第11話 イートインにて その1

 イートインスペースは、2階部分にあるらしく階段を使う。上がってみて、初めて気づいたのだがキッズスペースまであって驚く。時間が時間だからか、利用者も多くぱっと見渡す限りでは一翔の姿は見当たらない。


 着いたと連絡しようとした矢先、


「おーい、千歳ーこっちこっち。何?階段で上がってきたの?てっきりエレベーターで来ると思ってたのに」



 左側から声がした。


 振り向くと、この人の多さにも関わらず一人座っている一翔がいた。


「ごめん、待たせた。エレベーターあったのか?」


「そうだよ、気付かなかったの?」



 ほら、キッズスペースの前と指さした方向に、エレベーターはあった。


「ボク、たまにここ来るんだけど、近くの学童っていうの?子供たちが先生に連れられてさ、遊びに来てるの。なんか、懐かしくなるよね」


「あー、分からんでもないな。それ」


「だよねー。あ、これ千歳の分のアイスね」



 そう言って、渡されたのは俺の好きな抹茶モナカだった。


「あ、悪いな。ありがと」


「どういたしましてー。食べながらでいいんだけど、結局何だったん?教えてくれんでしょ、ここで」



 今から言う事に絶対大きな声を出さないでくれと前置きをし、俺は恋愛性難聴と診断されたことを伝えた。


「なるほどねぇ。そりゃ、時間かかるわけだ。で、これからどうすんの?」


「とりあえず、昔告白してくれた子に連絡しようとは思ってる」


「え、マジで?全然関係なかった場合は、それ滅茶苦茶恥ずかしくならん?」


「一応、自分に恋愛感情を向けている相手の声はより聞き取りにくいことがあるらしくて、これ基準にできるかもなとは」


「ふーん。そういう症状?があるんだね」


「まぁ、まだ分かってないことが多いとは言われてるし。ただ、俺にはこの症状が現れませんでした、出ませんでしたって時が一番怖くてな」


「あ、誰がか絞り込めないってことか」


「そう、それがなぁ」


 改めて、一翔に話してみて実感する。


 優李ちゃんと神音ちゃんがもう俺のことなんか忘れてて、他に相手がいた場合のことを。これ自体は、滅茶苦茶喜ばしい出来事ではある。あるのだが、複雑な気持ちにはならざるを得ない。


 考え込んでいる内に、アイスも食べ終わる。


 食べ終わりを待ってくれていたように、一翔が話し始める。


「あ、千歳。もしかしたら、ボクの妹ちゃん千歳のこと好きかもしれないよ」


「え?何て?」

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