第4話 鼓動

時は足早に過ぎ去り、夏休みが到来した。例年なら、クーラーの効いた部屋で一人きり、音楽と本に向き合う生活が待っていた。だが今年は、例の可愛らしい子と本屋へ出かけた。まだ出会って1ヶ月も経ってないというのに。さらに、プリクラというものを撮り、お揃いのキーホルダーを買った。「まだ出会って間もないのに、こんな仲良くなるなんてね。」彼女は笑って言った。いま、全く同じことを考えていたよ、なんて言うと、彼女はとても嬉しそうにまた笑ってくれた。こんな時間は、私にとって限りなく幸せだと思えた。「君は友達。」お互い、本気でそう思い合っていた。「そういえば私ね、よく勘が当たるんだよね。実は、君が転校生として来て隣になった時、この人とは趣味が合いそうだなって思ったの。」勘が当たる、か。そんな表現を表している言葉、どっかで聞いたような気がするな。なんなら、彼女の笑い声、あの日に聞いた声に似てるような気がする。「つまり、私と君はソウルメイトだってこと!」「君は友達!」はにかみながら言う君を見て、私はなんとも言えない感情に包まれた。胸が高鳴り、頬が緩み、顔が熱を帯びてきた。何?何が起きてるの?私は彼女と別れた後も彼女の顔、名前を思い出す度に顔が熱くなっていることに気づいた。こんな感情は初めてだった。半ば混乱しながらも彼女とのメッセージ画面を見ると、気持ちが高ぶってくる。はあ、幸せだなあ。早く会いたい。……好きだなあ。

 ___??…好き?ああ、そうか。私は彼女のことが好きなのか。そう思うと納得感でやたら冷静になる。それと同時に、頭が彼女で満たされていく。別に彼女の隣に居ることができたらそれでいい。それ以外には何も必要ない。今はただ、この穏やかで幸せな毎日を過ごしていたい。失わないよう、抱きしめておきたい。それだけだ。

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