俺、「恋愛性難聴」になったらしいんですがマジで!?

柊アメヤ

第1話 告知

 最近、耳の聞こえが悪い。よくあるのが、耳垢が詰まったというもの。今回も似たようなものだろうと、耳鼻科を受診したところ、俺はとんでもない告知を受けることになる。


「落ち着いて聞いてほしい。松川千歳まつがわちとせ君、キミは恋愛性難聴だ」


「はぇ???」


 なんて、とぼけた声が出てしまった。

 だって、俺は今に通っている。

 俺は、一体全体から好かれている?好意を向けられている?

 女絡みなんてものは、かろうじて通学に使う路線の前後に有名な女子高があって同じ車両に乗り合わせるかくらいだ。

 本当に、誰だか分からない。仮に、これは本当に仮の話だ。この恋愛性難聴は、2人以上から好意を向けられていると発症確率が高くなる奇病で知られている。そして、向ける相手も向けられる相手も

 つまり、今の俺が好意を向けられているかもしれないと疑いをかける人数は途方もないのだ。


「えっと、先生?改めて、恋愛性難聴について教えてもらえたりとかはします?」


「当然だとも。どんな病気だろうと医者は患者に説明しなくてはならない。そう決まっているからね。ただ、僕もまさか自分の患者として受け持つことになって驚いている。いくら、教科書に載っている比較的ポピュラーな奇病だとしてもね」


 そう言いながら、先生は何やら準備を始める。というか、この先生何だかワクワクしてないか?昔、親戚の集まりで叔母が言っていたことを思い出す。


 何かを極め、それを仕事にしてしまうような人間は、大抵頭のネジが飛んでいるんだと。


 子供ながらにものすごく遠い目をしながら語っていたから、印象に残っている。きっと、この先生も似たような人なのだろう。そう、懐かしい記憶に浸っていると準備が終わったのか話しかけられる。


「ふぅ、なかなかスライドを使う機会が無くてね。手間取ってしまった。それでは、恋愛性難聴について説明を始める」

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