第5話 魔法の練習

※作者注、1話ごとの文字数がバラバラです。すいません。

――――――――――――――――――――――――――――――


◆ルアーナ視点


うっへっへっへ。


魔力を放出するコツは掴んだ!!

あれから毎日ママンが来ては1分ほど腕輪をつけさせてくれた。

そのおかげかすっかり身に着けることが出来た。


気絶ギリギリまで魔力を放出する。

この気絶する限界も何度か気絶することで学んだ。


最初に気絶した後、ママンは泣いていた。

そして次から腕輪を持ってきてくれなかった。


1度気絶するととんでもない騒ぎになる。

皆とても心配そうにする。

出来るからと言って気絶するほど魔力放出する子供はいないのだろう。

だが、かと言ってやらないわけには行かない。

もう肌で感じるほどに魔力量が増えるのだ。


そう言えば俺の名前が分かった。ルアーナだって。


今も限界まで魔力を放出したばかり。

めっちゃ気持ち悪い。だがそれでいい!

俺の魔力筋(イメージです)が喜び震えている。


気分的には重度の二日酔いになったかのようだ。

ちょっと動くだけでも吐きそうになる。

おっぱいを飲むのもかなりつらい。

だけど食事をしないと今度は命の危険が待っている。


(すべて強くなるためだ! ロリコンに――俺は勝つ!!)


魔力量は増えたが攻撃手段がない。

次はそれに取り掛かるかな?


まずは放出した魔力を固めるところから。

体内では簡単に出来る。

外で行うとどうなるか?

やはり難しい! 何かが邪魔しているような感じがする。

なんだこの抵抗は?

ともかく全く出来ないわけじゃない。

圧縮した魔力をそのままの状態で壁に向かってぶつけてみる。

うん……スピードが出ない。そしてしばらく進むと散らばってしまった。


これは中々難しい。しかしやりがいはある!

とりあえず圧縮したまま壁にぶつけるところまでやってみよう!


魔力量を増やすことと同時に出来るし一石二鳥だね。


……

…………

………………


1歳になるころようやく出来た!


■1歳


壁に魔力をバンバンぶつけていたら慌ててメイドさんが部屋に飛び込んできた。

そして俺しか部屋にいないことが分かると恐怖に顔を歪めていた。

そうだね。赤ん坊しかいない部屋でバンバンと壁を打つ音がする。そんなのポルタ―ガイストだよね。


(ここで練習するわけにはいかないか……。)


外でやろうにもたまに抱っこされたまま散歩する程度。

まだ歩けないからね。

ハイハイは出来る。あと掴まり立ちも……。

膝が怖いくらいに弱い。ぐにゃぐにゃだ。ぽっきりいっちゃいそう。

歩く練習もあるけど、全然安定して立てない。怖い。


それはさておき、1人で外出するにはもう空でも飛ぶしかない。。

まぁ出来るだろう。

もうかなり魔力量は増えた。

魔力を放出することにも慣れ、相当量の魔力を一度に放出できる。

そしてそれを操作することも可能だ。

放出した魔力を操作して物を掴むこともできる。

ただ魔力を集めると真っ黒になるのは気になるところだ。


(俺の魔力は闇属性ってやつなのかな?)


早速飛んでみるか。

魔力を放出して自身を魔力で掴む。

そんで浮かべる!

出来た!!


……が、めっちゃ魔力の消費が大きい!! ぐんぐん減っていく!

あっと言う間に魔力がスッカラカンになってしまった。


(瞬間的に魔力を出すのと、継続して魔力を使うのではやはり消費量が違うな……。)


攻撃魔法は瞬間的な威力を求める。対して空を飛ぶためには継続して力をかける。

100kgの物を1秒持ち上げるより、10kgの物を20秒持つ方がエネルギーを使うわけだ。


(もっと魔力が必要だな。そこはやはり……。)


