第2話 東京の憂鬱

「あー。今日もあちーよぉ。」

東京都をぶらぶら歩いているこの黒髪に黒目でメガネの男は、、、東京。


白いTシャツに黒い短パンを履いており、いかにもそこらへんの中学生という感じのみなりをしている。


「マジ外出たら出たでカップルいっぱいとか意味わかんね〜。」

東京には苦手なものが三つある。

それは【カップル】と【リア充】と【陽キャ】だ。


実は東京、かなりの隠の気質で小学生時代、、、色々、、、あったのだ、、。


「あち〜よぉ。カップル爆発しろぉよ〜。リア充なくなっちまえよぉ。」

そんな物騒な言葉をぶつぶつ呟きながらこの男は歩いている。

常に。


「ははは。東京様。面白い事呟きますねぇ。」

東京の後ろからやってきたのは青髪に黒目のイケメン【高橋是清たかはしこれきよ】。

いっつもニコニコしている人で人脈が広い。


財政家として有名で大蔵大臣としての評価が高いこのイケメンは、東京が苦手とする【陽キャ】に分類される。


「なんだよダルマさん。用件を言って素早く俺の視界に入らない様にしろ。」


「分かりました。素早く言いますね。用件は埼玉様、神奈川様、千葉様、茨城様、栃木様、群馬様で【関東会議】をしたいとのことです。どうします?」


「決まってるだろ。俺に拒否権はない。、、、栃木ちゃん♡」


「わかりました。断っときますね?」


「ちがうちがう、受けるに決まってるだろー!?」


「はいはい。分かってますよ。すいませんついからかってしまいました。」


「ついやるな!!」



是清は知っている。

東京は栃木の事が好きすぎるということを。


栃木様、、以前是清もあったことあるが確かに可愛らしい少女で、性格は面白く、東京の婚約者に釣り合っている、と是清は思う。


「ってか今日暑くね?ダルマさん。」


「そうですねぇ。俺は会議場所や日程について他の都道府県様の部下と話し合いがあるのでさよならぁ。あ、そういえば今日京都様と大阪様が遊びにいらっしゃる日でしたよね?確か明治神宮が集合場所でしたよー。」


そう言って是清はどこかへ去ってしまった。


「あっ。忘れてた。」

東京は慌てて明治神宮まで走って行った。


♢♢♢


「あ、やっほー。東京久しぶりー!」

「東京くん、お久しぶりですね。」



明治神宮に着くと既に大阪と京都どちらもきていた。

茶髪に茶色の目をした男が大阪で薄緑色の髪に黄色の目をした男が京都だ。


「お久しぶり!二人とも!」


「東京と会うのは半年ぶりかぁ。お前、、ちょっと背高くなったんやないかぁ?」


「本当だ。東京くん、背伸びたんやない?そのうち僕らと同じくらいになりそうやね。」


そう言って二人は僕の頭をぼむぼむ撫でる。


「ちょっと、、!子供扱いしないでください!!俺もうすぐで十九ですよ!!」


「東京、20以下はまだまだ子供なんだよ。」


「そうですよ。大阪の言う通り、僕らからして見れば君はまだまだ子供なんです。」


大阪は今二十五歳で京都も二十五歳だ。

二人とも俺と七歳離れている。


「、、で?東京、悩みってのは何や?」

今日わざわざ東京都まで二人に来てもらったのは理由がある。


「あの、、ここじゃ話しづらいんでそこらへんのカフェに入りません?」

♢♢♢

クーラーがきいた室内はとても涼しい。


「、、、実は、、、俺、、、栃木ちゃんのことが好き、、なんです。」


「あぁ知っとる」

「えぇ、知ってます。」

返ってきたのはまさかの反応だった。


「えー!?知ってたんですか!?一体誰が言いふらしたんです???」


「誰かから聞いたってわけじゃないんだよ。ただ、お前を見てればわかるって言うか、、。」


「東京くんを見ていれば誰だって気づきますよ。」


うそありえない、心外だ。


そんなに俺は分かりやすいのか???


「で、言いたいことはそれだけか?」


「あー、違います違います!本題はそこじゃなくって、、その、、どうやったら栃木ちゃんと付き合えますか?」


「そんなん決まってるやろ。告れ。」


「ひどい!大阪さん!それができないから相談しているのに!!!」


「、、、確かもうじき【関東会議】があると部下から聞きましたけど、それは本当ですか?」


「あ、はい!本当です!それ栃木ちゃんも参加するやつです!!」


「なら、【関東会議】を利用して栃木さんに接触しはったらどうですか?」


「どうやって、ですか?」


「『今度栃木県に観光に行きたいんですけど、いいですか?』って言ってそこからなんとか会話を広げて栃木さんに観光案内をお願いしたらどうですか?」

京都の案は確かに良い。


「さっすが京都さん!!大阪さんと違ってとても良い案出しますね!」

東京には悪気がない、、ない、のだ。


「まぁでも僕も大阪と一緒で最善手は栃木さんに気持ちを伝えることだと思うけどね。」

「うっ。」


東京の心に浅い傷がまた刻まれた。


♢♢♢

東京の恋バナに乗った帰り道、京都と大阪はぶらぶら東京を観光していた。

実は二人とも東京で一泊してから帰る予定なのだ。


「、、大阪、【家族会議】の手紙はもう届きました?」


「あぁ、もう届いたよ。八月一日にやるんだってさ。お前んところは?」


「僕も同じで来月の一日にやる予定です。」

【家族会議】、、それは今の都道府県達が各々の親族で集まり、今自分が治めている都道府県について親族(主に両親)に報告する会議にことだ。


実はこの【家族会議】、京都が苦手とするものの一つに数えられる。


「去年みたいにすぐに終わらせて帰ったら?」


「、、そうする。」


京都は自分の家族がこの世で一番嫌いだ。

嫌いなのには理由がある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る