Chapter 1-2
何故自分が生き残っているのか、ラファはすぐには理解できなかった。
人助けを生業として世界各地を巡ってきた修験者であるラファは、周囲の生物がことごとく灰と化していく様をぼんやりと見つめながらやがて一つの結論に辿り着く。
これが、ラグナロクか。
ラグナロク。生命体を灰に変えてしまう恐ろしいウイルスである。犯されれば何もかもが終焉に導かれることから北欧神話にある終末の日になぞらえてそう名付けられた。ラグナロク最大の特徴はその感染力にある。ラグナロクは人口密度が高いほど広く、早く感染が拡大する。逆に自然に囲まれた地域ほど未だその脅威にさらされていない場所は多い。
ワクチンの開発は全く成果がなく、完成する頃には地球上の全ての生物が死に絶えているだろう。完全に絶望的な状況だったが、偶然にも生存者が現れた。ラグナロクに対して完璧な抗体を持つ生存者は選ばれし者、エインフェリアと呼ばれるようになり世界の希望として崇められるに至った。ほんの数人にも満たないが、現在エインフェリアとなった者は皆自身の抗体をワクチン開発のために提供している。世界は滅亡と存続の狭間にあった。
ラファは自分自身もそのエインフェリアとなったのを自覚した。たった今目の前で灰になっていった女性の表情を胸に刻み込みながら、彼は誓いを立てた。
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