第3話 胃をつかむ!
五年前のことよ。
東の国の領域にあるサーザラン領域の海に淡い光が集まって、門が出来たのは――それはどんな国のひと達も見るこどがてきた。だってあんなにも大きい、まるで世界を覆うような光の門はいくら目の見えない地下種でも感知したことでしょう。
わたしも、畑仕事をしていたときにみたわ。
光の柱が門の形を作って、なにかが流れ込んでくる。
もしかして神の門?
この世界は名のない神がお作りになり、そのあと多くの神族が現れて世界を構築していった。わたしたちホビット族も生命の女神さまが人の前に作っておこうと……まぁようは人間をつくる試作品だったらしいだけどね、作られたのよ。
生命を作ると魔が出来てしまい、魔族が生まれて、それぞれの領域を作って、このルゥン界にいれるのはわたしたち生命を持つ種族、神さまと魔族はルル界、つまりは別の次元におられるそうなんだけど。
とうとうきちゃったの、神さまと魔族さま?
違った。
異世人<アーシアン>だった。
彼らは地球といわれる世界の生き物で、見た目は人間と同じだったけど鉄の船と鉄の弾を使ってやってきたの。そのときから一年、わたしたちは混乱と争いが続いた。なんせ、わたしたちは他種族はそれぞれに関わることなく暮らしていたから異世人<アーシアン>の軍勢にどう対応すればいいのかわからなかった。ぶっちゃけ、仲の悪い部族や種族もいるからどこが代表で戦うかっていう押し付け合いやらなにやらしてしまって対応が遅れたの。ばかよね!
そうこうしているとサーエン港街が奪われ、次に陸のいくつかの邑や街がやられた。
東の国はひどい被害を受けたと聞いた。
一年、泥沼のような裏切りと戦争が続いて、ようやく終わったときは、ほっとした。
ただ、それは異世人<アーシアン>を受け入れて生きる、という妥協だったともパパは口にしていた。
異世人<アーシアン>の襲来をわたしたちは受け入れるしかなく、また異世人<アーシアン>もわたしたちのことを受け入れるしかなかった。
理由はまぁ、戦争が続くことに辟易したし、きりがなかったのもある。
盟約を取り付けた北の名君レオンハルト様はやっぱりすごい方だったと思う。
いくつかの盟約内容であれこれとあったらしいけど、全部は知らない。
ただわたしたちは否応なしに変わった。
ホビット族の邑に役所が出来たこと、わたしたち邑の住んでる者の名簿を作ることになったことがまず違うわね。それをつくるのにわたしは一年も費やしたのよ!
そうして人間の国に税金といって麦をおさめるようになったこと。
以前よりも人間たちが訪ねることが多くなった――とはいえ、一年に二回くらいだけど。
「つまり、ルーおじさんもサラおばさんも知らないのね」
「ハンバーガーっていうのは、なんだ。猪の肉でも煮込むのかい」
「または焼くのかしら」
ごはん作りにきてくれるルーおじさんとメイドのサラおばさんが小首を傾げる。
朝ごはんは麦パンと卵焼き、あたためた牛乳をいただきながらわたしたちは首をかしげる。
みんな知らない。ということは
「もしかして、これって異世人<アーシアン>の食べ物……?」
という結論が出たのだ。
それはわたしたちが知らなくても仕方がないわ。
いくら平和条約が行われても、向こうのものはまだ規制とかあってあんまりはいってきていないのだし。
しっかし。
「あの人、いつ食べたのかしら、そんなもの
ちらりっとルーフェンを見ると
「戦争のとき、た……旦那様はザザンで活躍した」
「うそでしょう」
そこって確か、すごく大変だったところじゃない。一度港街が奪われたのに、必死に取り返したっていうのは有名な話、それが平和条約を結ぶきっかけになったとは聞いたけど……そんなところで手柄をあげていたなんて実はあの人、蛮族なの?
「あそこは異世人<アーシアン>とも交流があるしな」
とルーおじさん。
そっか、そこでなら食べられるのか。けど、異世界のものは高値で貴族ぐらいしか手が出せない。
ということは、手柄をたてたときに食べて、それ以降食べてないはずだわ。
つまり、夢に見るほどに恋しい。
これだわ!
「わたし、ハンバーガーとフライドポテトを作りますっ!」
ごはんを食べ終えて、椅子に仁王立ちして宣言した。
これをもし作ることができたら、旦那様の胃はわたしのものよ!
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