第2話 彼女を信じたい
「はぁ……」
学校に行けば、歩夢に会う。そこで何で浮気をしたんだと問いたい。俺より好きな奴ができたのなら別れたらいいじゃないか。それなのに俺と付き合い続けてる理由は何だろうか。
もしかしてあれか? その浮気した男と別れたときのために俺と付き合い続けているのか?
そうだとしたら歩夢は最低な人だ。いや、まだ決めつけるのは早い。今日、歩夢に昨日何をしていたのか確認しよう。決めるのはそれからだ。
朝は、いつも歩夢と登校している。聞くならその時がいいだろう。
歩夢と待ち合わせの公園へ行くと彼女は先に来ていた。
「おはようございます、匠くん」
相変わらず、眩しい笑顔……じゃなくて何、歩夢に見とれてるんだよ、俺は。
「おはよう」
聞くんだ。昨日のことを……。
横に並び、俺と歩夢は学校へ向かった。歩き出すと歩夢が俺の方へ寄ってきて手を繋ごうとする。
「匠くん、手……」
手を繋ぎたいと俺の方を見てお願いしてきた。昨日はその手で他の男と……と思いながらも俺は彼女の手を優しく握った。
すると、歩夢は嬉しそうにふふっと笑う。この嬉しそうな表情は嘘なのだろうか。
「歩夢」
「はい」
「昨日、どこに行ってたんだ?」
「昨日ですか? 昨日は、真矢さんとカフェに行ってケーキを食べていましたよ」
ケーキを食べていた? 発言や表情から嘘をついているようには見えない。動揺してる感じもしない。
「昨日、俺、歩夢のこと見かけたんだけど……」
「あら、そうなのですね。声をかけてくださっても良かったのに」
驚いた表情をし、彼女はふふっと笑う。
「真矢さんって佐野さんだよな。本当に佐野さんといただけなのか? 他の人に会ったりしてない?」
何か束縛強い彼氏みたいな質問をしている気がしたが、これは浮気をしているのか確認するための質問だ。
「どうされたんですか? 真矢さんとしか昨日は会っていませんよ」
「俺は、歩夢と知らない男がいるところ見かけたんだけど……」
そう言って俺は彼女の反応を伺った。すると彼女は、何を言ってるんだという反応で首をかしげていた。
これは、本当に何も知らない人の反応だ。なら俺が見たのは誰なんだ?
いや、浮気してる奴は浮気してますとはすぐに言わないだろう。これは何のことですかととぼけている可能性がある。
「人違いでは? 私は真矢さんとカフェでケーキを食べていた、これが昨日、私が外に出てしていたことです。疑うのであれば学校で真矢さんに聞きましょう」
浮気していないと思いたい。けど、あれを見てしまった以上……。
***
お昼、俺は歩夢と佐野さんとで学食を食べることになった。
「昨日の休日何してたかって?」
佐野さんは、オムライスを食べて幸せそうな顔をした後、俺の質問に答えてくれた。
「歩夢とカフェでケーキ食べてたよ。何? 匠っち、束縛強い系彼氏だったの?」
「い、いや、ちょっと気になって……」
あれ、じゃあ、本当に見間違い? けど、あれは確かに歩夢だった。
学校がある日は、毎日会って見ている彼女のことを間違えるはずがない。そう思いたいが、こうして歩夢と佐野さんは一緒にいたと言っている。
あの時、見たのが歩夢じゃなかったらここ最近、誘っても断られる理由は何だろうか。
「歩夢、1つ聞いてもいいか?」
「はい、何でもどうぞ」
「ここ最近、俺が誘っても断る理由は何かあるのか?」
「誘いですよね……? ごめんなさい、ここ最近、家の用事が入ってしまい断るばかりで……」
家の用事、よく嘘で使いそうなワードだけど。嘘か確かめるためにその家の用事を教えてほしいなんか気軽に聞けないしな。家庭の事情ってものがあるし。
「そっか、家の用事……」
「7月頃からは大丈夫ですのでその時は、デートしましょうね」
頬を赤くして言う彼女を見て俺は、やっぱり昨日のは人違いかと思い込み始めていた。
「うん。なんかごめんな、変な質問して」
「いえ……」
***
母さんが、昨日、紗理の家でごちそうになったからお礼にケーキ持っていきなさいと言われ、夕方、俺は彼女の家にケーキを持っていった。
「これ、昨日のお礼」
「わぁ〜ケーキだ。ありがとね」
ケーキを渡した後、紗理に俺の勘違いで浮気はしてなかったと伝えた。すると、紗理の表情が曇った。
「えっと、浮気は気のせいだったの?」
「まぁ、うん、そうだったみたい……」
「私、ずっと言えなかったんだけど、楠さん、浮気してるよ。だから、本人が言ってるのは嘘」
彼女が浮気していないとわかって沙理は良かったねと言ってくれると思ったが、彼女はそうは言ってくれなかった。
「何で嘘ってわかるんだよ。彼女は、昨日、友達といてその人以外とは会ってないって……」
「確かにその人とは会っていたかもしれないね。けど、匠が傷ついてるところ見たくないから昨日帰り際に言わなかったけど私、見たよ……楠さんと知らない男の人がホテル入っていったところ」
「人違いだって……」
そう、俺と同じで沙理も見間違えたんだ。
「見間違いじゃない。私が見たのは午前11時頃。匠が楠さんを見かけたのもお昼頃じゃないの?」
俺が歩夢らしき人を見かけたのは確かにお昼頃。俺はお昼ご飯を買いにショッピングモールへ行っていた。
「そうだけど……」
「電話して私が昨日のお昼はどうしてたかって聞くよ」
沙理は俺の前に手を差し出し、スマホを貸してと言ってくる。
「楠さんは嘘をついている」
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