第67話 蘇る記憶
「ママ!!」「うおっ、と」
私を見つけるなり抱きついてくる美心。
「すっごい人だかりだねえ!」
「おお、まあね。つーか来るんなら事前に言っといてくれたら良かったのに」
美心なら秋葉がお手伝い許可してくれたかもしれんし。
「サプライズですよ、サプライズ〜」
「そ、そうっすか」
ぎゅう、と腕を抱きしめる美心。あたーっとる、何がとは言わんが!
遙華さん、前世よか甘えっぷりが凄まじい事になっとるんだが......嬉しい反面、人前だから恥ずかしい。
そんな事を思っていると、美心がフェイちゃんのもとへと駆け寄った。
「パパ!!ずっと会いたかったー!!」
「「!?」」
パパ!?って、その子はフェイちゃんで秋葉ではないぞ!!
フェイちゃんがコスプレ衣装だからか、抱き着こうとして止まり、手を握る美心。
「ふえ、へ?」
呆気にとられるフェイちゃん。お目めをパチクリして美心を見ている。
「いやあ、パパがこんなに可愛い人だとは思いませんでしたよ〜!あのレスから想像もつかない美人さん!アリスのLive2Dありがとう!!ずっと言いたかったんだ〜!」
「まてまて、その人はフェイさんって言ってパパとは違うぞ!」
「え!!?」
ぎょっとする美心さん。それはこちらの台詞ならぬ顔だわ!
「......あ、えっと、すみません。私、フェイって名前で活動してる者です。秋葉さんとは友達で......あはは、は」
「ご、ごめんなさい。あたし、早とちりしちゃって......」
頭を下げる美心。でも、なんだろう。違和感があるな。
「大丈夫です。それに私も美心さんに会えて嬉しいです。会いたかったので」
「え、そうなんですか?なら良かったぁ〜」
あはは、うふふ、と笑い合う二人。うーわ最強じゃんなにこの光景。通常のてえてえの2.5乗の破壊力がある。
「美心さん凄いですね、あれですねコスプレしてほしいくらい可愛い」
「こ、コスプレ!?」
「どうです、ほらアリスのコスプレとか!リアルVTuberやってみません!?」
「リアルVTuber......」
ふむ、と考え込む美心。いやいやまてよ、おまえさぁ〜......フツーにめっちゃ見たいんだが?
美心のルックスなら全然できると思う。再現度高いアリスが誕生しそうだ。
「やってみたい!」
「ホントですか!?」
くるんとこちらを向く美心さん。
「ママはどう思う!?」
「......美心がやりたいならやればいいと思うよ」
「やたーっ!!」
ぐっ、と美心がガッツポーズをとる。かわええーえ。
「ありがとうございます、倫さん!」
「え、いえいえ。むしろこちらこそ。美心が嬉しそうで私も嬉しいよ」
今はただ、君に感謝を。
「それじゃあ資料でも提供しようかな。帰ったらフェイちゃんに送るよ」
「あ、いえ、Live2Dを作製したときにいただいたので大丈夫です」
にこっと微笑むフェイちゃん。
「あ、そうか。じゃあ」
......ん?
「って、いうのは妄想で、資料ありがたくいただきます!」
「「......え?」」
美心と私の「え?」が重なる。黒閃が放てるレベルでズレが無かった。いや、そこはどうでもいいんだけど。
妄想ってどういうこと......?
フェイちゃんの目が泳いでる。ばっしゃばっしゃとバタフライしてる。
おやおや、おやおやおやおやおやおやおやおやおや。
「ちょっと最近疲れてて、たまに存在しない記憶が頭の中を駆け巡る事がありまして。えへへ」
「それはもう病院いかないとでしょう......パパ」
悲しそうな目でそう娘が言った。
「ちょ、だ、誰がパパかっ」
「認知してくれないとか、最低ですね」
「......ッッ!!?」
鋭利なナイフがパパの心を斬り裂くッ!!これが秋葉の不可侵に適応した美心の斬撃か。
「ホントに秋葉なのか......フェイちゃん」
私が聞くとキョドりながらも、二回頷いた。
「ご、ごめん、ごめん」
「なぜこのような卑劣な(ママを騙し続け愉しむ)行為に及んだのですか」
美心が残念そうな表情で問う。
「え、私犯罪はしてないよ......?そんな目で見ないで、美心さん」
「すみません、ママを問い詰める時のテンションでやってしまいました」
「こわっ!?」
マジで!?とこちらを見る秋葉。私は微笑んでそれを肯定の意図した。
残念ながらマジなんだよね。このテンションで娘に来られると罪悪感で秒でゲロっちまう。実に効果的で有効な攻め方である。
「それで、どうしてママに正体を隠して近づいたのですか、パパは!」
「そ、それは、ね......仕方がなかったんだよ」
ガクリと床に手をつく秋葉。って、うお!?いつの間にかギャラリーが出来てる!?なんだこの観客は!?
「あれは初の......私の初めてのコミケの時だった」
ごくり。
「初めて会うママ、つまりはそこの倫と私はある約束をしていたんだ......そう、端的に言えばその約束が破られてしまったが故に秋葉とは別人のフェイを演じる事になったんだよね」
秋葉の供述を聞いていると、ふと忘れかけていた記憶が蘇った。それと同時に
(あ、やべえ)
と、私はその約束の内容に思い当たり戦慄した。
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