第九話 その名は舞姫
日もだいぶ傾いてきたけれど、まだ夕方と呼ぶには早い時間帯。
オルカが付き合ってくれたおかげで、昨日よりも随分多く薬草を採ってくることが出来た。
もう少し粘ることも出来たのだけれど、今日は買い物をする時間を残す必要があったため、少し早めに切り上げて冒険者ギルドに戻ってきた私達。
するとギルド内には昨日ほどの混雑もなく、早めに戻った冒険者がちらほら見える程度だった。
「よかった。これならそんなに待たなくて済みそうだね」
「うん。今日は張り切って、少し採りすぎたから」
一緒に採取をしてみて、オルカは凄いなって改めて思った。
薬草を見つける速度が、私とは段違いに早いのだ。私がうっかり見落としてしまったものも、オルカは決して見逃さない。
曰く、彼女のジョブである【レンジャー】は観察力にも優れているのだとか。
近接戦も飛び道具も操れて、気配を隠すのも上手い。もしかしてオルカって、私が思ってるよりもずっと凄い冒険者なのかも知れない。
そんな彼女のおかげで、私は両手に沢山の薬草を抱えているわけだが、いかんせん持ち運びに難がある。私が無邪気な子供だったなら、服の裾を掴み上げて、簡易ポケットを作って持ち運んでいたかも知れない。カンガルーとか、ド○えもんとか言って、シャツの裾を引っ張った経験は無いだろうか? あれである。服が伸びるからやめなさい! ってやつ。
でもそんなお転婆なことをすれば、パンツ丸見えの痴女だもの。しかも仮面つけてるし、需要がニッチすぎる。流石にそんな誰得なことはやらない。
オルカはちゃっかり布袋を持っていたらしく、らくらく運搬だ。一緒に運ぼうかとも提案されたのだが、それだと私の薬草が袋を圧迫して、オルカの集められる量に余計な制限をかけてしまうからね。遠慮しておいた。
二人して買取カウンターに薬草を出すと、なかなかの量におじさんも苦笑い。
それでもちゃっちゃと質を見極めていくおじさんの手際はお見事というほかなかった。もしかしてこれもスキル由来の能力か?
買取金額は、私が一一〇〇〇デール。金貨一枚と銀貨一枚だ! 金貨だよ金貨!
一方オルカは流石の二七〇〇〇デール。す、すご……! どうやら薬草だけじゃなく、モンスターがドロップする魔石とやらが薬草より高く売れるらしい。
それに薬草の量も、普通に私より多かったし。まぁ薬草をドロップするモンスターもいるのだから、そりゃそうなるか。
それでも普段の稼ぎに比べたら、きっとずいぶん少ないんじゃないだろうか。オルカの実力を見れば容易に想像がつく。
お金を受け取り、買取カウンターを離れる。このあとは買い物だ。
必要なものはたくさんあるけれど、今日オルカに付き合ってもらって、どうしても入手するべき最優先アイテムを思い知った。
武器だ! 私もモンスターから自分で身を守れるようにならなくちゃ。それに魔石も欲しいし。魔石が取れれば稼ぎも増えるはず!
オルカを促し、早く買い物に行こうと急き込む私。
「ミコトさん、こっちこっち」
「…………」
が、あの人が呼ぶ声がする。私達の担当受付嬢である、スキル大好きソフィアさんだ。
出鼻をくじいてくるね。いや、昨日ギルドに立ち寄ったなら必ず顔を見せろ、みたいなことは言ってたから、失念していた私が悪いんだけどさ。
手招きしている彼女のもとへ行くと、私とオルカが今日も二人で行動していることに意外そうな顔をする。
「今日はオルカさんの姿も見えないと思ったら、ミコトさんとご一緒だったんですね」
「ええ、まぁ。薬草を採りに行くと言ったら、どうしても一人で行っちゃダメだって」
「全く仰る通りです。オルカさん、グッジョブ」
「任せておいて」
サムズアップしてみせるソフィアさんに、キラーンと目を光らせて応えるオルカ。
いやいや、仰る通りじゃないから! 私、一人で出来るもんだから!
