第3話 遭遇
拝啓
日本でも暑い日が続いていると思いますが、先輩はお元気でしょうか。
俺は今、南国の真っ白な砂浜で金髪美女に押し倒されています。
首筋にナイフを押し当てられた状態で。
「……」
「……」
首筋にナイフを押し当てられながら、目の前の金髪美女と無言で見つめあう。
緊張と気まずさから視線をそらし、ナイフを確認しようと視線を下げる。
すると、すぐさまナイフを押し当てる腕の力が強められ、無理やり視線を戻させられる。
いや、これは俺の方が悪かったかもしれない。
なぜなら彼女は素っ裸であり、視線を下げると彼女の素晴らしい双丘が見えてしまうのだから。
「お前は何者だ。何の罪を犯してここへ流されてきた。大した力があるようにも見えんし、大方高位貴族の娘にでも手を出したか」
「えっ?い、いや、俺は飛行機が墜落して、気づいたらここに流されていただけで」
何か変な単語が出てきた気がするが、怒らせてしまうのはマズそうなので質問に答える。
というか、答えてから気づいたが日本語なんだな。
見た目的には欧米系に見えるんだが、こちらに合わせてくれたんだろうか?
「飛行機?なんだそれはっ。適当なことを言っていないで正直に答えろっ!」
はぁ?飛行機がわからない?
彼女は船でここまでやってきたのだろうか?
いや、それでもさすがに飛行機を知らないはないだろう。
「う、嘘じゃないっ。俺は乗っていた飛行機が落ちて、気づいたら崖の向こうの砂浜に倒れていたんだ。君も同じように事故でここに流れ着いたんじゃないのか?」
「事故だと?そんな嘘で言い逃れできると思っているのか。ここは虚大陸に近い王国の流刑地にも使われる忘れられた浜辺だぞ。であればここに流されたお前も罪人だろうが」
虚大陸だと?何を言っているんだ彼女は。
こじらせちゃった人なんだろうか?海外にもコアなアニメファンはいるそうだし。
というか、流刑地というのであれば彼女も罪人ということになるはずなんだけど、それはいいのか?
「えっと、ごめん。なんか色々と話がかみ合わないというか、もう少しちゃんと話し合いをしたいからそのナイフを外してくれない?あと、いくら気温が高くて大丈夫そうだからって、ずっと裸のままはよくないと思うよ」
とりあえず、ナイフを押し当てられたままでは落ち着かないので提案してみる。
あと、ナイフも気になるが、チラチラと時折見えそうになる彼女の胸も気になってしまうので。
……まあ、男だし。
「ちっ、服を着るから後ろを向いておけっ!
逃げようとしたり、不埒な真似をしようなどと考えるなよ。
お前程度の腕であれば、ナイフ1本であろうとどうとでもできるからなっ!」
そう言って、彼女はナイフを首筋から離して体を起こす。
その動きにつられて彼女の体に目が惹かれてしまう。
近づいたときにも見たが、やはりきれいな体をしている。
遠目にはモデル体型のように見えたが、近くで見ると鍛えているのか腕や足は細さを保ちつつしっかりとした力強さを持っている。
さすがに腹筋がはっきりと割れるほどではないようだが、身体全体が鍛えられているようだ。
胸は巨乳というほどではないが、平均より大きくハリのあるきれいな形をしている。
いや、平均以上であれば巨乳なのか?
「……死にたいのか?」
ついバカなことを考えてしまったせいで、すごい目つきでにらまれて怒られてしまった。
その低く底冷えのするような声にビビってしまい、すぐさま後ろを向いて正座した。
そもそも、なぜこんな状況になったかというと、何の警戒心もなく崖の向こう側にあったこの砂浜に足を踏み入れたことが原因だ。
あの後、崖の前にできた岩場の道を進み、崖の向こうの確認に向かった。
崖の幅自体はそこまで長くなかったようで2、30メートルほどといったところだろうか。
すぐに崖の向こうに砂浜があることがわかり、同時にその砂浜の先に再び崖があることが分かった。
実際に砂浜にまで出てみると、そこは観光ガイドの写真にでも使われそうな南国のプライベートビーチのような場所だった。
左右を崖に囲まれるきれいな白い砂浜が広がり、奥には森から続く南国の木々が日陰を作り、そして手前の崖からは滝が流れ落ちて小さな泉を作っている。
たぶん、この滝と泉がいけなかったんだ。
きれいな景色に目を惹かれ、さらに真水と思われる水が滝から流れ落ちる泉。
遭難したと思われる場所で水場を見つけたら、誰だってそこに近づくだろう。
実際に俺も近づいた。
そして出会ったわけだ、彼女に。
ちょうど滝から流れ落ちる水で水浴びをしていた彼女に。
まあ、さすがに泉のほとりで水浴びをしていたというのであれば俺も気づいたと思う。
でも滝の中で水浴びをされていると気づくのは無理だ。
降り注ぐ水が彼女の姿を隠していたし、彼女の方も降り注ぐ水の音で俺が近づいてきたことに気づかなかったのだろう。
で、そんなわけで、俺は泉のほとりまでたどり着いたわけだ。
そして、そこで見つけたわけだ、綺麗にたたまれた服を。
たぶん、それに気づいたのと滝の中から彼女が出てきたのは同時だったと思う。
ふと気配を感じて滝の方へ眼を向けると、素っ裸で髪をかき上げる彼女の姿があった。
まるで映画の中のワンシーンのようなその姿に目を奪われてしまい、俺は立ち尽くしてしまった。
けれど、その時間も一瞬だった。
俺の存在に気づいた彼女がこちらに駆け出し、後ろへと後ずさったところで気づいたら押し倒されていたから。
そして冒頭の状況へと至るという訳だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます