第二話 学校探検!お父さんもいっしょだよ♡
高校と言えばこんな感じだな、という建物をしている、美しい外観というよりシンプルなデザインだ。学校名を見ると「私立紅蓮高等学校」と書かれていた。聞いた事のない高校名だ。
…入っていいのかな、でも無断で入ったら不審者として通報されるかもしれないし、かといってこのまま校門の前で立ち尽くしていてもそれはそれで不審者だし…どうしたらいいのだろう。
そう考えているのを横目に炎真は校門に近寄り遠慮なく開けようとした。
「え、え、開けちゃうの?」
「開けねぇと進まねぇだろ、オレたちが通う学校つーのはここだろうし」
「で、でも…」
「うるせぇなニンゲン!オレに指図する気か?!ああ!?」
胸ぐらを掴もうとした時、門がゆっくりと開いていく。そして向こうからスーツ姿の五十代くらいのおじさんがやってきた。にっこりと笑いこちらに歩み寄ってくる。
「ようそこ、私立紅蓮高等学校へ、炎真くん、蒼井くん」
「オマエ、誰?」
「私はここの学校の校長をしている斎藤と言います。君たちの事は軽くお父様から聞きましたよ」
「あ?」
「“お父様”…ですか?」
って一体誰のこと、なんて考えていたら誰かに肩を掴まれ抱き寄せられた。
「それは!私のことだ!」
サラァッと長く絹のような白い髪をかきあげ派手に登場したのは…
「ゲッ、閻魔大王…」
「“大王”?」
「気にしないでくれたまえ校長殿、苗字が炎真だからね、あだ名で子供達はそう呼んでくるのさ」
「それはそれは、楽しそうなご家庭で何よりです」
「家族じゃねーし」
「あはは…」
なんて話していたら閻魔大王はポケットに手をやり二枚の手帳を取り出した、それを炎真と蒼井に渡す。
「これは…学生手帳?」
閻魔大王は二人を一旦校長先生から離しコソコソと耳打ちをする。どうやら炎真と蒼井が人間界にやってきて学園生活を送るその前に閻魔大王は人間界にやってきて入学手続きやら学寮の手続きを済ませてくれていたようだ。
「オレに命令する前から準備してたのかよ!」
「早かれ遅かれキミ達には人間界で生活してもらう予定だったからね、無くしちゃダメだよ?」
「あ、ありがとうございます」
学生手帳を受け取りお礼をすると優しく頭を撫でてくれる閻魔大王、そんな閻魔大王は炎真に目をやりにっこりする。炎真の頭はハテナまみれ。
「…言いたいことあるなら言えよ、なんだよ」
「人間界だけじゃない、してもらった事には蒼井くんの様にお礼を言うのが礼儀なんだよ?」
「ああ!?お前が勝手にした事だろ!!」
「そんな調子じゃ地獄に帰ることは出来るのかな?」
「……ッ、……と、ます」
「ンー?なんだってー?」
ブチッ!と炎真はキレ「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す!!!」と叫び生徒手帳を閻魔大王に投げるがスっと避け蒼井の顔面にぶち当たった。
「はー…キミって子は……」
「い、痛い……」
「仲がよろしいんですねー」
「何処がだよじじい!!目節穴か!?」
後ろの方で校長がそう言うと炎真は威嚇するように否定した。
本当にやっていけるのかな…と心配しつつ我々閻魔大王と炎真と蒼井と校長四人で校舎を見て回ることになった。まずクラスの案内をしてくれるみたいだ。各学年4組まであるそうでその一組の人数は三十人程度だそうだ。
「二人は一年二組に在籍して頂きます」
「げ、クラスもニンゲンと一緒かよ」
「炎真、人間呼びをやめるんだと言っただろう?蒼井、もしくは翼と呼びさない」
「……ニンゲン」
「はは…」
頑固として名前で呼んではくれないみたいだ。
教室の案内も終わり、図書館や科学研究室、コンピューター室などを見て周り場所を覚える。屋内通路を通りグラウンドを見る。広くて鉄棒があったり奥にはネットで仕切られた空間がある。テニスコートだろうか?
「今日は部活が全部休みの日で見せれることが出来ないけれど我が校は部活にも力を入れているよ、野球部やサッカー部、バスケ部、バレーボール部、陸上部、テニス部、水泳部、バドミントン部、卓球部、剣道部、弓道部、柔道部が運動部であります。文化部だと吹奏楽部、合唱部、軽音楽部、美術部、写真部、文芸部、放送部、科学部、茶道部などあります」
「帰宅部とかねぇの?」
「あるにはありますが…折角なら何かしらの部活に入ってみませんか?」
「やだだるいめんどくさい、帰宅部にする」
「まったく炎真は…蒼井君はどうする?」
「お、俺も帰宅部で……部活とか苦手ですし……」
閻魔大王は大きくため息を零した。
「君たち!せっっかくの学生生活が勿体ない!」
「キョーミない」
「うぅぅ…蒼井君ーー!!」
「お、お、俺……」
「ねぇならねぇって言え」
「えと……」
「………」
学園生活謳歌しようよ!という目が凄く痛々しく刺さってくる、でもすみません、俺はどちらかというとそういうのに向いてなくて…と、スっと目線をそらすとガーン!ショック!というオーラが閻魔大王から滲み出てくる……すみません。
「まあ、じっくり考えてくださいな!お父様もそんなに落ち込まないで……」
「ううう……お父さん心配よ!」
「だーから父親面すんな!めんどくせぇ!」
抱きつこうとする閻魔大王を避けズカズカと先に進む炎真、蒼井は苦笑いを浮かべていた。
「もー疲れた、早く学寮に行きてぇんだけど、どっち?こっちか?」
「こっちですよー!」
「あ!待ってください!」
ズカズカ進んでいく炎真を追いかける校長、それを追いかける蒼井。途中後ろを振り返り閻魔大王を見ると手を振っていた、辺りを見ると夕暮れになってきてそろそろ解散の時間だと察したのだろう、閻魔大王はそのまま炎真達を見送った。
学寮に到着、部屋を開けるとツインのベットがあり机も壁沿いに二つあり窓も大きく、風呂トイレ別で部屋に完備されている、快適そうなお部屋だった。
ベットの上にはパジャマがあり、クローゼットを開けると二人のサイズに合わせた学ランがあった。
「なかなかいい部屋…流石私立高等学校……」
「ふあぁぁ……オレ風呂入る、ぜってー覗くなよニンゲン」
「の、覗かないよ……」
失礼な人だな…そう思うと炎真は服を脱ぎ散らかしフルチンになってお風呂に入っていった。
覗くなって言う割にそこら辺オープンなんだな……
脱ぎ散らかした服を拾って、畳んで炎真のベットに置いた。その後自分のベットに移動し寝転がった。なんか色々疲れたな……地獄に落ちるし、落ちたと思ったら人間の世界に戻ってくることが出来たし……
「……俺の、罪…」
俺は一体なにをして、なにをして死んだのだろう。
俺は……一体……
気付いたら俺は……
……すぅ……すぅ…………。
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