「昨日は一人で行かせてくれたのに、なんでソフィアさんまでオルカに同調してるんですか」
「いえ、一人で行かせる気はありませんでした。ミコトさんが飛び出して行ったんです」
「うっ」
「その結果恐い目に遭ったでしょう?」
「うううっ」
全く言い返せない。確かに思い返してみると、ソフィアさんの言葉を遮るように出ていった覚えがある。
てっきり私を自宅に招くために引き止めているのだと早合点した、私の落ち度だ。反省文だなこれは。
あーなんてことだ、ソフィアさんにも頭が上がらなくなってきたぞ。
「大丈夫。ミコトは私が守るから」
「オルカ……!」
「あの人見知りでおどおどしていたオルカさんから、そんな言葉が飛び出すとは……。それで、今日の成果はどうでした? ああ、細かい額まで言う必要はありませんよ」
冒険者には色んな人がいる。中には性格に難のあるような人も。だから、下手に今日いくら儲けたんだぜ! なんて話をしていると、目をつけられる場合があるのだとか。
なので原則として、具体的な金額は伏せて話をする、というのが暗黙のルールのようになっているのだそうだ。
昨日よりだいぶ良い感じだった、ということを伝えると、ソフィアさんはなるほどと頷いてみせる。
それからオルカにも、私の活躍はどうだったとか、危ない場面はなかったか、などなど幾つか質問をしていた。
こういう感じで担当冒険者の状態を把握してるんだな。ちょっとした診断でも受けてる気分だ。
それから少し話し、私達はギルドを後にした。
うっかり話がスキル方面に流れそうなところで、するりと離脱したオルカの手並みは流石だった。ソフィアさんへの対処に高い熟練度を垣間見た気がした。
★
正直昨日は、あまり街並みをしっかり見ている余裕はなかった。今は顔も隠しているし、何よりオルカが隣りにいる。安心感が違う。
だからお上りさんのようにあちこち見回しては、アレはなんだコレはどういうことだと都度オルカへ質問を投げた。
オルカはその度、慈愛に満ちた笑みをたたえながら分かりやすい解説をしてくれる。オルカママ!
結果、ここはなかなか大きな街なのだということを知った。アルカルドという所らしい。
交易が盛んなため大抵のものが揃っており、武器屋一つ取っても何軒か存在しているそうだ。
治安はそれほど悪くないらしいが、かと言って昨日のような人攫いなんかを平気でやる人間も貧民街には存在するとのこと。
だから決してそういう場所に立ち寄ってはいけませんよと、オルカにしっかり言い含められてしまった。
とりあえず初めに足を向けたのは、最優先と決めた武器屋。
オルカがそれならばと、よく利用している店を勧めてくれたので、そこへ向かうことにする。
嵩張りそうな雑貨等は後回しだ。お金がどれくらい残るかで、買うものも変わってくるしね。
そうしてしばらく歩いて辿り着いたそこは、それほど大きな建物ではなかったが、いかにも通好みって雰囲気漂う渋い店だった。まぁ他の店を見たこと無いから、存外これが普通かも知れないけどさ。
掲げられた看板には……読めん。困り顔でそれを見上げていると、オルカが察して読んでくれた。
オレの武器屋、と言うそうだ。わぁ……コンビニのプリンみたいな名前だ。
オルカの後に続いて店に入る。するとそこには、思わずときめいてしまうような光景が広がっていた。
リアルの武器屋である。所狭しとあらゆる武器が陳列されており、刃物から打撃武器、飛び道具に至るまでしっかりカバーされている。
正直質を見極めるような目は持ち合わせていないのだが、今の私にとっては質などそれほど問題ではない。どんなものであれ、とにかく武器を手に入れることが何より重要なのだから。
それに俗な考え方ではあるが、こんな渋い店で質の悪い商品を扱っているとも思えない。何よりオルカの行きつけだもの。
しかしだとすると心配なのは値段なのだが。投げ売り品、みたいなものはないだろうか……。
店内をキョロキョロ見回していると、奥の方から力強い声が聞こえてきた。女性のものである。
