦が育つのを待つ。

 ホーフーンの話では水を与えすぎるのもよくないらしい。

 土壌の乾き具合を見定めつつ、2日から3日おきに水をまいた。

 もっとも、僕たちが水をあまりまかなくても畑が常に湿り気を帯びているので「まいてもまかなくても大丈夫そうにゃ」というのがホーフーンの見解だが。

 ホーフーンも農業についてはあまり詳しくないらしく、ちょっと頼りない。

 僕にとっても初めての経験だから仕方がないか。


 その後、20日間ほど麦の世話をし続けた。

 外の世界は冬になる頃だろうか。

 世界樹の森は変わらず暖かいのだけど。

 僕たちの麦にも変化が出ていて青々とした麦の穂が実ったのだ。

 それもたっぷりたくさん。


「すごいですにゃ。初めての農作業でこれだけの成果とは」


「やっぱりすごいことなんだね、ホーフーン」


「当然ですにゃ。農家は土作りから始めると聞きますにゃ。それなのに、耕しただけでこの実り方はある意味異常にゃ。これが世界樹の森の力かにゃ」


「多分そうだと思う。もう刈り入れできるのかな?」


「まあ、待つにゃ。もうしばらく待てば麦が黄褐色に染まりますにゃ。そうなったら収穫ですにゃ。ちなみに、収穫時の小麦の色を『小麦色』といいますにゃ」


「そうなんだ。でも、普通の麦って20日で育つものなの?」


「普通は育たないにゃ。気候によっては年二回育てることが出来る場所もありますが、20日で育つようなものじゃありませんにゃ。おそらく、ここが世界樹の森だということが影響しているはずですにゃ」


「つまり、世界樹の恵みか。早く収穫したいね」


「そう焦らずともここまで来ればもう一息にゃ。幸い、世界樹の森には病害虫もいませんし、肩の力を抜くにゃ」


 肩の力を抜けと言われても、初めて僕が育てた麦がもうすぐ収穫できるんだから興奮してしまうのも仕方がないと思うんだ。

 あとは収穫時期を待つだけだと言うけど、どれくらいかかるんだろう?

 収穫できるようになれば、新しい『農業機器』も増えるだろうし楽しみだな。

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