第18話 魔王様の事情
え! 魔王!! そして真祖!?
「魔王様なのですね! それは知らずにご無礼しました。」
この世界の魔王という立ち位置がどんなものか分からないけど、王様であることに間違いはないだろう。その場(と言っても空中だけど)に片膝をついて頭を下げた。
「うん? あぁ、面を上げよ。良きにはからえ。」
「しかも真祖というとあれですよね? 吸血なんて不要で、太陽の日にも強い耐性がある不死者ですよね?」
「お? よく知っておるな。そこらの血を吸わねばならない吸血鬼などと言う半端者とは違う! そう! 我こそが真に死を超越した存在なのだ!」
おぉぉぉ!! 真祖で魔王で美少女だ!
なんて中二心にくすぐる存在なんだ!
ぜひとも仲良くなりたい!
「素晴らしいですね! ……ところで先ほど帝国に追われているとおっしゃっておられましたが……」
「それか……」
魔王様が苦虫をかみつぶしたような顔で話してくれた。
それによると帝国は唐突に魔王様の城を攻撃してきたらしい。
これはあとで両親に聞いた話なのだが、魔王というのは国家にとって不可侵の存在らしい。
途轍もない強者で、人間が抗えるものでない。そのため、人間側からは極力距離を置き、関わらないようにするものだとか。
魔王が居を構えるのは、人間的に旨味の無い険しい山の中だったり、深い森の奥だったりするので利害が衝突することも無いらしい。
魔王が存在することで周辺の魔物は逆に大人しくなる傾向にあるので、むしろ歓迎される存在なのだとか。
そして魔王が居を構えた場所をダンジョンと呼び、そこには沢山のお宝が眠っていることから腕に自信のある冒険者が挑むのだとか。
魔王側も個人のダンジョン攻略は推奨しており、見事ダンジョンを攻略し、魔王に実力を認められた者は勇者の称号を得るという。
帝国はその不可侵の禁を破り、軍隊で魔王様の城を攻撃してきたらしい。
本来ならそんな軍隊は魔王様率いる魔物の軍勢に勝てはしない。
ところが……
「やつらの主力兵器は機械仕掛けの巨大な動く鎧でな。そいつらが魔法や剣に強い耐性があって、配下の者たちだけでは荷が重い。それだけなら我も含め幹部でなんとかなったのだが、遠距離から太陽光を凝縮したような変な光線をバンバン打ってきてな。我が陣営はアンデットが中心であったこともあって壊滅してしまったのだ。」
機械仕掛けの動く鎧? ……え? それってガン〇ムじゃね? 太陽光を凝縮したような光線ってビーム〇イフル?
そうか……、その可能性を失念していた!
そうだよ! チートの中には宇宙船と一緒に……とかSF系の転生物もあったじゃないか!
俺の今の実力じゃ、そんなやつらと戦うのは非常に厳しいと言わざる追えない。
なんせ宇宙船の攻撃力と言ったら星一つ吹き飛ばせるなんていうのもざらにある。
何より厳しいのは科学技術を使った偵察技術だろう。
宇宙空間から超遠距離で観察されたら手の施しようがない。虫に擬態された小型の偵察機なんて存在も厄介だ。
俺がやっている練習も盗み見されているかもしれない。こちらの攻撃力、防御力は丸裸になっている可能性がある。
対策を取らなければ……
「魔王様、その光線はどの程度の威力でしたか? 一撃で城に穴が開いたりしましたか?」
「いや、城壁を破壊するような威力はなかった。ゾンビ連中は貫通していたがな。城壁はせいぜい熱する程度だな。」
ふむふむ、その程度の威力ならまだなんとかなりそうだ。
いや、そう見せかけてこちらを油断を誘っているのかもしれない。最大出力はどの程度なのかな?
「動く鎧はどれくらいの大きさでしたか?」
「4~5メートルほどだったかな?」
そこまで大きくないな。ガ〇ダムなら18メートルあるはずだ。
あれか? 強度が足りないから大型化ができなかったのか? ガンダ〇ウム合金がないのかな?
「近隣国の強大な兵器について気になるのは分かるがお前はアンデット発生の調査に来たのだろう?」
「はい。」
「その原因が私にあるとしたら……、お前はどうする?」
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