「いらっしゃい! おお、オルカじゃないか。そっちのは連れかい?」
「うん。ミコトっていうの」
「あ、どうも。新米冒険者のミコトです」
「そうかい、私はオレネ。この店の店主だ。オルカが人を連れてくるとは、あんた余程気に入られてんだね」
「えへへ、私もオルカのこと余程気に入ってますからね。ソーシソーアイってやつです」
「ミコト……」
カウンター奥から声をかけてきたのは、赤髪で背の高い女性だった。筋肉質で、冒険者と言われても疑わないだろう体つきをしてはいるが、恐らく鍛冶仕事で鍛えられたものだと思われる。だって武器屋の店主だし。
口調や声の感じから、裏表のない豪快な人なんだろうな、というのが伝わってくる。男勝り、というやつだ。
そのくせ目鼻立ちは整っていて、頼れる姉御のオーラが半端ではない。性別問わず多くの人に慕われてそうな印象だ。
「それで今日は、ミコトの武器を選びに来たって所かい?」
「あ、はい。でもあんまりお金なくて……初心者用の、手頃なものがあるととても助かるのですが」
「ふむ。どういう武器を使いたいって希望はあるかい?」
「いえ、武器ならなんでも使えると思います」
「……なんだって?」
武器のプロに対して失言だったかと焦り、私はとっさにスキルの効果でそういう事が可能なのだと伝えた。
万が一ソフィアさんみたいに食いつかれてもあれなので、スキル名などの詳しいことは伏せておく。っていうか、詳しいことは私自身も分かってないのだし。
「ほぅ、そいつは良い! あんたの話が本当なら、最高に私好みの客ってことじゃないか!」
「オレ姉、何考えてるの」
「おいおい、そんな怖い顔すんなって。ちょっと協力してもらおうと思っただけさ」
「オレ姉ってあだ名ですか? 私もそう呼んでいいです?」
「この流れでそこにツッコむのかよ……呼び方は好きにしな」
とりあえずついてきてくれと促され、オレ姉に続いてオルカと二人、店の奥へと足を踏み入れていく。
関係者以外立入禁止であろうそこは、無骨な造りの工房になっていた。職人の仕事場だ。
室内温度は高く、金属を熱するための炉は明々と光を漏らしている。
作りかけの武器や、その部品と思しき小さなパーツなどが散見できた。設計図なんかを書いた紙も散らかっており、雑然とした印象を受ける。
工房のさらに奥の扉を抜けると、裏庭に出た。そこには軽い運動の出来そうなスペースが有り、ここで武器の試し振りなんかをオレ姉自ら行った後、気に入ったものだけ店頭に並べるらしい。気に入らなければボツにするそうな。
オレ姉はおおよそ二十代前半くらいだろうか。若いのに職人気質なんだなぁと、彼女の人柄を垣間見た気がした。
そんなオレ姉は、少し待っていてくれと私達を置き去りに屋内へ引っ込むと、何かを抱えてすぐに戻ってきた。
ドサリと、大きな木箱を地面に降ろしてこちらに向き直る。
「実は私の趣味は、新しい武器を自分で考えて試作することなんだ。剣でも槍でも弓でもない、新しい武器の形を考えては自作するのが楽しくてな」
「はっ……! 分かります! 私の考えた最強の武器! ってやつですね!」
「おいおいなんだよ、話がわかるじゃねぇかミコト!」
「そうすると、協力してほしいというのは」
「ああ。私の作った試作品を、試用してみて欲しいってこった」
それは私が中二病全盛期の頃のこと。ある日ふと考えたのだ。剣や槍みたいなありふれた武器じゃなく、私だけのオリジナルな武器があったら素敵だな、と。だから当時の私のノートには、ヘンテコな妄想武器のデザインがわんさか描かれている。
黒歴史だとは思わない。なぜなら今もなお、私は中二病だから。中二病っていうのは、長引くと少しずつ体に馴染んでいくものなんだよ。
何が痛くて、何が痛くないのかが少しずつ分かってきて。だけれどときめきを捨てられない。だからラインを越えないよう上手いこと歩み始める。
そうやって私は、心に中二男子を宿したんだ。
さて、そんな私の心を滾らせる夢のカタチが、まさかこんな風に目の前に現れようとは。流石に想像だにしなかった。
私は胸を高鳴らせながら、置かれた箱の中身を覗き込む。
