第2話 レンとシュウ
――夢を見た。親が、実の親が自分を捨て置き、どこかへ行ってしまう夢。
たしかにレンには親がいないが、レンが幼い内に鞭で殺されてしまっただけだろう。
そんな思考はよそに、夢の続きは綴られていく。レンを捨てようとしたのは父親のみで、自身を止める母親の手を振り払って家を出ていき、そして――、
「――っ!」
目が覚めた。
気を失ってから、まだ数分も経っていない。
レンは、星の動き具合からそう判断した。
「復讐っても、兎に角まずは体を万全に――」
その時だった。――視界にチラついた人影が、明確な殺意を持ってレンに攻撃してきたのは。
「……っ!」
いつでもボロボロの体を更に酷使して、レンは飛んできた人影を右に転がって避けた。
人影が攻撃したところの土が舞い上がる。
二人の視界に土が降る。
――月の煌めく夜、森の中で2つの視線が交差した。
「貴様……何者だ」
低いが、低く聞かせてるだけの声。
少なくとも中年ではない。16~20ほどの年齢の声だろうか。
「何者……脱走者って言えばいいのか?」
「脱走……?」
何を言ってるのかわからないというトーンで聞き返されるが、レンもどう答えればよいのかわからないのだ。
互いの顔が見えない距離で声を交わす。
「お前……何をするために、脱走をしたんだ……?」
どこか、救いを求めるような声だった。
ずっと待っていた存在が来たような、そんな切ない声。
「……むしろ、俺はこの社会をぶっ壊そうと思ってる」
「――!」
そこからの変化は劇的だった。
それまであった張り詰めた空気が霧散して、代わりに現れたのは待ち焦がれていた仲間を迎える雰囲気だった。
「……僕は、シュウ」
互いの顔が見えるところまで近付いて、人影――シュウは名前を明かした。
銀髪で、青藍色の瞳。顔立ちは絵画にしても形になるだろうと思えるほど整っていた。
見れば、シュウは手を差し出している。
「……俺はレン、だ」
まだ警戒をしながら、差し出された手を握った。
「――レン、よろしく!」
握った手を握り返して、シュウは笑顔でそう言った。
レンと @kubiwaneko
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