これもお約束の技法。

外部魔力を使うのだ。

マナとかエーテルとかそんなヤツだ。


さっそく試してみよう。

魔力を放出せずに外部の魔力をただ操作しようとする。


う~ん、手ごたえが全く無いわけじゃない。ただ霞のようなあるのか無いのか微妙なほどだ。

だが、ゼロでも無い。

考えられる要因としてそもそも外部の魔力濃度が低い、もしくは操作できる魔力に制限があるのどちらかだと思われる。

まず魔力の密度だが、これはそれなりにあると思う。

きっと濃い方から薄い方へ流れ出てしまうとかそんな現象があるはずだ。浸透圧的な何かが……。

体内の魔力が勝手に外部へ流れ出ないことから外部の魔力はそれなりの濃さがあるのだろう。


操作できる魔力に制限がある方は心当たりがある。

それは属性だ。

ファンタジー物だとだいたい人によって操作できる属性が決まっているものだ。

こういうのって結構、髪や瞳の色とかと関係あったりするよね。

赤い髪のキャラは火が使えたり、青い髪のキャラは水が使える。

俺の属性は闇。黒目黒髪だしきっとそうだろう。

なにより魔力も固めると真っ黒だもの。


さて打開策として二つあると思う。

俺が他の属性も使えるようになるか、周囲の魔力を俺が使える属性に変質させるか。

とりあえず、両方試してみよう。


……

………

…………

1ヵ月ほど経過した。

結果から言ってダメダメだ。

俺が闇属性のまま、周囲の他属性を使うことは出来ないようだ。

目に魔力を集めるとなんとなく周囲の魔力が見える。それを利用して観察してみると黒い魔力しか操ることが出来ないことが分かった。

俺自身の属性を変質させることが出来れば他の属性も操作できそうだ。

それでも結局、変質させた属性の物しか使えないと思う。

闇から別の属性へ……

これがまた非常にしんどい。なんとなく出来そうなのだけど出来ない。

しんどいがこれは継続して練習する必要があるだろう。

闇属性しか使えないというのは不便極まりないからな。


周囲の魔力を変質させるには結局魔力を消費する必要があった。

そして周囲に散らばっている魔力を変質させてもどんどん散っていってしまう。

散るのを防ぎながら変質させて……ともかく効率が悪い。

魔力を使って変質させるくらいなら普通に放出した方が効率はいい。


そこで逆転の発想を思いついた――というより思い出した。

周囲の魔力を吸収してしまえばいいのだ。

そうだよ。異世界ファンタジー物でもよくある設定だ。

流石に平行世界から魔力を取り出すなんてのはムリそうだけど、周囲にある魔力を吸収するだけなら出来そうな気がする。

ただ吸収しただけではいろんな属性が混ざっていて使えない。

それを黒い魔力――闇属性へ変質させ吸収する。

効率よく変質させるには散るのを防ぐ必要がある。

体内で変質させれば散るのを最小限に押さえることが出来るだろう

つまり自分の体を変換機にする感じだ。


効率よく変換する方法は無いものか?


広い範囲にあるものを変換するのは効率が悪そうだ。

一か所に集めてやった方がいい。

なんとなしに変換するのも良くないだろう。

ぐぐーっと魔力を固めて変換型みたいなものは作れないかな?

やってみたら出来た!


早速やってみよう。

ぎゅーんっと周囲の魔力を吸い込む。

そしてそれを体の中に作った変換型へぐいぐい押し込んでいく。

型に入ったものは俺の魔力と同じ状態に変質させていく。

うん……、はじめてにしてはそれなりの結果になった。

一連の動きに対し消費と吸収量でほんの僅かに吸収が上回っている……気がする……。

これもどんどん練習していこう!


……

………

…………

2ヵ月ほど経過した。

なんとか飛ぶ魔力分を外部から補填することが出来るようになった。

ふわふわと飛ぶ分には何十分でも出来る。

それ以上は魔力というより集中力が切れる。

まだまだ練習が必要だ。


さて、移動手段は確保できた。

攻撃魔法の練習を……。


(あれ? バレずに外へ出るにはどうしたらいいんだ?)


途中で誰かに見つかったら止められてしまうことだろう。

なんせ1歳児だからね。


(そうなると必要なのは……探知魔法だな!)


探知魔法はきっとレーダーのように魔力を飛ばしてその反射で情報を得るとかそんな感じだろう。

魔力は圧縮することで物理的に作用させることが出来る。

逆に薄めれば壁とかは透過できるはずだ。

早速魔力を薄くして飛ばしてみる。


(おぉ……、散ってしまった。)


そりゃそうだな。

散らないように早く遠くまで届くように魔力を工夫する必要がある。

電波のようにできたら理想的だな。


(う~ん……それは無理そうだな。)


電波のように早く魔力を移動できても俺が知覚できない。

あれは設備が在って初めて成り立つ方法だな……。

別の方法を考えよう。


(自分の魔力を広げて、その魔力に触れた物を知覚できないかな?)


つまり接触センサーのようなものだな。

まずは魔力を放出する。

その魔力が触れているものを認識できるかやってみよう。


(どれどれ……わかる……かな?)


なんとなくわかる。そんな気がする。

これも練習だな……。


……

………

…………

さらに2ヵ月ほど経過した。

だいたい魔力が触れた範囲に生き物がいるかどうかはわかるようになった。

魔力もすべての範囲を満たそうと思うと大変だ。

エン!半径4mで十分、つーか、これが限界ってわけにはいかない。

半径4mじゃ足りないのだ。


そこで網の目のように点と点を線で結んで広げる。

これならば少ない魔力で広い範囲を探ることができる。

平面だと上からの奇襲に対処できない。

そこで小さな三角錐が沢山つながった立体状にする。

この三角錐の大きさを調整することで引っかかるものを調整できるわけだ。

人の存在を探るだけなら一辺の長さを30センチくらいもあれば十分だ。

これなら50メートル先まで探ることができる。


攻撃魔法の練習は夜に行うつもりだった。

昼間だと人が結構頻繁に俺の部屋に出入りする。

夜陰にまぎれて移動する分には50メートルも先が分かれば十分だろう。


よし、夜になった。

こそこそと移動開始だ。

鍵が締まっている場所があるけど、魔力を使えば簡単だ。

魔力を固めてそれを使って鍵やドアノブも開けられる。


(う~ん、これって不用心なのじゃないんかな?)


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