第24話 策謀?

さて我が家の話をしよう。

兄貴はママンが動いてくれたこともあって、闇落ちは回避できたっぽい。

しかし、アウグスタの教え方は相変わらずよろしくなかった。

兄貴は頑張っているがこのままだとキチンと技術の習得は出来ないだろう。

このままだと親父の跡を継ぎ、領主になってくれないかもしれない。

それば困る。

俺が結婚して入り婿が領主に……なんて話になったら最悪だ。

俺は体こそ女だが、心は男のつもりだ。男と結婚なんぞごめん被る。


そこで俺は一計を案じた。


「は? アンデットの一団をるーちゃんの家の領地に向かわせてほしい?」


「そう! そこそこ強いやつを混ぜてほしいんだよね。それで私の家がある場所とはちょっと離れた町を包囲してほしいんだよ。」


俺はうちの家族の事情、そして作戦の内容をまーちゃんに伝えた。


「う~ん、そういうことか……。そうすると一般の兵士だと手こずるくらいの手合いがいいわけだね。」


「出来そうかな?」


まーちゃんは頭をかき、渋い顔をする。


「ここの龍脈とつながってから私たちは大分強化されちゃったからなぁ。一番弱い兵卒でもゾンビ系の死に戻った精鋭ハイレブナント・ソルジャーになってしまう。死に戻った精鋭ハイレブナント・ソルジャーの一団だと騎士でも厳しいのではないか? ちょっとモナンと相談だな。」


モナン先生と相談し、降格ランクダウンの魔法を使い、通常の死に戻った兵士レブナント・ソルジャーにして向かわせることに決まった。

作戦決行の日。

俺は家で探知魔法を駆使し、死に戻った兵士レブナント・ソルジャーの進軍状況と町の対応方法を監視する。

死に戻った兵士レブナント・ソルジャーに気が付いた町の兵士は大慌てで活動を始めた。

そしてそれほど時間をかけることなく、救援を求める伝令が飛び出していった。

その伝令がうちに着くころを見計らい、ママンを尋ね、お茶を一緒に飲む。

うまく行くといいなぁ。



◇マチルダ視点


リヴィオ様が不在の今、私が領主代行として取り仕切る必要があります。

それに加え、夜は傷ついたセルジュ様の治療も継続してやっています。

セルジュ様も最近では心を許してくれたのかいろいろとその日起きたことを話してくれます。

あまり付き合いがなかったため知りませんでしたが、セルジュ様はとても優しい子でした。

自身が辛い立場にあるにも関わらず、毎日治療に訪れる私を「大変ではないですか?」と気遣ってくれたのです。

それに私が頭を撫でると少し恥ずかしそうにしながらも笑顔を見せてくれます。


セルジュ様付きの侍女も大分協力的になってくれましたのでやり易いです。


そんな中、ルアーナからお茶の誘いを受けました。

ルアーナとは食事も一緒に取っていますし、魔術の練習も一緒に行っているので頻繁に顔を合わせていますが、このようなゆっくりとした時間を過ごすのは久しぶりです。

魔術とは関係の無い他愛の無い会話。

ルアーナは年齢にそぐわない賢さや、常人離れした魔力を持っています。

世間から見れば”特別な”子供でしょう。

しかし、こうして過ごす姿は普通の子供と変わりありません。


賢さと魔力、それらは年齢に比べ抜きんでた物があります。

”特別だ”と色眼鏡をつけることは「黒目黒髪は悪魔の子だ」と決めつけることは、相手の本質を見ていないという点において同じことなのかもしれません。


(この子の母親として”特別”な部分ばかりに目を向けないでちゃんと向き合う必要がありますね。)


セルジュ様が優しい子であったように、ルアーナにもまだまだ知らない一面があるかもしれません。


(私からも積極的にルアーナとの時間を作るようにいたしましょう。)


そんなことを考えながらルアーナとお茶をしていると慌ただしくドアをノックする音が聞こえました。


「奥様。至急の知らせが。」


ろくに返事も待たず、執事が慌てたように入室してきました。。 


「ラコペの街がモンスターの一団に襲撃を受けております!」


執事から告げられた内容は衝撃のものでした。


「!? ……モンスターの数、種類などの詳細はわかりますか?」


務めて冷静を装い、続きを促します。

死に戻った兵士レブナント・ソルジャーが200……。

死に戻った兵士レブナント・ソルジャーはゾンビと違い、一般の兵士と同程度の実力があります。厄介なのはアンデットであるため多少のダメージでは怯まないことです。

その点を踏まえると安全に倒すなら1体に3人ほどで挑みたいところです。

告げられた情報が正しければ街に駐屯している兵士だけではとても対応できません。


「速やかに騎士団を現地に派遣して!」


その時、黙って成り行きを見守っていたルアーナが声を発しました。


「お母さま、アウグスタ様に率いてもらってはいかがでしょうか?」


「率いる? 騎士団を?」


突然の申し出に理解が追いつきません。


「そうです。アウグスタ様はお役目こそありませんが、側室というお立場。お母さまが騎士団に関する権限をアウグスタ様へ委譲すれば指揮を取ることも叶うのではないでしょうか?」


「……確かに可能ですね。」


「お母さまは領主代理として動けません。危機において責任ある者が現地で直接指揮を取れば民心も休まりましょう。アウグスタ様はよく騎士団と修練を行っております。アウグスタ様なら騎士団を十分まとめることが出来るでしょう。」


ルアーナは普段このように執政に対し口をはさむことはありません。

……これは何か企んでいますね。


すぐにアウグスタ様に面会し、騎士団を率いてもらう件を依頼します。

最初はしぶられました。

側室としての務め……子育てを重視しなくてはと言われれば確かにそうです。

子供たちはまだ幼く、そちらも重要です。


しかし、ルアーナは様々な理由を上げ説得を試みます。

「魔法使いでは移動が遅く、即時の対応が出来ない」

「騎士団経験のあるアウグスタ様しか頼れない」

「領主一族が先頭に立って対応しなければ面目が立たない」などなど。


それに私も追従します。

「魔法使いである私では対応が遅れてしまう」

「普段騎士団と交流がない私には率いることができない」

「私の実力不足でアウグスタ様にはご迷惑をおかけします」

「責任は全て私が持ちますので……」


私たちが下手に出たことで大分気分を良くされているようでした。

「そこまでおっしゃられるなら……」と最後は了承していただけました。


そこからはとても早かったです。

あっと言う間に騎士団を招集し、出立していきました。


私はアウグスタ様と騎士団を見送ったあと、ルアーナに問いかけます。


「それでルアーナの狙いは何ですか?」

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