第3話冷血姫と……

「あはは……えっとすまないねあの子……紫芽むらめも反省しているからさ」


反省……ねぇ。

その当の本人は未だに俺の後ろで睨みつけてくるのですが。

だが……ずっと睨まれるのは俺でもイラッと来るので俺も後ろを向き、睨みつけると青ざめ直ぐに隠れてしまう。

ふっ……雑魚か……ッ?!

その時、後頭部に衝撃が走り咄嗟に頭を抑える。

後ろを向くと、手刀の構えを取った霧白きりしろがいた。


「君ねぇ……怖がらせてどうするのよ」

「……別にいいだろうが、弱虫は嫌いだし」

「そんなんじゃ友達出来ないよ〜?」

「……居なくてもいい」


友達なんぞ居なくていい……それは弱い奴らが群がって出来る物だ。

ビクビクと震えて、1人では何も出来ず、虫のように気持ち悪いくらい集団で行動し、地べたを這う奴らは嫌いだ。

俺は最強だ……最強にあんな人間弱い奴らと友達に?……聞くだけで反吐が出るぜ。

俺は胸糞悪くなり、ここにいるとムカムカが収まらないと思い、スーツケースを持つと立ち上がり歩き出す。

やっぱり……ここにはいられない……金は掛かるが宿を探すか。


「反生くん」

「あ?」

「……君は彼女をどう思ってるか知らないけど……彼女は弱虫では無いよ」

「……どうかな」


かばいたい気持ち……少しだけ伝わってくるが……ありゃ弱いやつの特徴だ。

自分では何も出来ず、強者の後ろに隠れただひたすらに震えながら毎日を過ごす弱者。

それをどう見たら、弱虫では無いって否定出来るのだろう。


「ありゃ、どう見ても弱者しか見えないがな?まぁいいか……どうせビクビク震える虫のような人生を暮らしていけばいいさ、じゃあな」


そう言い残し俺は踵を返す。

弱者は淘汰される……今ならまだそれを知らずに生きれる。

こんな所から……消した方がいい。

弱者がどれだけ強くなろうと……所詮は弱者なのだから。


「待ちなさい」


今まさにこの場から去ろうと1歩踏み出そうとしたその時。

俺を静止する声が聞こえ、ゆっくりと後ろを振り向く。

振り向きざま、数歩の足音が聞こえてくる。

完全に振り返ったその瞬間、平然としていた呼吸が少々息苦しくなるのを感じる。

その違和感を確かめる為、首元を見つめると、俺の服を鷲掴みにし、グイッと引っ張り挙げられていた。

掴みあげていた手は微小ではあるが……震えていた。

その手を辿って見ると、そこには先程の煽っていたあの笑みではなく。

怒りを込めた睨みつけた瞳を俺に向けていた。


「……なんだよ?」

「……さいよ」


最後の部分だけ上手く聞き取れず、俺は、あ?っと声を漏らす。

何を伝えたいのか俺には分からなかったが、ひとつ分かるのはこれは恐怖で震えているわけではない。

ならば何のか……恐怖でも無ければ、彼女のこの震えている理由。


「今言ったこと取り消しなさい」


怒りだ。

それも今ここで刺し違えてもいいと言う強い意志。

それ察した時、俺はふと笑みが零れたのを自身で感じる。

人の根源は怒りだ……怒りを1度顕にすれば、芋ずる方式のようにうまい事いく。

つまりだ。


「アァ?取り消せ?……する訳ねぇだろ……だだ……俺と勝負して黙らせてられたら……取り消してやる」


こうしてしまえば戦わなざるおえない……いやはや……今日は運がいいぜ。


「……そう……なら……やりたくないけどやってやるわ」


そう言い放つと掴んでいた俺の服を乱暴に離し、1歩下がる。

すると、懐から携帯を取り出し、なにかの操作をし出す。

しばらくし、俺の携帯に通知が入り見てみると霧白からの決闘申請が来ていた。

この都市では揉め事から賭け、ましては交渉に買い物にも決闘をして得る。

全て己の力で解決する……だからこの都市は楽しい。

そして決闘には2種類ある。

ひとつは今みたいに専用端末から相手に申請する野外決闘。

この場合審判は近くにいた第三者が決める。

そしてもう1つは、この場合の勝敗は死ぬか生きるかはたまた、戦闘不能にするか。

もう一つは公式決闘。

これの場合は期間をつけなければ出来ないのと行けないのが難点だ。

野外決闘ならばその場ですぐ出来るのだが、公式は人を選んだり場所を探したりと色々めんどくさい。

俺的にはこっちの方が好きだね。


「いいねぇ……戦場《フィールド》は?」


本来なら受諾した者がせめての情けで戦闘の場所を選ぶ権利があるが、俺はここに詳しくない為、その権利は放棄し、彼女に任せる事にした。


「……第三区にある海辺修練所のそこで君を絞めてあげるよ」


ポセイドン……神話のアレか……だとするとコイツ。


「……まぁ深追いはしないどくか」


そうボソッと言うと携帯端末に待機所へ移動しますと音声が聞こえると、俺の周りには真っ黒な光、霧白と紫芽に青白い光が降り注ぐ。

しばらくし光が収まると、四畳半ぐらいある個室にいた。

中はモニターと机、それに武具が置いてあった。

自分の武具はある為今回は要らないかな。

そう思った俺は机に置いてあった菓子を一つ取り、口へ放り込む。


