第20話 魔王様の試練

私は今、一つの問題を抱えている。

龍脈から切り離されたことで命の危機にあるのだ。

先ほどは死を超越したなどと言ったがそれには条件がある。

存在を維持するために龍脈とつながっている必要がある。

近場のめぼしい龍脈は他の魔王が存在している。

だが、例外が一つ。使える龍脈がこの荒地にはある。


場所を変え、荒地の中心部へ向かう。

そこには暴風のごとく魔力をまき散らす穴があった。中心地だけあってその力もすさまじい。

これが龍脈である。

その穴の外周を囲うように人為的に作られた設備があった。

それらの設備は稼働していることを示すように魔力をおび、青白く明滅を繰り返している。

その中でも一際目立つ台座におさまった巨大な球体が見える。


「あそこに見える巨大な球体が制御装置だ。この龍脈から力を吸い出し続けている。」


本来はこのように闇雲に魔力をバラまく装置ではない。

キチンと人間が管理できる量を吸い出すものだ。

だが、ある実験に際しこの設備で限界以上の力を吸い出したことにより暴走してしまった。

その結果、大爆発が起こり強固に作られた設備の防御装置と制御装置だけを残し他は吹き飛んでしまった。

この上にあった城や周囲の街も含めて全て巻き込んで……。


それ以来というもの、暴走した魔力を吹き出し続けている。


「よく見ていろ?」


私は魔力を集め、魔力弾を作る。

さすがに暴風の中心地とあって制御がとても難しい。

なんとか作り出した魔力弾を制御装置に向けて打ち込む。

魔力弾は荒れ狂う魔力の波にもまれどんどん威力を減衰させていく。


キン!


私の作った魔力弾は防御魔法にいとも簡単に弾かれてしまった。


「あの制御装置を破壊してほしい。御覧の通り、荒れ狂う魔力により減衰する。そのうえ防御装置が働いているためそれを突破する威力が必要だ。どうだ? 出来るか?」


僅かに期待をこめて黒目黒髪の少女――ルアーナを見つめる。


「やってみせましょう。」


ルアーナは不適に微笑み、うなずいた。

ルアーナはまず、中心地から数キロ離れた場所へ移動した。

そのうえで射線を確保するための高い塔を土魔法で作り上げた。


(こいつの属性は土なのか?)


土魔法で空は飛べただろうか?

そんなことを考えているうちにかなり高い塔が出来上がった。

塔の頂上に飛行魔法で降り立つと自身の体を固定する台を作り、その上に腹ばいに寝そべった。

そして龍脈へ向けて右手の人差し指を構え、左手をそれに添えた。


「いきます。」


ルアーナはそういうと指先にとんでもない魔力を集め始めた。

そして放った。

ルアーナから放たれた魔力弾はとんでもない圧縮がされており、鋭利な形をしていた。まるで矢じりのようなそれは一直線に制御装置に飛んで行ったが、近づくにつれ僅かづつ狙いがそれ、最終的には十メートルほど離れた位置に着弾した。


「なるほど。次、いきます。」


次に放たれたのは先ほどとは違い大きな球状の魔力弾だ。

とても重い作りにしたのだろう。

魔力の波にもぶれることなく直進した。


ドン!


しかしその一撃は防御装置に阻まれてしまった。


「ふむふむ。」


何度かそのようなことを繰り返したあとにルアーナは言った。


「なんとかなりそうです。次で決めます。」


なんとかなる? 失敗ばかりだったような気がするが……。

そう言ったあと、今までに無い途轍もない魔力量を指先に集めだした。


(何という魔力だ! 私がルアーナから感じ取った魔力の数倍はある。一体どうやって?)


そんな疑問を覚えているうちにルアーナの指から魔力弾が放たれた


ドドドドン!!


なんとルアーナから放たれた魔力弾は一つではなかった。

先頭に大きい球体の魔力弾。そのすぐ後ろを追従するように鋭利な魔力弾が何発も続いている。


(そうか! 大きな魔力弾で魔力の波をかき分け、後ろに続く魔力弾の減衰を防いでいるんだ!)


ゴドドッガン!!


ルアーナの目論見は見事当り、防御魔法を打ち破り、制御装置を破壊して見せた!


「やりました! では私の願いを聞いてもらえますか?」


年相応に見える可愛い笑顔を私に向け、そんなことを言った。


(やれやれ命の借りに見合う願いとなると相当だな)


隷属を要求されても致したかない。そんな風に思いながらルアーナの願いを聞いた。



――――――――――――――――――――――――――――

※あとがき


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