そこには、かつて私がノートに描いた妄想を実体化させたような品々が詰め込まれていた。
たまらず目頭が熱くなる。そう、これだ。これだよ! 一見どうやって扱うのかも分からないような奇っ怪なデザイン。けれどそこには、確かな情熱が詰まっているんだ。たとえ実用的じゃないとしても、大した問題じゃぁない。それは使えないんじゃない。使い手を選ぶ武器ということなのだ。
しかし問題は、これらの武器種が謎な装備に、私の【万能マスタリー】がその名に恥じぬ働きを見せてくれるかということ。
「もしこの中にあんたの使いこなせるものがあるなら、お代はいらない。持ってっていいぜ!」
「オレ姉!! くっ、なんて熱い人だ! 分かったよ、私も全力で取り組もう!」
「なんだか疎外感……」
「ならオルカはスパの相手だな。あんたなら容易いだろ?」
「任せて」
斯くして私は、箱の中に詰まったトキメキアイテムたちを片っ端から試していった。
武器を握った瞬間、ろくな説明も受けていないのに使い方が感覚で理解できるという、不思議な感覚を何度も味わった。私のスキルは、どうやら伊達や酔狂で万能を冠しているわけではないらしい。
最初こそ、実戦武器でオルカとスパーリングをするということで、かなりおっかなびっくりだったのだけれど。しかしオルカの的確な捌き方に安心し、私は武器をとっかえひっかえしながら使い心地を一つ一つじっくり試していった。
中には生前ネットで見かけたような、実在した珍武器によく似たものもあった。世界が変わっても、行き着く先って似かようものなんだな。
そうしてその何れもを、私は使い慣れた相棒のように操ってみせる。
そう言えばオルカにはまだスキルのことを話していなかったため、私が思いがけず動けることに目を丸くしながら、真剣に取り組んでくれた。
「ハハッ、おいおいおい、何だよミコトお前! なんでそんな完璧に扱えてんだ! やべぇ、私の武器が生き生きしてやがる……!!」
「想定外の挙動とか、ギミックとか、すごく厄介……!」
「それでもちゃんと対応してくれるオルカは、さすがだねっ!」
釘の飛び出すナックルを見事に回避し、私の連打をものともしないオルカ。まったく一撃当てられる気がしない。いや、実際当たってしまっても困るんだけどさ。
ステータス差もあってか、意表をついたギミックを完璧なタイミングで発動させても、見てから回避余裕とでも言わんばかりに対処されてしまう。多分俊敏性のステータスがもの凄く高いんだと思う。やっぱり凄いなオルカは。
そんな私達のスパーリングを見ながら、オレ姉は子供のように目を輝かせてはしゃいでいた。気持はよく分かる。
彼女のオリジナル武器は、その何れもが物凄く癖の強い、到底一般ウケは狙えないような品ばかりだった。だからこそ趣味だと割り切って死蔵させていたのだろうから。
そんなものを扱いこなせる人が突然現れれば、そりゃ興奮するだろう。
生前私もロボゲーで、とんでもなくピーキーなロマン機体を作ったことがある。しかし初めは上手く操れなくて悔しい思いをしたものだ。
けれど練習を重ね、頑張って乗りこなし、リプレイ映像で機体が生き生きと動いている様を見た時の感動は多分、オレ姉が今抱いているそれに類するものだと思う。
頭突き特化のヘルメットを外し、私はまた新たな武器を手に取った。
それは四本の片手剣を柄頭で合体させた、大きな手裏剣のような武器だった。
剣は分離してそれぞれ普通に片手剣として扱うことも出来るようだ。だが、四刀流など二本しか腕のない人間には困難極まるだろう。
が、【万能マスタリー】を持つ私にはどうやら、それが可能らしい。
オルカを相手に、踊るように無数の斬撃を繰り出す私。
テンポよく合体と分離を使い分け、時に片手剣、時に両剣、時にジャグリングのように。更には飛び道具としても。
結果、これまでで一番オルカを追い詰めることが叶った。がしかし、一本を取るほどの快挙には至れない。実力の壁は果てしなく高いようだ。
「ぜぇ……はぁ……張り切りすぎた。体力的にもう無理なんですけど……」
