第16話 実戦!
「はい、噂では【荒地】にアンデットが大量に発生していて、それが周囲に流れ込んできているっていう話です。」
「【荒地】?」
「帝国との国境にある植物が育たず、動物もいない赤土が続く場所です。この街から歩きで3日ほど離れたところにあります。」
あ~、魔法の練習に使っている場所だ。
毎日通っているけどアンデットなんて見ないけどな。
「帝国?」
「この王国の隣に戦乱の絶えない土地があったのですが、15年ほど前に一つの国にまとまりました。それがマシーネ帝国です。」
「ではこの街から少し行けばマシーネ帝国に行けるのかしら?」
「荒地を抜けなければ帝国には行けません。荒地は水も食べ物も無い広大な土地です。それに魔法も闘気も使えないそうです。魔物も存在するようで人が荒地を渡ることはできないそうです。」
あれ? 荒地にはアンデット以外の魔物も出るの?
う~ん、俺が練習しているのは荒地の端っこだ。中の方にいるのかな?
「……なるほど。」
俺は荒地でも魔法が使える。
そうできるように練習したからな。
とはいえ、アウグスタみたいな素早く動く魔物とは戦えないだろう。
抜けるだけならびゅーんと飛んでいけば出来そうだけど、空にも魔物がいるかもしれない。
あの乱れた魔力の中、探知魔法に飛行魔法を併用して使い続けるのは難しい。
まぁ、帝国に用事はない。
それよりアンデッドが沸いて出てくるようになったなら俺が使っている練習場所も危ないのだろうか?
「この街にもアンデッドが来ているの?」
「はい、低級のゾンビやスケルトンが来ているようですが、外壁がありますので入ってこれません。兵士や冒険者の皆さんで対応しているみたいです。」
「ゾンビというとあの人の死体が動く……」
「そうです。動きは非常に遅いのですが、痛みを感じず力が強いため、一般人では倒すことは難しいです。逃げるだけなら子供でも逃げれます。ただ、疲れを知らずに追いかけてくるので街の外で遭遇するとかなり厄介なようです。」
ゾンビは動きが遅い。
あ~~とか言いながらよたよた歩いている感じかな?
それなら俺でも倒せそうだ。
「そう……、外壁の無い集落では対応に苦慮されているのでは?」
「マチルダ様が兵を派遣されたそうですし、冒険者ギルドとも協力して事に当たっているようですので大丈夫みたいですよ。それにアンデットは夜間しか活動しません。日中は安全ですからね。」
「夜間にのみ活動……」
アンデッドって日の光に弱いとかよくある設定だよな。
太陽の光に弱い……か。それって陽の気に弱いってことかな?
仮の話だけど、この世界の気が陰陽分かれているならアンデッドは陰の気の塊ってことになる。
アンデッドを近くで観察出来れば、陰の気を感じることが出来るかもしれない。
そこから闘気習得への切っ掛けをつかめないかな?
良し! 早速やってみよう。
その夜、俺は荒地と街の中間地点の上空にいた。
探知魔法を限界まで広げ、周囲の状況を探る。
そうすると人型と思われる生き物がゆっくりとした動作で街や村へ向かっているのが分かった。
このゆっくりと動いているのがゾンビで、やや早いのがスケルトンだろう。
なるべく人里から離れ、一匹でいるゾンビをターゲットにして実験開始だ。
まずこちらの攻撃が通じるかの実験だ。
これが初の実戦となる。
といっても相手が手出しできない上空から魔法を一発放つ簡単なお仕事だ。
普段練習に使っている通常威力の無属性魔法弾をゾンビにぶつけてみる。
「そいやっと」
ドン!!
魔法弾の一撃はゾンビを貫通した。
ふむ、やってきたことは無駄では無かったようだ。
いろいろ試してみよう。
……
…………
………………
各属性魔法であれこれ試してみた。
結果としてどれでも一撃だ。
ゾンビがことさら弱いというのもあるだろうが、それでもやってきたことが形になるのは嬉しいものだ。
30匹くらい倒しただろうか?
レベルアップのような事象は発生していない。この世界にレベルアップのような強化手段がないことはママンから確認済みだ。ただ、俺だけレベルアップみたいな感じのチートがあるかなって思ったんだよ。
俺のチートは一体なんなのだろうか?
魔法の才能かな? 4歳にして世界最高峰の魔力量みたいだし。
それだとしたらしけてるなぁ。あれだけしんどい思いして鍛え上げなきゃいけない仕様はチートとは言わない。
何も努力しなくてさくっと最強が良い。
それはともかく次に移ろう。
ゾンビは脅威とはなりえないことがわかったので安心して闘気の習得へ移れる。
まずは一匹捕まえてみる。
土魔法で落とし穴を作り、落とす。そして蓋をして閉じ込めてみた。
結構な強度で固めたので外に出てくることは無いだろう。
では早速、ゾンビから発しているであろう陰の気を感じ取ってみよう。
蓋の上に立って、ゾンビの気配を探ってみる。
う~ん、魔力的なものはすぐに感知できたけど、気っぽいものはさっぱりだ。
ちょっと腰をすえてやってみるかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます