第41話 不敬罪!

■ルアーナ視点


友達が出来た!

やったね!


まーちゃんに続き二人目だ。

エディッタちゃん可愛い。

話ながらの身振り手振りを交えてくるのだけど、一生懸命に沢山わふわふと動かす姿がなんかちょっと子犬っぽい。


今度遊ぶ約束をしたぜ!

王都にあるエディッタちゃんのお屋敷に招待された。

前回は黒髪話題で盛り上がった。

今度は何話そうかなぁ~。もっと楽しい話をしたいよなぁ。


子供が好きそうなもの……ダメだ! ポケ〇ンぐらいしか思い浮かばない!

そうだ! 女子は恋バナ好きだよな。BLも好きなイメージ。

よし! 兄貴とその仲間たちの話でもしてやるか。

「王子と騎士団長の息子が見つめあっていた」とか「神殿の息子と宰相の息子が仲睦まじく手を繋いでいた」と言ったらきっと楽しんでくれるだろう。


ま! そんな事実、無いんだけどね!(風評被害)


う~ん、それだけじゃなんだから、なんかお土産を持っていこうかな。


……

…………


「ルアーナ様、ようこそおいでくださいました。」


「こちらこそご招待ありがとう、エディッタ様。」


テラスに案内され、そこでお茶を飲みながらお話をすることとなった。

……う~ん? 俺あんまり歓迎されていない?

お茶を入れてくれているメイドの愛想が死んでいるんだが?

顔は無表情だし、動作も荒々しい。


エディッタちゃんをチラッと見ると申し訳なさそうな顔をしている。


あ~、こいつも黒目黒髪が嫌いな口か。


「ちょっとそこのあなた。」


メイドに声をかけてみた。


「……なんでございましょう。」


めっちゃ不愛想な返事だな。


「あなたその態度はなんなのかしら?」


「……どういった意味でございましょう?」


こいつ自分が何やっているか分かっているのか? 少しは隠せよ。


「不満があると顔に書いてあるわよ?」


「……」


「あなた分かっていないようね? 私は貴族よ? 不敬罪って御存じ?」


「……不敬罪?」


あら? 本当に知らないのかな?

この国の不敬罪は結構えぐいのだが。


「知らないの? 貴族は不敬な態度をとった平民を罰することが出来るのよ?」


「え?」


「たしか最高刑は拷問の上、磔だったかしら?」


「え? そ、そんな……」


驚いた表情を見せるメイド。

ついでにエディッタちゃんも驚いている。


「それに連座になることもあるのよ? あなたの親族はもちろん、友人知人に至るまで全員が同じ罰を受けることになる。……恨まれるでしょうね。そのきっかけになった人は。」


「か、家族は関係ない!」


それが関係あるんだなぁ。この国の不敬罪は理不尽の塊なのだ。


「大声を出さないで頂戴。それも不敬よ。それに関係があるかどうかは貴族が決めるのよ? あなたじゃないわ。私がどう思うかなの。」


ちなみに先程からこのメイドに対し、こっそり魔法を使っている。

闇魔術は感情を操作する。

感情の方向性を決められるのだ。

ただ、結果がどうなるか分からない。

例えば怒りの感情を増幅させたからと言って、ゲームみたいにバーサーカーになるかと言ったらそうではない。

人によっては怒りの感情で頭がぐちゃぐちゃになって泣き出してしまう人もいる。


今回は不安な気持ちが増大するようにしている。

「そんな訳ない」と言い切れない程度に増幅させてやった。


「す、すいません! お許しを!」


エディッタちゃんまで青白い顔になっている。

こっちは不安を抑制するように魔法を掛けよう。


「……そうね。どうしようかしら? エディッタ様、この方が本当に反省したか見張ってくださる? もし反省が見られないようなら……。」


「は、反省致します! 二度と不敬な態度はとりません!」


「私の親友、エディッタ様に不快な態度をとっても許せないからね。」


そうメイドに言い、エディッタちゃんに目くばせをする。

どうやらエディッタちゃんは意味を察してくれたようだ。


「は、はいぃぃ!!」


「忘れないことね。私はこの家の人間じゃないの。例え子爵が良いと言っても私が不敬と言えば子爵でも止められないわ。」


実際のところ、メイドの教育問題になるので子爵が詫びを入れて終了だけどね。

そこらへんはメイドじゃわからないだろうし、何より不安を増大させているので冷静に考えることは出来ないだろう。


「ではもう行きなさい。あなたの顔を見ているのは不快だわ。」


「し、失礼します!!」


メイドはがばっとお辞儀していなくなった。


「エディッタ様、先程のは本気にしないでくださいね。あんまりな態度でしたので……。」


「い、いえ! こちらこそ当家のメイドがすみません。」


「ふふふ、気にしないで。私の家のメイドもあんな感じの人がいましたもの。……最近では私を恐れて近づいてこないですけど。」


「な、なるほど……。」


いや、冗談だよ? 笑うとこだよ?

