第35話 鑑定! ……と新たなチート


こっちは用事が無いので帰ろうとしたら使いの人が必死に呼び止めてきた。


「ダンジョン攻略に来たのに悪魔王サタン様と会わずに帰るってあんた何しに来たんですか!」


とか言われ怒られた。


魔石が欲しかっただけなんだけどなぁ。


なんでも普通は魔王に認められ、報酬を得るためにダンジョンへ挑むらしい。

せっかくだし、報酬が貰えるなら会ってみるか!


「よくぞ、アシュタロスを倒した。まさか人間で【源流】オリジンを身に着けるものがいようとは……。」


【源流】オリジン? 星の根源たる力にアクセスするあれか


悪魔王が言うには、ダンジョンコアと繋がらなければその領域には辿り着けないものらしい。

まーちゃんのおかげだな! 

まーちゃんとの出会いがなければ龍脈に気が付くこともなかっただろうし、ダンジョンコアについて知ることも無かっただろう。


悪魔王は続け、アシュタロスを倒したことにより、俺はダンジョンを攻略した扱いになると告げた。


「では攻略者よ。願いを言うがいい。」


へ? 願い?

こ、これは千載一遇のチャンス!!


「で、では! 性別を男にしてください!」


男になればいろいろ解決である。

チート野郎から襲われる心配もぐっと減る。

減るだけでゼロにはならんが……。

一部には男の子が良いという人もいるだろうが、それでも美少女を狙う変態より絶対数は少ないことだろう。

……正確な統計はわからんけども。


「ふむ。性別を変更することは可能だ。ただし人間では無くなるが良いか?」


へ?


「人間として生まれた者をそのまま性別を変えることは出来ない。そのように出来ていないからな。我は人間を創造出来ぬ。故に人間のまま性別を変えることは出来ぬ。そうだな。人間に近い種、インキュバスなどどうだ?」


インキュバスって淫魔やん。

いやいやいや、変態チート野郎を嫌って性別変えようとしているのに自分がそれになってどうする。

そのあと他の種族について聞いたが、どれも一長一短だ。

例えば吸血鬼は、長寿となる恩恵の変わりに吸血衝動、光属性弱点などの制約が付く。

また魔物となることで使えなくなる技があるそうだ。

特に光属性の魔法は可能性が高いらしい。


「う~ん。どれも微妙ですね。……男になるのは諦めます。」


ハーレムの夢が!!!

まぁ女の身になって考えるとハーレムはそんなに良いものではないな。

リアルであんなことやったら刺されんで。

やりたいならお店で十分だ。

深い関係になったら自分だけが満足していてはいけない。

それにバランスよく付き合うなんて不可能だろう。

男側がどれだけ配慮しても女性がどう思うかは別問題だしな。

親父も二人の嫁さん相手に大分苦労してそうだ。

そうなると何か他に願いごとか……。

考え込んでいると悪魔王から提案があった。


「では具現化結晶はどうだ? 源流オリジンを習得した者の多くは装備に困ることになる。自身の力に耐えうる物質がほぼ存在しないためだ。またあったとしても職人がそれを加工することが出来ない。具現化結晶ならばその問題を解決できる。」


「そんな物が……。それはどのような物でしょうか?」


「百聞は一見にしかずだな。これに魔力や闘気を込めてみよ。」


そう言って渡されたのはこぶし大の黒いひし形の物体だ。

言われた通り、魔力を通してみる。


「その状態で理想とする剣なり防具を思い浮かべてみよ。」


言われた通り頭の中で某ゲームに出てきた聖剣を思い浮かべてみる。


ヴゥン


具現化結晶に魔力を吸われたと思ったらイメージ通りの剣に姿を変えた。


「おぬしが込めたイメージによって、自由に姿を変える。炎を出す剣をイメージすればその通りの効果を持たせることも可能だ。込めたイメージ分の魔力や闘気は消費するがな。絶対に折れない剣なども作りだせる。”絶対に折れない”イメージが付けばな。」


なるほど! しっかりイメージさえ出来れば、源流オリジンの力に耐えられる武器や防具が作れるってことか。しか付与効果もイメージのままっと。

これは非常に便利だ!


今までは源流オリジンを使っているときは拳で戦っていたからな。折角鍛えた剣技を生かすことが出来なかった。

剣はまだ土魔法で思いっきり魔力込めれば作れないこともなかったけど、せいぜい魔闘気で使用するのが限度だった。源流オリジンで使える代物ではなかった。


(イメージ通りになんでも作れるのか! 付与効果も思いのまま! そうするとあのゲームの宝具なんかも思いのまま? 夢広がるなぁ。)


俺は丁寧に礼を言い、その場を辞した。


さて、思わぬ副産物が手に入ったが当初の目的に戻ろう。

各魔石は手に入った。鑑定の魔道具作りだ。


モナン先生の協力のもと割と簡単に鑑定の魔道具は完成した!

実験や加工に3か月ほどかかったがかなり順調に仕上がった。


「一級の魔石がここまで揃っていれば作るのは訳ないですよ。」


さすがモナン先生だ。

指輪サイズに加工したかったが出来たのは少し大きな腕輪型だ。

殴るにしても指輪は邪魔だし腕輪型は丁度良いかもしれない。

早速使ってみよう。

対象を見詰め、腕輪に魔力を込めると名前、価値、用途、来歴などが分かる。


例えば薬草を鑑定するとこんな感じだ。


――――――――――――


<名称>

薬草


<価格>

銅貨5~8枚


<効用>

傷に対する化膿止めや傷を治す効果がある。


<用途>

回復ポーションの材料として使用可能


<来歴>

古くから回復薬として使用される。

錬金術師ロドリスにより回復ポーションの原材料として使用されるようになる。

一度、製法は失われたが、オロイ王国の技術者により復活された。

その後、教会の回復魔法に対抗するため製法を無償で各国へ提供された。

……

――――――――――――


価格に幅があるのは場所によって価値が違うからだ。

来歴は知名度があるエピソード順に出てくるようになっている。

薬草一つ取ってもそれにまつわる話は尽きることがない。

国がらみの話から個人的なことまで千差万別だ。

そのすべてを知る必要はないけど、有名な話は押さえておきたい。

無知をさらせば足元を見られてしまうかもしれないしね。

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