第76話 10点



「えぇ......」


「あ、やっぱりダメっ?」


「ダメではないけど......」


うーむ。なんでしょう......私はサイカさんと実際に会って面識があるわけじゃないけど、なんとなく性格的に合わなそうな気がする。


そんな事を考えているとナノマさんが口を開いた。


「シロネ、あなたがサイカの力になりたくてリンを紹介したい気持ちはわかるわ。けれどリンとサイカは友達ではないのよ、突然そのような事を提案してリンを困らせてはいけないわ」


いや勝手にアポ無しで来たあなたが言うか!?と一瞬思ったが、恐らくシロネが気がかりでついてきたのだろう。私はそれを不問にすることにした。


(以前からナノマさんを知っているが、彼女のクロノーツメンバーを思う気持ちは凄まじいからな......同じくらいポンコツ具合も凄まじいが)


えまちゃんがうつむく。


「そう、だよね......ごめんね、倫ちゃんっ」


「え、ああ、いや。こっちこそすまん......つーか、なんで私なの?私に会わせたところでどーするん?」


いや、そうだよ。会ったところでって言う。私にゃ何もできんぞ。


「いやあ、なんかさー。倫ちゃんに相談すると気持ちが楽になるといいますかー、落ち着くといいますかーっ」


「「「わかる」」」


美心、蓮華、ナノマさんが同時に頷いた。


「えぇ......。いやまて、ナノマさんが頷くのはおかしいでしょ!」


「?、なぜ?」


「いやいや、今日初対面なのにそんなことわかるわけ.....」


「シロネからあなたの事は聞いているわよ。それに、今日話してみてもわかるわ。あなたと居るのは心地が良い......あとツッコミのキレも良い」


「え!?あ、はい、ありがとう、ございます」


「アドリブ力はあまりないようね。そんなんじゃVTuber雑談配信を上手く回すことはできなくてよ?でもまあ、鍛えがいがあるというものよ」


「精進します......じゃ、ねーよ!!私はただの絵師だ!!VTuberじゃねえ!!」


「10」(´∀`*)「10」(´o`*)「10」(´v`*)「10」(´u`*)


美心、蓮華、えまちゃん、ナノマさんが10と書かれた札を上げた。いや、どっからだしたそれ。つーか用意してたの?


「いやあ、やはりママのツッコミは最高ですなあ!」


「りんママ、前に忌魅子の仔さん達とやった生放送でも良いツッコミしてましたもんね」


「ねーよ!なんで持ち上げてくるの!?うちの子ら」


くすくすと笑う美心と蓮華。んだ、コイツら......写真撮りてえー。かわええ。


ふと横を見るとえまちゃんも二人をみて微笑んでいた。


「まあ、とにかく......サイカさんとアルネさんの問題は様子見しとく感じかな?」


「そうだねえっ。聞いてくれてありがとー、倫ちゃん」


「いや、別に。聞くくらいなら全然......つか、今更だけどこういう内部事情とか、私みたいな部外者にいっちゃって良いの?」


「「え?」」


えまちゃんとナノマさんがこちらをみて固まった。


え、いや......まさかよな?まさか考え無しに愚痴りに来たわけじゃないよね?


「大丈夫よ!」


無い胸を張りナノマさんが高らかに言い切った。ちょ、静かにしてくれませんか。


「いいことリン?アタシ達はVTuberとしてお金を稼ぎ、プロとしてやってきた人間よ。それがそんなシンプルでヤバ目でアホなミスをすると思って?いいえ、断じて否!否といわせてもらうわ!先程も述べた通りアタシはあなたのことを前からシロネに聞いていたの。そこで既に判断していたのよ!あなたは信用するに足る人間だってね。だからこれはポンではない、あくまであなたが信用できる人間だと判断しての相談なの!わかった!?いいえ、わかりなさい!リン!!」


めちゃくちゃ早口!!完全に痛い所つかれたヤツの反応じゃねえか!!ってツッコミてえ〜〜〜!!でもこれ、ツッコミ入れたらまた倍くらいにして反論してくるんだろうなぁ。


それはそれで聞いてみたいけど、まあ、ほら......ここは空気読んどくかな。


「え、ごめん、全然わかんなかった」


「なんでよッ!!」


ぶん!とツッコミを入れるような動作で手を振るナノマさん。うわーお、期待通りの反応。やっぱこの人はプロなんだなぁ。


うんうん、としみじみ彼女の凄さを感じていると美心が時計をみて「あ」と言った。


「ごめん、あたしそろそろ配信時間だ!ここいらで失礼するねー!」


「あ、お姉ちゃん、頑張って」


「アリスちゃん頑張ってねえ〜っ」


スッとナノマさんが手を上げる。美心は一瞬意図がわからず頭上に「?」を浮かべたが、ハイタッチかと理解しパァンとタッチした。いやどういうこと!?


「託したわよ、アリス」


「え!?あ、はい!頑張ります!」


いや何を!?何を託されたんだ......うちの娘は。


つーか、やっぱりすげえな。これがVTuber界のファンタジスタ。生ける伝説。天上天下唯我独尊......自由極まってるわ。


「ところで、そろそろお腹好かない?もう13時になるし。私出すからピザでも頼もうか」


「リン、それは良いのだけど......一つだけ、先程の件で伝えたいことがあるわ」


ナノマさんが真剣な表情で私を見た。てか今更だけど名前呼び捨てなんよな。私は別に嫌じゃないし気にもしないけど、初対面の人全員にこうなのか?


流石、ナノマさんだぜ。そこに痺れる憧れ


「サイカがある掲示板で晒にあっているの」


憧れ......え?なんて?






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