「いや十分だ。良いものを見せてもらったよ」
「ミコト、お疲れ様。こんなに戦えるなんて、私ミコトを侮っていたみたい。ごめん」
「私こそ、スキルの説明してなかったね。後でちゃんと説明するよ」
地べたに尻餅をついて息を切らせた私に、オルカがタオルを差し出してくれた。
礼を言って受け取り、汗を拭って呼吸を整えていると、自慢の武器たちを愛おしげに眺めていたオレ姉が改めて声をかけてくる。
「正直に言うと、半信半疑だったんだ。多くの武器を使いこなせるジョブやスキルってのは、確かに聞いたことがある。だが、それはあくまで既存の武器に限った話だと思っていたんだ。こんな剣とも槍ともつかないようなおかしな武器を自在に操れるやつが現れるなんて、正直思ってもみなかった」
「オレ姉……」
「それがまさか、全部だぜ? 全部、私の想像を超えて完璧に使いこなしやがった……感動したよ。約束通り、好きなものを持ってってくれ! ミコトに使ってもらえるんなら、こいつらも本望だろうしな。なぁ、どれが気に入った?」
スキルを介さずに作った武具は、ガラクタ呼ばわりされる。昨夜オルカはそう教えてくれた。
オレ姉はあれらの武器をスキルで作った。だから勿論ガラクタなんてことはない。けど、それを使う側はどうなんだろう。
もしかすると戦闘においても、同じ様なことが言えるのかも知れない。マスタリーや、それに近いスキル、或いはジョブの有る無しで、武器の扱いには大きな差が生じる。
マスタリースキルの対象外アイテムは、武器を振るう者にとって実質ガラクタと大差ないのかも知れないな。
だとするなら、既存の武器種から外れた物を好んで作るオレ姉には、酷く長い孤独の道だっただろう。
たとえオレ姉のオリジナルを気に入る人がいたとしても、スキルの恩恵はきっと得られない。ただの技術だけであの癖の強い武器を扱うことになる。
誰にも上手く扱ってもらえない武器を作るのは、きっと楽しい半面、とても寂しかったんじゃないかな。
だから私は、確かに縁というものを感じている。私なら彼女の武器を、きっと誰より上手く扱えるから。
「何が気に入ったって? 全部だよ! どれも最高に使いやすかった!」
「ははははっ! 欲張りなやつだなぁ。いいぜ、それなら全部持ってくか?」
「ううん。そんなに持てないよ。気に入ったのは全部だけど、一番私好みなのは最後に使ったやつかな。かっこいいし、振ってて楽しかった」
「私にとっても、あれが一番厄介だった。ミコトに合ってる気がする」
四本の剣を組み合わせた、風車のような形の武器。
その名は【舞姫】。もともと名前なんて考えていなかったらしいが、私がそれを振るう姿を見て閃いたらしい。いや姫とか、恥ずかしいんだけど。
一応、本当にお代はいらないのかと確認した所、そもそもが趣味で作ったものだから、大した素材は使っていないらしい。
なので実際、品質的には初心者が持つような安物の武器とそう変わらないのだとか。
舞姫を持ち歩く用にと、サービスで四本分の鞘とそれを取り付けられるベルトもつけてもらった。
それらを身に着けた私は、一見すると四刀流の剣士だ。やばい、かっこいい! 本当にこのお店に来てよかった!
オルカに見せて自慢する私に、オレ姉が声をかけてくる。
「そいつで力不足になる頃には、もっといい素材で新しいの作っといてやるよ」
「じゃぁ、その時はちゃんとお代を払えるように頑張って稼いでおくね!」
「オルカ、こんな逸材うっかり死なせるような真似するんじゃないよ!」
「大丈夫。ミコトには私がついてる」
オレ姉に見送られて武器屋を出る頃には、いつの間にやら二日目の夕暮れが迫っていた。
私達は急いで残りの買い物を済ませると、昨日と同じく二人して宿屋へ帰るのだった。
思いがけず武器がタダで得られたため、今日の夕飯は昨日よりしっかり食べられた。
初日はどうなるかと思ったけど、この調子で明日からはもっと稼ぐぞ!
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