第4話 その日の夜

その日の夜の事だった。


「ロッテ、今日からここで寝るといい」


夕餉を終え、クラージュが用意してくれたお風呂を終えた後、ロッテは声を掛けられた。


「え、あ、ありがとうございます」


そこには、彼女の小さなサイズにぴったりの、木でできたベッドが用意されていた。


「女の子の趣味はわからないから、とりあえずハートを彫っておいたよ」


と笑顔で言う彼に、ロッテは嬉しいのと恥ずかしいのとで顔を真っ赤にするしかできなかった。


 その様子を見て、クラージュは嬉しそうに尻尾を振った。


「もしかして、クラージュさんがこのベッド作ってくれたんですか…?」


恐る恐る尋ねるロッテに対し、クラージュは満面の笑みで答えた。


「そうだよ、君の為に作ったんだ 君だけの【特別】なベッドだよ」




 特別…なんだろう、そんな言葉は私の記憶にあっただろうか。


ロッテは少々の頭痛を覚えながらも、顔を綻ばせながら、自身のベッドに触れた。


やはりクラージュの人柄というべきか、狼柄というべきか、とにもかくにも彼の優しさが伝わってくる


そんなベッドだった。




「きっとぐっすり眠れると思うから、安心しておやすみ」


クラージュはそっと、ロッテの頭に手を置いた。とても、とても大きくて安心する手だった。


そしてロッテは「あっ」と声をあげると、クラージュを見て言った。




「ありがとう クラージュさん」


その言葉にクラージュはふふっと息をこぼしながら言った。


「クラージュ、で良いよ、新しい家族が増えたんだ。そう呼んでくれたら僕も嬉しい。」


そして、大きなその手でロッテの頭をわしゃわしゃと撫でた。




あからさまな子供扱いではあったけれど、今のロッテにはその優しさが、たまらなく嬉しかった。




そして、クラージュの手がランタンの火を消して部屋の明かりが消えたとき、ロッテは意識を手放すかのように、深い眠りに誘われていったのである。




彼の言った通り、ぐっすりと、安心して眠っていった。

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