第21話 友達!

<ルアーナ視点>


魔王様の依頼は面白いものだった。


破壊困難な物を壊せというお題だ。


さすがに魔力嵐の中心で高威力の魔力弾は作れなかったのでちょっと離れた場所から狙撃する形を取った。

今回取った方法以外にもいろいろ手は考えた。

石などの物質を加速させて防御を破る方法や、長時間に渡り防御装置に負荷をかけ続けオーバーヒートを狙う方法など。

すぐに出来て効果がありそうなものを選択してみた。

物質を使う場合はそれなりの硬度もった物質が必要だったし、オーバーヒートを狙うには防御装置の仕様が不明すぎた。


周辺の魔力をガンガンに指に集めて、心の中で霊○レ○ガンと叫びながら射撃を行い、破壊に成功した。

連射は高等技術。使い物にならなくなる――なんてこともなく普通に魔力は使えている。


さて、依頼を達成したし、俺は魔王様へ願いを口にした。


「は? しばらく私の側にいて気を観測させてほしい?」


「はい。私は闘気を習得したいのですがどうしても魔力の感覚に引っ張られてしまって闘気を感じ辛いのです。最高位のアンデットである魔王様は陰の気がすさまじいはず。それを利用して闘気の習得に挑戦してみたいのです。」


「そんなことでいいのか? う~ん、お前が成しえたことを考えればそれでは釣り合わない。もっと他にないか?」


あれ? もっと言っていいのかな。そしたらこれしかない!


「でしたら、あの、私のお友達になってくれませんか?」


「と、友達? 友達ってあの友達?」


何やら魔王様が混乱している。

俺には友達がいない。

そもそも同年代との付き合いがない。

黒目黒髪に対する差別がある以上、これからもきっとできないだろう。

それはまぁいい。

話の会わないやつらと無理から付き合うのはしんどいし、権謀術数が渦巻く貴族の女どもと会話なんてしたくない。


そこへ来て魔王様は俺のことを差別しない。

そして美少女で魔王で真祖だ。

これはもうお近づきになるしかない。


「友達か……。その、私でいいのか? 魔王だぞ? お前たち人間からみたら化け物だぞ?」


「そんなことを言ったら私は黒目黒髪ですし、かなりへんな4歳児です。」


「な!? お前本当に見た目通りの年齢なのか?」


「そうですよ。」


前世があるから魂の年齢は違うが肉体年齢は間違いなく4歳児だ。


「そうか、異端……か。」


魔王様は俺を憐れむような目で見つめてくる。


「わかった。この魔王マーフ・ミトラ・タスクリーフがお前の友となろう!」


「わーい! やった! ありがとう! まーちゃん!」


俺はそう言うと魔王マーフ――まーちゃんに抱き着いた。


「ま、まーちゃん?」


「私のことはるーちゃんって呼んでください!」


距離を詰めるには呼び方って大事だよね。最初に『さん』付けで始めちゃうと切り替えるタイミングが大変だ。

戸惑うまーちゃんに抱き着きつつあちこちをまさぐる。

ぐっへっへ! 同性ならではの特典だ!

まーちゃん見た目の割りに結構胸あるな! お尻の肉付きもなかなかだ!


こうして俺とまーちゃんは友達になったのだった。


それから2週間……。


闘気についてはまーちゃんと一緒に活動し始めて1週間ほどで体得出来た。

ビシバシ陰の気を感じることができたので特に苦労無く習得出来た。さすが最高峰のアンデットなだけはある。


「はっ! よっ! たぁ!」


正拳突き、前蹴りからの後ろ回し蹴り!


「るーちゃん、何やってるの?」


「これ? これは空手っていう格闘技の型。」


俺は前世で空手をやっていた。

前世ではオタクだった。オタクだからこそ、マンガやアニメの技を試してみたくて空手を習ったのだ。

今の人生では空手を練習してこなかった。というのも空手は体に負担がとても大きいからだ。

成長しきっていない体でやるものではない。

例えば正拳突き。これは踏み込みながら腰を入れて突きを放つ技だ。

この時、拳に全体重が乗る。つまり凄い力が関節にかかり伸び切る。

肘や肩にとてつもない負担がかかるのだ。

逆に負担がかからないようなら技として成り立っていない。拳に威力が乗っていない証拠である。


闘気による身体強化で体の負担は気にする必要がなくなった。

そこで早速練習というわけだ。


さて、マンガ、アニメに憧れて始めた空手だが、習ってみてわかったことがある。

それは――二重の○みふたえのき〇みは出来ないということだ。

しかし、今、俺は闘気を覚えた。

身体強化を全開で行えば、刹那の間に連続で入れられるかもしれない。

早速試してみよう。

土魔法で俺の腰ほどの高さの岩を用意する。


指の第二関節で一撃当てた後、素早く握りこんで第三関節――つまり拳で本命の攻撃を当てる。


(行くぜ!!)


ガガン!!


変則的な二連撃! 岩は砕けた! ……が砕けただけだ。

本来の効果が出ているなら砂のように粉々になるはずだ。


「ふ~ん、効率の悪い技だね。」


……ですよね。普通に殴ったほうが強いよね。

二連撃を意識するあまり拳速は鈍るし、そもそも理論として成り立っていないという話もある。


「るーちゃんは体術で戦う人? 剣とか槍は使わないの? あ、でも魔法使いなんだよね?」


「魔法も使うけど、接近戦も出来ないと。格闘術はある程度知識があるけど、剣にも興味はあるんだよね。使い方を知らないんだけど。」


「お? じゃ教えようか?」


「え? まーちゃんって剣使えるの?」


「うん。あ、でも私も使えるけど、私の部下から習ったほうがいいかも? 生前は剣聖って呼ばれていたやつがいるんだよ。」


「剣聖! って生前!?」


「うん、私の部下だからアンデットだもの。」


凄い人が部下にいるな! 生前ってそういうことか。


「習いたい! その部下の人はどこにいるの?」


「今は土の下かな~。帝国と最後まで戦っていたからね。……ダンジョンコアさえあれば復活させられるけど。」


「ダンジョンコア?」


まーちゃんからダンジョンコアについて話を聞いた。

え!? ダンジョンコアがないとまーちゃん死んじゃうの? 

そういう事は早く言って!

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