第1話 自称最強

 モノレールのホームで胸糞悪い輩を成敗し、モノレール乗り場から出ると、懐のポケットに入れていたメモを取り出す。

 そのメモには、オリュンポスでお世話になる宿が記されていた。

 本当なら、誰かの世話にはなりたくないが、そうは言ってられない。

マンション借りるにも資金はない。

友達の家に居候するにもオリュンポスに知り合い……というか友達という類の人はいない。


 唯一の救いは学生寮ではない事である。

 メモを裏返すと、その住所と、管理人の名前、それからこのメモを渡した人の名前と電話番号がのっていた。

 裏を見終えると、表に戻し、メモに載っている道筋を辿っていく。

 メモに載っている道のりを歩いて数分、宿向かっていくにつれて、徐々に体が重くなり、憂鬱な気分になっていた。

 正直気乗りがしない。

 それから、しばらく歩いているが中々宿につかなかった。

 現在地を知るために、携帯でマップを開くと、検索欄に宿の名前を入力すると、宿の場所とは真逆の位置にいた。


「ウッソまじかよ」


 と、つい口に出てしまうほど驚いていた。

 昔から道に迷うことは何度かあったから、この状況は慣れているが、ここまで酷いのは初めてであり、少々焦っていた。

 見ていた携帯から目を離すと、目の前はずっと暗闇が続いており、両端にはビルの壁があり、どこかの路地裏にいるとわかった。

 このままじっとしていても何も始まらないし、マップを見ても分からない。

 そして、約束の時間まであまりなく、遅れるのはまずいかと思った俺は薄暗い路地裏を歩いていく。

 歩いて行くたび差し込んでいた光が失っていき、冷たい風が吹き抜けていく。

 しばらく歩いていくと、暗闇に突如一つの光が差し込んでくる。

 反生はその光に向かっていく。

 光は大きくなりやがて視界いっぱいに満たされ、反生の目の前に一軒の家が会った。

 外見は木造のアパートになっており、階層は三階建てになっている。

 アパートの周りは木の柵が囲んでいた。

 木の柵には看板札が貼っており「シェアハウス東柳荘」と書かれており、メモに書いてあった言葉と一致していた。

 そしてこの時反生は姉一つの疑問が浮かび上がってくる。

 それはここを紹介したある人物の言葉だ。


『えっとね、一人暮らしができる場所見つかったから、学校始まる前に行きなよ〜』

 

 ……と、少し調子乗った声で人をおちょくってんのかっと思いかける。

 それはさておき……シェアハウス……え、は?っと言いかけると、脳内である人物の言葉と、看板札を見まくる。

 もしシェアハウスだったら、丁重にお断りをして家探そうと決意を固める。

 それにそうだよな……ここじゃないよな、紹介したあいつが嘘つく訳ないよな……。


「……まあ一応」


 一歩踏み出し、玄関まで歩いて行くと、扉の横にピンポンが置かれており、押し込む。

 ピンポーンと機械音が扉の向こう側から微かに音が聞こえてくると、「はーい」っと女性の声が聞こえてくる。

 声が聞こえた瞬間、嫌な予感が反生の背中をゆっくりと突き刺してくる。

 ちょっと待っていると、足音が少しずつ近づいてくると、扉が開く。

 そこには、体中傷だらけが目立ち、片目には眼帯をしている女性が現れる。


「はいはーい……?……あ、君だね、反生君だね」

「……ああ」


 どうやら……俺は騙されたかもしれない。

 どっからどう見ても、この傷だらけの女性がここの寮母でも管理人にも見えなかった。

 その理由は、今目の前にいる女性は学生服を着ており、腰には武器を携帯していた。


「私は霧白きりしろだ、よろしく頼むよ」


そう霧白は言い出すと、片手を反生の前に突き出し、握手を求めるが、フルシカトをかました反生であった。


「馴れ合いをしにここに来た訳じゃないんだよ」

「……話は『奈留祇なるかみ』先生から聞いているよ……自称最強くん」

「あ?」


 反生が言い捨てると、霧白は微笑んだ顔を崩さず、手を引っ込めた。


さっきの言葉に反生は腹が立っていた。

優しい口調の中に皮肉を入れてくる。

その皮肉は反生の耳の奥もそれにイラついたのか、咄嗟に反生は鋭く尖りまくった

双眸を霧白に向けると同時に一般人の胴体視力じゃ追いつかない足の速さで霧白に踵落としを繰り出す。

我ながら……これを避けれた人間と耐えた人間を俺は知らないね。


「……な……マジか」


今起こっている現状を見た反生は、自分の目を疑った。

人間の本来の動体視力、身体能力でさえ、避ける事ができない反生の蹴り……普通なら、視界には霧白はいなくなっている。。はずだった。

実際は、反生の足は青白く、痩せ細った棒のような腕で受け止められていた。

その腕を辿ると、霧白本人だった。

一体その細々とした腕にこんな力隠していたのか、不思議だ。

呆気に取られていると、霧白の微笑みが見えた瞬間、横腹と正面の腹に衝撃が走り出し、そのまま衝撃波が体を通過していく。


「グハッ!」


そのまま俺の体は自然と床に倒れ込み、意識が遠のいていった。

意識が消えかける寸前、霧白ともう二人誰かの声が聞こえてくるが、そこで記憶が消える。



 

 

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