第21話 終わりの景色と消えゆく雪原。
数曲を歌い上げ、リスナーへとアリスが呼びかける。
『みてみて、これ。新衣装!ママが用意してくれたんよ。似合ってる?』
首を横にふりふりするアリス。
『似合ってる』
『可愛い』
『めっちゃ可愛いね』
『いい』
『ダッフルコート』
『おされ』
『ええやん』
『でもちょっと大人しめ』
『可愛い』
『すき』
『いいわこれ』
『つか背景綺麗すぎ』
『演出やべえなw』
『金かけてんなあ』
『早着替えすごすぎた』
『アリスたん』
『すきー』
『雪綺麗だねえ』
『コート可愛い』
アリスはコメントに対して、にこにこと満足そうにお礼を述べる。
『えへへ、ありがとー。これさ、昔着てた服をモデルに描いてもらったんだぁ。好きだったんだけど、訳あってもう着れなくなっちゃって......だからママにプレゼントしてもらったの』
――次曲のメロディが流れ始めた。
『皆はさ、忘れられない事ってある?』
アリスの質問。勿論、これはリスナーに対してでもあるが、蓮華さんへ問いかける言葉だった。
『あたしはね、昔やりのこした事があってね。その時に、きっと大切な人......妹なんだけど、泣かせちゃった事があったのね』
――優しいピアノの音は、アリスの心と同調するかのように穏やかに進行する。
『泣いてるのは、直接は見てないんだけど、きっと泣くんだろうなって思ってさ......あたし、それを思ったら、すごく寂しくなったんだ。だから、きっと妹も同じ気持ちだったんだろうなって.......』
そう。二人は同じなんだ。
寂しかった。
遙華も蓮華も、同じ気持ちで......寂しかったんだよね。
アリスはふう、と息をつく。
――そして、覚悟を決めた。
『だからね、これからもう......また会えなくなるとしても、これは......あの日の約束した歌だけは、今日、果たすよ』
『姉妹喧嘩か』
『たしかに寂しいね』
『でも仲直りできる』
『アリスなら大丈夫』
『優しいから』
『がんばれお姉ちゃん』
『会えなくなるの?』
『歌で伝えるんだね』
『妹さんみてるのかな』
『てか聞いたこと無いメロディだな』
『なにこの歌』
『がんばれアッネ』
『ねーたんがんば!!』
『おお』
『なんか流れてる』
『なにこの曲』
『知らないメロディ』
『おねええええちゃああああんん』
『がんばれえええ』
『喧嘩だめ、絶対』
『仲直りがんば』
『ケンカするほどなんとやら?』
『姉妹かあ』
『ひとりっこだからケンカできねえ』
『仲直りしよーよー』
『お姉ちゃんを遂行するんですね?』
『おねええちゃん』
実は、アリスが勇気を出せるようにあらかじめスレで告知しておいた。今日の配信は俺たちの娘の大切なモノになるから、全力で応援してくれと。
(......でも、これ......そんな必要は無かったか)
流れる『がんばれ』『大丈夫』『仲直り!』等の応援のチャットはその多さ的にスレ民だけの量ではない。多くのリスナーがみんなアリスを応援してくれてるのがわかる。
「......こいつら、あったけえな」
本当に、あったかい。皆が、アリスの背を押している。
けれど、それはアリスだけじゃない。彼女はきっと観てくれている......この声はあなたに向けてでもあるんだ。
アリスは呟くように、こう言った。
『オリジナル曲です。聴いてね......』
彼女は、曲名を告げる。
――『二人の記憶』
クリスマス、遙華が事故にあった日。
その夜に完成したこの曲を、蓮華さんに初披露する予定だった。
それは、二人しか知らない約束。
すぅっ、と呼吸をし彼女は想いを紡ぎ始めた。
『――二人で観た星に、祈る想いを♪』
背景が再び雪景色へと切り替わる。けれど、これは最初のイラストでは無い。
笑顔の姉妹が手を繋ぎ、クリスマスの街を歩く......そんなイラスト。
『――ほら、もっと暖かく抱きしめてあげる♪二人ならどこでも行けるね、寂しくない♪』
『なんつー』
『ええ曲や』
『ピアノが良い味出してるわ』
『初オリジナルか』
『すげーなこれ』
『名バラード』
『これは切り抜き確定だな』
『めっっっちゃリピートするわ』
『ああああああ!!泣けるうううあああ!!』
『いや絶叫ニキうるせえww』
『これは絶叫泣き』
『お前もうるせえww』
『いやあ、上手いね』
『歌唱力おばけ』
『艶がある』
『すごく、すごくうまい』
『なんでまだスパチャできねんだよ!』
『金 を い れ さ せ ろ』
『心が洗われますね』
『ふつくふつくしい』
『はよスパチャ解禁たのむ』
『これは数万の価値あり』
『こいつ歌うますぎだろ。何食って育ったんだ』
『うめー』
――美心の想いがメロディに乗り、輝きを増していく。おそらくは姉妹がみた夜の星々のように。
気がつけば、私は泣いていた。
(......何回泣かされんねん。娘に、私は)
アリスの後ろに映る流れ星。私は祈る。この想いがどうか蓮華さんに届いてますように、と。
歌が終わり、アリスが掠れた声で、鼻をすすりながらこう言った。
『......認めてくれなくても、いい。寂しくなったら、頼って......お願い』
励ましのコメントが流れるチャット欄。
そして、その中でただ一つ。
それに答えたメッセージがあったのを私は見逃さなかった。
『酷いこと言って、ごめんなさい。お姉ちゃん』
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お読みいただきありがとうございます!
気持ちに余裕の無い妹ですみませんでした(笑)
ただ根は素直で良い子なので嫌わないでやってください!m(_ _)m
これから更にキャラクターが増え、楽しくなっていくと思うので、応援よろしくお願いします!
【☆☆☆での評価、♡での応援をしていただけると、とてもとてもすっごーく執筆のモチベーションになるので是非是非よろしくお願いします!!m(_ _)m】
・コメント、☆、♡での応援してくださっている皆様。ありがとうございます。めちゃくちゃ励みになります。
・ギフト、サポーターに入ってくださった読者様。ありがとうございます!これからも頑張って書きます。
・レビューを書いてくださいました@koppamizinn様。とても大きなモチベーションになり執筆の助けとなりました。本当にありがとうございます。
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