慣れない土地で四苦八苦
目を閉じていた時に聞こえていた声は、私の想像していた‘人間’ではなかった。
7割くらい人間の体に耳や尻尾の生えた、いわゆるファンタジーでよく見る獣人と、人間の様に二足歩行で人語を喋る獣人が、私を囲んで何かを騒いでいた。
戸惑う私に先程、部屋を出ていった人に連れられて、1人、とても目を惹かれる人物が入ってくる。
「大丈夫?どこか気になるところはある?」
話しかけてくれたのは、背が高く、赤みがかったオレンジで、襟足がとても長いウルフカットの白衣を纏ったメガネ男子だった。
気になる事があるとすれば、やはり獣の耳と尻尾が付いている事。
……あの形は、猫かな?
まじまじと見つめていると、手を振りながら
「おーい、聞こえてるー?もしもーし。」
と、大柄の見た目に反して、可愛らしい動きをする。
はっ!まったり眺めてる場合じゃなかった!
「は、はい!大丈夫です!!」
慌て返事をしたら、思っていたより大きな声が出た。
周りの人々は、耳をピンと立て、しっぽが少し膨らんでいた。
自分でもびっくりしたんだから、みんなも驚いたよね……
するとその白衣を着た男性が、部屋中に声を響かせて笑った。
「アッハッハッハッハッ。元気そうでなにより!」
笑い飛ばして貰ったのには助かったけど、急に恥ずかしくなった。顔が、あ、暑い……。
「では改めて、どこか痛いとか、違和感があるとか、気になるところはある?」
気になるところ……
手や足など、動かせる所を確かめるように動かしてみた。
うん、特に違和感はないかな。
「大丈夫そうです。今は特に気になる所はありません。」
「そうかそうか、それは良かった。」
うんうん、と嬉しそうに頷いた。
そして、少し真面目な顔をして
「お前さん、自分の名前は分かるか?」
「え、名前ですか?私は…………」
名前なんて、生まれてから30年も経ってるんだから、分からない訳がない。
ないはず、なんだけど……。
何度も口に出そうとするのに、モヤがかかって、掴めない。
そんな私の姿を見て、やはりか……と呟くと、目を真っ直ぐ見つめながら口を開いた。
「なら·····そうだな。確認なんだが·····お前さんの覚えている事を、言える範囲でいい。教えてくれるかい?」
Zoooっと一緒に 鳴海 秋貴 @aki_outa
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