第45話 開戦!
翌日、予定通り朝早くから進軍する。
昨晩の事がある。万が一指揮車両から通信が途絶えても作戦続行出来るよう部隊長へ権限の委譲を行った。
これで混乱は最小限に食い止められるだろう。
魔王マーフの居城が見えた。
湖のそばに白く美しい城がある。
拠点として抑えれば利用価値は高いが、昨夜の事がある。
慎重を期して遠距離攻撃を主軸に攻撃を仕掛ける。
日が沈む頃には瓦礫の山となっていることだろう。
1km前で隊列を整える。
今のところ魔王側に動きは無い。一兵たりとも姿を見せていない。
まずは空から魔導飛空艇による爆撃を行う。
「爆撃開始します。」
指揮車両の中で通信士の声が響く。
肉眼で効果を確認するため、指揮車両の上部に取り付けられていたハッチから上半身を出す。
空を見上げるとはるか上空に飛空艇が飛んでいるのが見える。
地上から魔法で攻撃しても決して届く距離ではない。
例え届いたとしてもゴマ粒程度の大きさにしか見えない飛空艇に攻撃をあてるのは不可能だ。
飛空艇から次々と爆弾が投下される。
爆弾は爆破魔法を封じ込めた魔導具だ。
一撃で民家なら吹き飛ばすことが出来る。
着弾する! と思われた時、魔王城に動きが見えた。
魔王城のあちらこちらから光弾が飛び出し、爆弾を次々と打ちぬいていった。
ずどどどどどーん
空中に幾つも爆炎の華が咲き乱れる。
「観測士からの報告! 全弾ロスト! 魔王城にダメージありません。」
「チッ!」
思わず舌打ちをしてしまった。
まさかあれを無傷で乗り切るとは!
敵も考えたものだ。
はるか上空の飛空艇に攻撃は届かないが近づいてくる爆弾なら届く。
瞬時にその判断を下したのは大したものだ。
「うん?」
また魔王城に動きがあった。
城周辺の地面から巨大な筒の様な物が生えてきた。
するとその筒から突然激しい炎が吹き出した。
筒が煙をまき散らしながらすさまじい速度で上空へ登っていく!
「ま、まさか!?」
筒はゴマ粒の様に見える飛空艇に吸い込まれるように飛んでいき、爆発した!
「観測士から報告! 飛空艇は全機撃墜された模様です……。」
観測士は遠見の魔法を使い、目視で状況を確認している。
訓練された観測士が見間違うことは無いだろう。
「くそ! 魔導騎士隊に魔導ライフルによる攻撃を開始させろ! ぐずぐずしているとあの筒がこちらへ飛んでくるぞ!」
「りょ、了解!」
魔導ライフルで打ち出されるのは聖属性上級攻撃魔法の
以前は中級攻撃魔法の
アンデット共め! 目に物見せてくれる!
「射撃開始します!」
バシューン! バババシューン!
ぐん!
放たれた
「ば、バカな! 前は防がれなかったぞ! 何が起こった!」
以前の魔王マーフの城を攻撃した際、この様に防がれることは無かったはずだ!
手加減していた?
しかし、手加減する理由などあるはずがない!
城の前に現れた闇の壁は消えずにそのままこちらを包み込むようにどんどん広がり、ついに我が軍を囲った。
太陽光が遮られ、闇夜のように暗くなる。
「な、なんだこれは!?」
「魔導ライフルが効かないなんて!」
「囲まれた!」
兵たちが浮足だっている。
お、落ち着かせなくては……。
「なんだ? あれは!」
それは人の姿であった。
「空に人が!」
赤く艶やかな髪にルビーのように赤い瞳が憐れむようにこちらを見下ろしている。
『我は魔王……、魔王マーフである。定めを破り魔王に挑みし愚かな者どもよ。欲深きその身に己が罪を刻むがいい。』
そう言うと魔王マーフは片手を静かに上げた。
『
ギン ギギギン!!
突如として地面から生えた数十に及ぶ赤黒い杭が次々と魔導騎士を貫いた!
ガガガガン!
赤黒い杭は内部で十字に裂けたのだろう。魔導騎士の両手を内側から貫かれた!
その姿はまるで磔にされた罪人のようであった。
これでは中に載っている操縦士は生きてはいまい。
「た、ただの腕の一振りで……」
こんなのあり得ない!
魔導騎士は以前より1.5倍の出力に上がっている。その出力は装甲へ魔力を流し、ビッグタートル並みの防御力を誇っていたはずだ。
易々と貫けるものではない。
『者どもよ! 我に生贄を捧げよ。』
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