第3話 説明その2

「でも、千歳君がここで止めてくれて助かったよ。さっきも言った通り、彗星が降る前と後では世界は大きく変わってしまった。法令としても、彗星に起因する奇病の罹患者およびその疑いのある者は、このスライドの全編視聴もしくはスライドを踏まえた医師の説明を受けることと決められているんだ。ただ、17時台とはいえ全編視聴からの質疑応答では相当時間がかかってしまう。だから、今日のところは僕からの簡易的な説明と今後の治療方針についてで診察は終了、千歳君は帰宅というのはどうかな?」


「あぁ、大丈夫です。分かりました。でも、全編視聴には時間とるって言ってますけど大体どれくらいの尺なんです?そんなかかるもんなんすか?いやね、先生に時間取らせるのも悪いじゃないですか。もし、病院じゃなくても視聴できるならそっちのほうがいいかなって」



 俺の問いかけに、先生は少し驚いた顔をした。そんな変なこと、言ったかな?


「いや、こっちのことまで気をかけてくれてありがとう。尺としては、さっきまで視聴していたスライドが約90分。プラスして、恋愛性難聴だけに絞ったスライドが約15分くらいかな。一応、自宅でも視聴できるように公開されてはいる。でも、情報としては古いものになるかな。僕としては、できる限り新しい情報を提供したいね」



 これは、暗に四の五の言わずに病院へ通院しろと言ってきている。素直に従った方がよさそうだ。


「ありがとうございます。それでは、遠慮なくご厚意に甘えることにします。ところで、簡易な説明と今後について全部でどれくらいの時間になりそうです?それによっちゃ、寮に連絡しないとまずそうで」


「そうだったね。千歳君の学校は、全寮制だもんね。全部合わせて45分くらいだと思う。僕の方から、連絡しておこうか?」


「大体45分くらいですね、分かりました。連絡は、本人じゃなきゃダメって決まってるんで今してきていいですか?」


「いいよ。ただ、17時半までには終わらせてきてね。あ、佐藤さん。千歳君に携帯使用可能エリア教えてあげて」



 先生は、そう言って裏から看護師さん?職員さんを呼んできてくれた。


 俺は、感謝を伝えて佐藤さんに案内されるまま部屋を退出した。

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