第三話 風呂の温度は四十五度!

 お湯の温度は四十五度!暑い湯に浸かるのが気持ちいいんだよなぁ…仕事終わりには絶対に湯船にためて入っていたな。これからは学校終わりに湯船に浸かってっていうルーティンになるのか。


 あのクソ閻魔大王、オレを人間界に落としやがって…。


 “キミは杜撰ずさんだ”


 杜撰じゃねぇし……人間なんてみんな薄汚い罪を抱えたヤツらしか居ないだろ。


 ……あー最悪だ、こんなこと考えながら入る湯なんて全然気持ちよくない。上がる。


 扉を開けタオルを探すがなかった、そういえばニンゲンがクローゼットを開けている時にタオルが置いてあった気がする。なんでここに無いんだよ、かったるい。


「おい!ニンゲン!タオル取ってこい!」


 ……。


 そうニンゲンに呼びかけるが返事がない、無視か?無視なのか?このオレを?あのエリートエンマだぞ?ぜってぇ地獄に帰ったら灼熱地獄千年の刑にしてやる。


 “名前で呼ばないとー蒼井、もしくは翼”


 なんて言っていた閻魔大王の言葉を思い出す。ニンゲン呼びがそんなに嫌なのか?だから無視するのか??


 ……チッ


「……翼!!タオルだタオル!」


 ……。


 ……ア?


 無視か??なんなんだよ!!


 と、イライラしながらびしょびしょなまま扉を足で開け蒼井の元へ行く。


「おい!ニンゲン……なんだよ、寝てんのかよ」


 すやぁと心地よさそうに寝ている。無駄な考えをした、損した、時間を返せ、スヤスヤ寝やがって。


「……起きろニンゲン」


 なんか腹が立ったので大の字で寝ている腹に向かってかかと落としをした、蒼井はすぐに目を覚まし腹を押え苦しむ。


「げほっ!げほっ、いっ……って、って濡れてるなに……って、わああああ!!なっ、服着てよ!」

「タオルが無かったんだよ、それくらい用意してから寝ろ」

「……俺は君の召使いじゃないんだけど……」


 そう言いながらもお腹を押えながらクローゼットを開けてタオルを引っ張り出す、そしてそれを炎真に渡した。


「パジャマは畳んである服の横にあるから……」

「………」


 タオルを受け取りその場で大雑把に拭き、パジャマに袖を通す。


「お前、生きてた頃もこうやってこき使われてたんだろ」

「生きてた……頃?」


 ああそうか、記憶なかったな。


「……はやく、帰れるといいね」

「あ?」

「地獄に…君、俺と居るの嫌でしょ?」

「当たり前だろ、ニンゲンと同じ空気吸うのも嫌だね」

「……なんでそんなに人間が嫌いなの?」


 蒼井は純粋に質問をした、それは冷やかしや茶化しなんかで質問したんじゃなく、ただ純粋に気になったから。


「なんでテメェに言わなきゃならねぇんだよ」


 ピリッと空気がひりつく。炎真は蒼井の胸ぐらを掴み上げ壁に押し付ける。


「あ……っ」

「オレに干渉するな」


 ギチギチと力を入れていく、苦しくて蒼井はわかったと言った。それを聞いた炎真は手を離し自分のベットに行き布団に入った。


 げほ、げほと咳き込み床に座り込む。


 少しして蒼井は立ち上がり、風呂場へと向かった。


 それを地獄から閻魔大王は見ていた。


「はーー……エンマったら……あの子は……」


 幸先が不安、でも……。


「これは試練だよ、エンマ」


 人間の偏見を無くす為、それともう一つ、試練がある。


「それの試練を乗り越えさせることが出来るかな、蒼井君」


 これは君の力が試される時だよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る