第14話 夏休みが始まる前に

 良く寝た。

 しかし、現状は変わらない。正味、平凡な高校生がたった一晩だけで解決策を出すなんてことはあり得ないのだ。

 しかも、気づいてしまった。今日は、7月12日。夏休みが始まるまで、あと5日しかない。

 学校なのだとしたら、確実に夏休みは縛りが多い。夏期講習なんかも入ってくることだろう。


 さて、どうするか?


 まず、思いついたのは『遺族会』を使うこと。今も変わらないなら、第3日曜日に行われているはず。それに参加していれば、出会うことは出来るかもしれない。ただ、参加していなかったら?参加していたとしても、見つけられなかったら?


 そうすると、一対一で会える方が良い。


 これもまた遺族会を使うことにはなるし、少々根気がいる。

 知っている限りの関係者に連絡をするのだ。と言っても、俺が知っているのは3人。

 中立に立った三本さん、生きている派の西川さん、亡くなった派の田山さん。

 ただ、今もまだ連絡先が使えるかどうかは分からないから、結局のところ賭けではある。


 でも、今のところ俺が考えられる最善策だ。それに、病院の件もある。連絡取れたらでいいと言ってくれてはいるが、きっと早めに来てほしいのだろう。薬もあるが、いつ悪くなるか分からない。こんな状況じゃ、誰だって心配になるに決まっている。


 さぁ、朝食を食べたら動きだそう。


 ――――――――――――――――

 そんなこんなで、今日一日が終わった。


 結果としては、優李ちゃんにも神音ちゃんにも会えることになった。


 正直、幸先が良すぎて心配になる。これ、後で手痛いしっぺ返しが来るんじゃないか?まぁ、その時はその時だ。


 使った手段は、ちょっと狡いかもしれない。


 まず、三本さんに留守番電話を残す。


「三本さん、お久しぶりです。松川です。覚えていますか?昔、遺族会でお世話になったんですが…………」


 次に、連絡が返ってきたら以下のことを違和感なく伝える。


「ふと、あの当時のことを思い出しまして。自分も、何か恩返しじゃないですけど手伝えることあったらなーって」


「そう、あの時よく遊んでた子いましたよね。確か、優李ちゃん?と神音ちゃん?でしたっけ。今、何してるか知ってます?」


「もし良かったら、自分が懐かしんでたよって伝えてもらえますか?」


 ミッションコンプリート!


 午後から連絡する予定あったから伝えとくねーと言われた時は、俺への連絡は明日以降になると思っていた。まさかたった数時間で、決まるとは。


 三本さん曰く、2人とも嬉しがっていたらしい。これは、俺も嬉しい。

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