第7話 消えたエージェント

目を覚ました南条はすぐに飛び起きると、部屋の中を見渡し始めた、慌てだす南条に別の部屋にいた畠山はすぐに南条のもとへ近寄り落ち着かせた、「お帰りなさい、あなたは元の時間軸へと戻ってきた」畠山は眼鏡を抑えながら笑顔を見せた、「任務は成功したのか?」南条がそう問いかけると畠山はニヤリと笑みを浮かべながら応えた、「それは新聞で確かめてみては」ふとベットの横を振り向くと、スタンドライトの棚に置かれてある新刊の新聞があった、すぐに南条は新聞を手に取ると、新聞の大きな一面には爆弾を所持した容疑者の謎の死が取り上げられ、そしてその日の深夜に、現場付近のビルから爆発が発生したと書かれており、犯人グループによる仲間割れが原因である爆弾テロ未遂と報じられていた、「第一に爆発を阻止出来たと言うことは、成功したと言えるでしょう」 南条はくまなく記事に書かれた事件の詳細に目を通した、「畠山、ここに書かれてるビルの爆発について聞きたいことがある」 「何でしょう?」畠山は疑問を抱えながら南条の問いかけに応えた、「爆発が起きた時に住んでいた人間は誰だ?」すると畠山は隣の部屋に設置されているベットの上に置かれたタブレットを持ち出し、画面を操作しだした、「南条さん、私も詳しい詳細はわかりませんが、ロシア当局の発言によると、当時住んでいた住人は爆発事件が起きる二週間前に引っ越してきたみたいです、他については情報はありません」 「そうか、ありがとう」。

数分後には南条はスーツに着替えを済ませ、荷物を整理していた、「もうすぐここを出るんですか?」 「あぁ、すぐに出る、君は未だここにいるのか?」南条は作業しながら部屋のドアに立つ畠山と話した、「私は未だ整理が終わっていないので」そんな話をしていると南条は荷物の整理が終わった、「そう言えば青葉はどこに行った?」キャリーケースを握りながら立ち上がった南条はふと青葉について畠山に問いかけた、「青葉なら先にホテルから出ていきましたよ、」 「そうか、仕事が速いな」南条は苦笑しながらキャリーケースを引きずって寝室を抜け出し、ホテルの部屋から出ていった。





午後の2時、ホテルから出た南条は任務の時に目撃した、例の爆発が起きたビルの前へと足を運んでいた、爆発が起きたのはビルの3階、現在は焼け跡が残ったままの状態で立ち入り禁止の看板がビル前の道路に置かれていた、「まさか、住んでいた人間は、」南条は最悪な予感を感じだした、しばらくその場でビルを見つめていると南条は突然歩きだした、向かう先はビルの中だった、回りの警備を確認をしながら、隙をついてこっそりとビルの中へと侵入した、「コツ、コツ、コツ」ビル内に住んでいた住人は全員退避されており、中はまるで廃ビルと化していた、やがて数分経つと南条は爆発が起きた部屋の前へと辿り着いた、ゆっくりと黄色いテープで引かれた障害物を遮りながら部屋の中へと入ると、部屋の中は埃まみれになっていた、恐らくまだ爆発後の処理はしていないのだろう、「ゴホン、」思わず咳払いをしているとこの部屋の住人であろう人物の写真を発見した、「何て事だ!」じっと写真を見ると、そこに映るのはTIMEに所属する斎藤と研究者である早乙女の二人に囲まれて笑顔を見せるエージェントの加藤が映っていた、「プルルルル、プルルルル」すると突然携帯から着信がかかってきた、すぐに携帯を開くと電話の相手は斎藤からであった。




「随分と疲れただろ、まぁここでゆっくりでもしとけ」そう話すと斎藤はテーブルに置かれた箸を手に取り料理を食べ始めた、「頂きます」向かい側の斎藤の横で座る青葉は妙な空気感を臆することなく食べ始めた。

ここは森林の奥深くに置かれたTIMEの管理下にある別荘で、今は斎藤が生活する拠点でもある、突然斎藤からの電話があったあの日、いきなり斎藤からここまで来るようにと連絡が入り、今はこのような状況にある、「どうした?食べないのか?」しばらく口を動かさない南条に疑問を感じた斎藤は思わず問いかけてきた、「いえ、頂きます」そう応えると南条は箸を手にとって食べ始めた、しばらく三人は黙々と食事をしていると南条が突然仕事の話をし始めた、「任務中にこちらの素性を知っている男がいた、そいつは斎藤さんと出会う前に一度俺を殺そうとしていた武装集団の中にいた男だ、一体何者なんだあいつは!」南条はつい熱くなり口調が少し荒くなった、青葉はふとこちらを振り向いたが気にすることなく食べ続けた、すると斎藤は顔を険しくさせながら口を開けた、「恐らく佐竹だろう、元TIMEの工作員だった奴だ」

「元?以前はTIMEに所属していた男が何故俺達の任務に入ってきた?」南条は謎が深まるばかりであった、すると突然青葉が箸を止め南条に話しかけた、「憶測に過ぎませんが、もしかすると別の人間に依頼されているのかもしれません」その話しに南条は驚いた、「しかし、TIMEは政府の機密機関だろう、どうして情報が漏れているんだ?」すると斎藤は腕を組んで困惑した顔で南条に応えた、「佐竹が裏切ったか、それとも政府の人間が情報を漏らしているのか、調査はするべきだな」

「それよりも先にムシーナから爆弾を指示した黒幕を探しだして、設計図を奪わないと」

青葉はそう意見を伝えた、「そうだな、」南条はじっと料理を見つめたまま頭を悩ませていると、青葉は料理を食べ終わり、食器をお盆に乗せて席から立ち上がった、「私は明日サンフランシスコに行こうと思います、グレース大聖堂でムシーナの葬儀が行われてる間に、どうにかしてムシーナの携帯を入手します。」 「わかった、頼んだぞ青葉」斎藤がそう告げると青葉は台所に食器を起き部屋から出ていった、「これからどうすればいい、」南条は思わず斎藤の顔を見つめそう呟いてしまった、「そう言えば、君は加藤が潜伏していた部屋を見つけたそうじゃないか、」 「えぇ、ですが既に爆発で死んでいる可能性があると思います」すると斎藤はポケットから一枚の写真を取り出して南条の前に置いた、「加藤は未だ生きている、あれから一度記録が送られてきた、見てみろ」すると南条はすぐに写真に目を通した、写真には設計図を入手したと書かれたパソコンのメッセージが映し出されていた、「早く加藤を見つけないと最悪な事態になるという事を覚悟しておけ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る