第2話 説明その1

「とりあえず、このスライドに合わせて説明していくね。質問があったら、じゃんじゃんしてくれていいから」


「ありがとうございます。手間取らせてすみません」


「いいよ、いいよ。このスライドは一応省庁が作ったものだから、ナレーションが付いていてね。医者としては、それを流すだけだから楽なんだ。ただ、五日かそこら前に内容の更新があったから、その部分だけは僕の口頭説明になるよ」



 そんな流れで、スライドは始まった。


 何だか不安定な音楽とともに始まったそれは、小学生の時体育館集合で見せられた映像によく似ている。やっぱり、公的機関の作るものって似たような出来になるんだろうか?なんてことを、考えてしまう。


 どこか懐かしさを感じさせるOPの後、



 と続いて俺は驚いた。


「あ、先生。俺、てっきり病気のことだけだと思ってたんすけど。彗星にも触れるんすね」


「あぁ、どうしても触れざるを得ないからねぇ。恋愛性難聴はじめ今世間を騒がせている奇病の多くは、彗星が影響している。患者さんの中には、彗星に関してトラウマを抱えている人も多いから、難しい問題だけどね」


「影響しているなら、しょうがないっすね」


「もしかして、千歳君って彗星にトラウマあったりした?だったら、ごめん。配慮が足りなかった」


「あ、全然大丈夫っす。いいイメージは持ってないですけど」



 彗星、それは突然のことだった。真っ黒なそれが降ってきてから、10年弱。未だ解明されていないことが多いらしい。


 分かっているのは、彗星が降った後からこれまでではありえなかった奇病が増えたこと。有名なのは、俺の罹った恋愛性難聴のほか感覚欠損症なんかがある。これは、突然体の一部が灰色になり機能が停止するという症状が特徴的。内臓で発症したが最後、待つのは死のみという滅茶苦茶に危険な病気だ。


 まぁ、俺の罹った恋愛性難聴は患者が亡くなったなんて聞かないので安心していた。それが、一転するのはここから数十分後のことだった。


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