第4話 説明その3

 電話越しに、滅茶苦茶𠮟られた。そりゃ、そうだ。朝の段階で、今日病院寄るんでもしかしたらご飯要らないかもですって言ってたやつが、17時過ぎにやっぱご飯作ってもらっても?なんて電話してきたら、怒るに決まっている。寮母さんに謝罪のお土産を買っていこう。


 そんなことを考えながら、診察室のドアを開ける。


「すいません。今終わりました」


「いや、大丈夫。ちょうど17時半になったところだから。ところで、どうする?そのまま椅子にする?それともベッドにする?」


「あ、椅子のままで大丈夫です」

 と、俺は腰掛ける。


「分かった。それじゃ、改めて説明を始めよう。まず、千歳君は恋愛性難聴についてどこまで知ってる?」


 問われた俺は、病名と発症条件くらいしか知らないと答えた。


「だろうね。奇病の中で比較的有名ではあるけど、多くの人は千歳君と同じ回答をすると思うよ」



 先生曰く、というか世界的な見解としては、恋愛性難聴とはこうであるらしい。


 ・2人以上から好意、恋愛感情を寄せられることで発症する可能性がある

 ・自分に対し好意、恋愛感情を向ける全員の前で、ただ一人を選ぶことで症状の緩和、完治となる


「それで、五日前にあった情報更新なんだけど。今回の更新で、奇病に関する症例が増えたんだ。ただ、病気に由来するものなのか、それとも患者本人の体質なり何なりが影響しているのかまだ区別のついていない、つけられない症例も多くてね。いわゆる玉石混交というやつだね」



 確実なものでなくて悪いねと謝りながら説明された。

 その増えた症例の中には、恋愛性難聴患者もいる。

 彼、彼女らはこういった症状を訴えたらしい。


 ・好意、恋愛感情を持っている相手の声が、聞こえなくなった。でも、他の人(家族や友人など)はクリアに聞こえる

 ・答えを出すのが遅すぎたのか、聴力が戻らなかった

 ・耳周りのケガの治りが遅い


 他にも、色々とあったが比較的報告数の多いものがこれらしい。

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