第2話あなたの家です

「ねぇ〜………じゃ……?」


 先が見えない暗闇の中、どこからか、男の途切れ途切れの声が聞こえてくる。

 声に聞き覚えはない。

 全く知らない人物の声だ。


「ちょっと〜……起き……て」


 先程より鮮明に聞こえてきた。

 声はさっきの男ではなく、女性の声に変わった。

 さっきの人物の声は聞いた事ないが、今の女性の声は聞き覚えがあった。

 その声が聞こえた瞬間、抜けきっていた筋肉達が引き締まるのを感じた。

 それと同時に心臓が激しく動き始めた。


「おーい、起きなよ〜弱者くん☆」


 先程の声が鮮明に聞こえたその瞬間、倒れていた体を勢いよく起こす。

 心臓は先程よりも早くなり、自身では見えないが、目が血走っている感覚がある。


「誰がァ……弱者だってぇ!!??……霧白ぉー!」


 そして起き上がったと同時に声の当人の方にストレートキックを繰り出す。

 ドンッ!と骨と骨がぶつかり合う音が部屋中にぶつかりあった。

 反生はせが放ったストレートキックを霧白は片手で受けて止めていた。

 そしてそのまま流れるように反生の死角に入り込むと、掌底を腹部に勢いよく当てる。


「ッ!」


 ちょうど食道辺りに深く突き刺さると、途端に激しい吐き気と激痛がする。

 掌底が腹部に入り込んでくるのを感じたと同時に激痛が反生に襲いかかる。

 息を整えようと、一呼吸するが酸素が供給されず、むせ返る。


「……息できないだろ?結構いい所に突き刺さったからね〜」

「まぁまぁ……ゆっくり話そうよ、弱者くん」


 地面が舐めれるぐらいまで倒れ込む。

 流石の反生も、この激痛は耐えられなかったようだ。

 そのまま彼は霧白を睨みつけ、この女……いつか必ず絞めるっと心の中で決意する。


「あの〜、霧白先輩この人って」

「?……この子は新しく私達の学校に入ることになった自称最強君だよー」


 自身の皮肉を再度言われ、俺の堪忍袋は爆発仕掛ける寸前だが怒っていても仕方ないと思い少し我慢する。

 我慢して……後でこのアマを泣かす……。

 それは置いておいて、首だけ動かしてもう一つの声の方を向く。

 反生の少し後ろには薄紫色の髪色、片目に前髪が掛かって、三つ編みが作られていた。

 顔つきからして女性だろうか……まだ幼さが残っていた。

 こんな大人しそうな奴もこんな殺伐とした都市に来るなんて物好きもいた者だな……っと思っていると後ろにいた女性が反生の目の前に来る。

 足のつま先しか見えない為、女性の顔は見えない。

 少し経つと何かじっとこちらを見ている気配を感じ取った。


「……」


 殺意は感じられず、興味本位で見ている感じだ。

 その気配はどうやら反生の前にいた女性からだった。

 何か話したいのか、ずっとこっちを見ていた。


「……おい女」

「ヒッ」


 ゆっくりと女性のとてもキラキラした翡翠色の瞳が目に一瞬だけ映ると、視界が部屋の壁が映った。

 何が起こったのか少し左右を見る。


「あはは……すまない彼女は人見知りでね……後君の顔が凶悪だからね」

「人見知り……か……って誰が凶悪だ!」


 自慢ではないが、中学校では俺の親友悪友が勝手に地元のミスコンに出場させられた事があった。

 まぁ、出場を勝手に決められたが……そう言うのにクソほど興味がないし出る気はサラサラなかったのだが……まぁ半ば強制的に出されてしまった。

 今でもその事は恨んでいる。

 とまぁそれでやってみたのだが、イケメンだったらしく一位になった。

 なお、その大会の景品である十万円が貰えるはずだったが……あのバカ共に奪われた。

 あの時はあの三馬鹿悪友共を半殺しにしたなぁ。

 いい思い出だ。

 っとまた脱線してしまったが、と言う事で俺の顔はイケメンのはずだ。

 だから怖がれる事はないはず。


「あ、一応言っておくと君の顔はイケメンはイケメンだけどほとんどは凶悪犯顔負けの極悪だけどね」


 俺の考えが分かっていたかのように霧白は俺の頬を人差し指で突くとグリグリと俺の頬をねじ込むように回し始めた。


「テメェいい加減!……ん!」

「ありゃ?」


 流石におもちゃにされて堪忍袋の緒がブチッと音は聞こえはしなかったが、俺の中で何かが切れる感覚はあった。

 頬にあった指を押しのけ、声を荒らげ叫ぼうとした。

 その寸前俺の口に何か細い棒みたいな物が突っ込まれた。


「ッ?!」

「……あらら〜……私の指そんなに舐めて美味しのかな?」


 俺は急いで口に入った人差し指を取り出すと、勢いよく距離をとる。

 無意識に体が動かすと、概ね回復しているようだ。


「き、霧白さんのゆ、指が……け、穢れ……穢れて」

「?」


 ドロっと俺の唾液まみれになってしまった指を見た翡翠の瞳の女の体が震えていた。

 それはまるで、好きな人がやられてしまい、怒っているような気配がした。


「ちょ!ま、待て!」

「許さない」


 その瞬間、雑魚キャラが言いそうな事を言った瞬間、そんな言葉が聞こえたと同時に翡翠瞳の女の周りに赤の魔法陣が展開されると、巨大な火の玉が現れる。

その火の玉が綺麗に見え、俺に向かって放ってくる。

何とか避けようと思ったが、体がまだ言うことを聞かせれず、俺の体に少しだけ触れた瞬間、宿が破壊されない程度の爆発し、俺は爆風で吹き飛ばされた衝撃で意識を失う。

失うちょっと前、俺は……あのジメジメ女を絞め殺す事を心に決める














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