我が家のメイドたちはいつの間にか差別しなくなった。。

きっかけは良く分からない。

家じゃ剣の練習で家の騎士をボコボコにしたり、魔法の練習でドッカンドッカン地面にクレーター作っているからそのせいかもしれない……。

あ、でもママンを尊敬するメイドが増えている。

ママンの影響で黒目黒髪の差別が減ったのかもしれない。


「あの、不敬罪も……」


「いえ、あれは実話ですね。我が国の不敬罪はいろいろ歴史がありまして結構過激なのです。3代前の国王様、フィヨルド2世が今の形にしたのです。当時は国が食糧難で荒れていまして、それもあって権力階級を守るために過激になりました。実際、それが使われた例がありまして、当時のバロド男爵家の嫡男が、意中の女性に断られたのが原因でその女性の関係者102名を不敬罪で殺害しました。さすがに当時問題になりましたがバロド男爵が国王陛下から”注意”されただけで終わりです。」


「え!? それだけなのですか?」


「えぇ、バロド男爵領での例は国にとって都合が良かったのです。その件があって国民は貴族に恐怖し、食糧難による騒乱件数ががくっと減ったそうです。」


結局、時の権力者にとって都合が良かったかどうかだよな。


エディッタちゃんを怖がらせてしまったな。

別の話をするか。

俺が考えた兄貴たちのエピソード(創作)を披露するか!!

え? 王子に対する不敬罪? バレなきゃいいんだよ。


しばらくエディッタちゃんとお茶を飲みながら話をした。

兄貴たちの話は結構受けた! まぁここだけの話としてあるので大丈夫だろう。

(大丈夫じゃない)


エディッタちゃんにお茶会でお茶を引っ掛けられそうになった時、どうやって対処したのか?と聞かれた。

あれは時を止めて、アイテムボックスでお茶を集めてカップに入れなおしただけだと伝えた。


「……時を?」


あまり通じなかった。そりゃそうか。ゲームや漫画で触れてないと『時を止める』なんて理解できないよね。


メイドがいないので俺がお茶を入れた。

”鑑定”を使い、この茶葉に最適な温度を調べた。これはちょっとズルかもしれない。

それもあってかエディッタちゃんは「凄くおいしいです!」と喜んでくれた。

ついでにエディッタちゃんも覚えたいというので教えてあげた。


ちなみに俺はモナン先生からお茶の入れ方を教わった。まーちゃんが王族をやっていた時代は親しい仲の場合、ホストが自らお茶を入れてゲストをもてなしたそうだ。日本の茶道みたいな感じだ。そのためちょっと作法が現代と違うかもしれない。


そんなことをしていたらエディッタちゃんのお母さん――子爵夫人が現れた。

挨拶もそこそこにいきなり謝罪されてしまった。


「我が家の使用人が失礼をしました。」


どうやら先ほどのメイドは上に報告をしたらしい。


「いえ、あまりの態度でしたので少し言わせていただきました。ことを荒げるつもりはありませんのでご安心を。」


ちらっとエディッタちゃんを見る。

それで夫人は察してくれたようだ。

そのあと、夫人を交え少し話をした。

実は夫人はママンが若い時に社交界で困った時、礼儀作法を参考にしていたその人なのだ。

そして驚いたことに、夫人もママンに対し、イジメを受けても堂々としたその態度に尊敬を抱いていたそうだ。

これはぜひ、ママンに教えてあげよう。


「マチルダ様によろしくお伝えくださいね。被害を受けているときに手を差し伸べなかった私のことを不快に思われることでしょう。もし許されるなら弁明の機会をいただきたく……。」


夫人は最後にそんなことを言った。

ママンは決して不快だとか思っていないだろうけどね。


それはそうとエディッタちゃんの家での立場はあまりよろしくないことが分かった。

母親は味方だけど父親からは冷遇されているようだ。

そこで俺は用意していたお土産・・・をエディッタちゃんに渡した。


これで改善すると良いのだけど。


あ、エディッタちゃんと夫人をお返しに家へ招待しよっと

ママンもきっと喜ぶぞ!

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