第29話 スルースキルはチート?

■7歳


星の根源たる力を探るためには人々の記憶が邪魔をしてくる。

この一年で俺は徹底的に磨いた技術がある。

それは何か?

答えは「スルースキル」だ!


他者のことなんて全てスルーだ!

悪い感情が流れ込んできても「でもそれあなたの感想ですよね?」と全力でスルーしていく。

論破? 違うよ。あれはスルーしているだけだよ。

相手に向き合わずに会話を終わらせる技術なのだからスルースキルに違いない。


本当に論破したいなら相手の主張を正しく理解し、そのうえで理論の矛盾を指摘する必要がある。その矛盾に気付けたらそこからさらに話を発展させていけばよい。

相手の主張に不十分な部分があるなら、まずは正しく聞き出すことが大事だ。何を問題としているのか? 何故問題だと思うのかを知ったうえで議論しなければ進展はない。


「あなたの感想ですよね?」技術は、根本たる原因を探ろうとせず、うわべだけを捕らえて、あたかも相手が感情論に走っているかのように見せかけて会話を終わらせる論法だ。

そもそも何故議論するのか?

議論する意味というのは相互理解から共創へつなげるものだと考える。

よりよいアイデアやモノを作りだす技術なのだ。

議論の目的は勝った気分に浸るためではない。

それ目的としてしまうと何も生み出していないのだから時間の無駄だし、意味がない。

ただ、勝ったように見せかけ、相手に不信感を募らせていくだけ。

良いものを生まれず、悪感情だけ発生する。

そんなことをするくらいなら最初からやらない方が賢い選択と言えるだろう。


ただ今回の場合においては非常に有用である。

議論なんて必要ない。すでに起きた過去の事象でしかないのだ。

まさに「それあなたの感想ですよね?」なのだ! 俺に全く関係のないやつなのだ!


という訳で人々の記憶、感情なんかは全てスルーしていく。

どんどん龍脈を辿り、星の中を探っていくとついに見つけた!

凄まじいエネルギーの塊だ。

これは取り込めるものではない。こんな力取り込んだら膨らませ過ぎた風船の様に体が破裂してしまうことだろう。あくまでパスを通して力を借りる形にする必要がある。


魔闘気でパスをつないで……っと出来た!!!


おぉぉぉぉ!!! 全身に力が駆け巡る!

体中からエネルギーが迸っている。


ゴゴゴゴゴゴゴ!!!


なんかエネルギーに共鳴したのか大地も揺れ出したな。


「な、何事!?」


まーちゃんがすっ飛んできた。


「見てくれ! まーちゃん! ついにやったぜ!」


「え!? るーちゃん?? そのエネルギーが星の力? それよりその髪と目の色はどうしたの!?」


「え?」


「ほら! 見てごらん」


まーちゃんが差し出した鏡を見てみると確かに髪と目の色が変わっている。

金だ! 金髪に金色の瞳だ!

髪も逆立ってツンツンしている。

ついでに立ち上るエネルギーも金色だ!

まるでスーパーサ〇ヤ人だな!


俺は慌てて星の力との接続を切った。


するとどうだ。髪と瞳の色はもとに戻った。


「ふぅ……」


「凄い力だったね。」


「うん。制御できるように練習しないと。」


「うちではやらないでね。」


「……ハイ」


この力なら宇宙戦艦にも勝てるかな?

とりあえず練習あるのみだな!

……練習場所を探さないと。


そんなある日、親父に呼び出された。


「お兄様の友達が遊びに来る?」


兄貴は8歳になってから王都で暮らすことが多くなった。

親父と共に王都へ行き、様々なことを学んでいるらしい。

その中で知り合った友達がうちに遊びに来るそうだ。


「うん、セルジュの優秀さが王族の方々の目に留まってね。第一王子の側近候補になったんだ。いらっしゃるのは第一王子とセルジュと同じく側近候補の子供たちだね。」


「なるほど。分かりました。では当日は目の届かない場所で静かにしてますね。」


「いやいやいや。そう言う訳にも行かないよ。家族一同でお出迎えしないと。」


第一王子が遊びに?

面倒ごとの匂いしかしないのだが?


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