「さてと……いっちょ暴れるか」


俺を自称最強とかふざけた事言ってきたあの女には……制裁だ。

弱者が調子に乗んなよ所詮群れは弱いものしかいない。

俺は強い……なぜなら事実なのだから。

俺はビシッとしていたネクタイをゆっくりと緩め、携帯の画面に出ていたAre you ready?の下にあったYESを押す。

するとまた先程の光が降り注ぎ、俺を修練所へと送り込む。


「……人工的な海か……」


海の心地いい波打ちの音と共に塩の匂いが俺の鼻を通り過ぎる。

人工的に作ってはいるが、マジで海にいるみたいだ。

ここで戦うのか。


「反生……さん……あ、謝るなら……今……かと」


俺の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。

視線だけで見つめるとそこには事の発端(俺のせいだが)の紫芽がいた。

しかしちょっとだけ感心した。

なんも言えない弱虫かと思ったが、物申す度胸あるんだな。

いや……あるんじゃなく、今だけ持っているだけか。

よく見たら足が震えているし。

そういえばコイツ……なんか似てるな……。


「……謝る?俺の辞書にはない」

「……き、霧白さんは……弱くない……むしろ強い」


その次の瞬間、フィールド内に警報が鳴り響く。

な、なんだ?!

何が起きてるのか辺りを見渡すと、中央に浮いている巨大モニターにWARNINGという赤文字が表示されていた。


「……霧白……さんは」


その後の紫芽の言葉を俺は珍しく動揺する。

そんな少しだけ動揺をしていると、遂に霧白が光に包まれて現れる。

次の瞬間、辺りの海が固まり出す。

その後白い霧が俺の辺りに現れ始め、その奥に人影が映る。


「学園都市のランカー10位……またの名を……冷血姫……」


冷血姫……名前エグッ……。


「降参なら……今のうちだけどどう?」

「……降参?……は!寝ぼけてんじゃねぇぞクソが」


異能力ギフテッド持ちだろうが、流派ロストワークス使いだろうが、魔術を使える奴だろうが……俺が降参する気はねぇ……というかそんなもんいらねぇ。


「強者に降参という文字は無い……お前はどうやら強者では無いようだな」

「時には必要なんだよ?……負け犬の如く逃げ帰るのも」


バチバチと俺と霧白が睨めつけている。


「……こうしてても、埒あかんし……そろそろやろうか」

「……ええ……やりましょう」


お互い1度離れ、己の武具を取り出す。

霧白の武器は細剣の形をした武器を取り出す。

全体的に泡白い色をしており、刀身と柄を繋ぐ場所にリボルバーの弾を装填する部分と同じような穴が3つついていた。

大して反生の武器はどこからどう見ても普通の刀なのだが、外見が違っていた。

全て白1色なのだがまるで装甲でも着いているかのような見た目をしていた。

そのまま反生は刀身をあらわにする。

その刀身さえも装甲で守られており、それで人が切れるのか甚だ疑問であった。


「そんなんで切れるの〜?」


流石に気になったのか、霧白が煽り口調で問う。


「……切れる切れないと言われると……切れないな」


少し素振りをするが、刃が付いている武器が出す風切りの音では無かった。

その音は木刀を振り回すと出るような音だった。

例え最強を名乗る程強くても武器がそんなのでは勝てるワケがない。


「だがな……お前の頭をかち割るぐらいなら行けるぜ」


『両者、位置に付き宣誓と互いに賭ける代価を述べてください』


空中に浮いているモニターから機械音声が聞こえてくる。

その音声の指示の下、両者指定の位置に付く。


「この都市でのすべての出来事は決闘で決める」

「この決闘で負けた者は相手の言う事を聞く」

「決闘は公平の元で勝敗を決める」

「この都市は弱肉強食、勝者は栄光を敗者には……死を」

「「互い、全力を尽くす事をここに誓う」


交互に宣誓を行うと、お互いの前に10秒前のカウントダウンが始まる。

この時、反生は知らなかった。

彼女……霧白の通り名は実はもう一つ存在していた。

その名は相手から畏怖と恐怖を込めた異名。

カウントがゼロになった瞬間だった。


「……は?」


ゼロと同時に動き出した反生は一歩進むとその場に立ち止まる。

立ち止まったのは何故か……それは今更ながら霧白に恐怖したからではない。

ましてや彼女が戦闘を放棄すると言う愚行に走ったわけではない。

では何故か……答えは彼女のもう一つの異名である。


反生は動かないではない……動けないのだ。

金縛りにあった……といえば大体はあっている。

普段通り体は動く。

動けるのだが……動ける場所がないのだ。

紫芽の視点から見ると、反生の上空に……避けれる場所がない程の巨大な氷柱が反生に向かって放たれていた。


彼女のもう一つの異名それは……初見死の鉄血魔女











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