第五話 トラブルメイカー

「きゃーきゃータスケテー、コロサレルー」

「いいから早く出口に向かって下さい!」

「いえ、ミコトさんの勇姿を見届ける義務があるので、それは無理な相談です」

「チェンジお願いします! この人やる気ありません!!」

「悪いが、冒険者は一度受けた依頼をそんな理由で投げ出せねぇぞっと」

「ひっ!」


 試験官のバームおじさんが小手調べとばかりに振るった剣は、空恐ろしい迫力を纏っていた。

 剣道の経験があるわけでもなし、私が初めて目にした剣撃というもの。無論加減はされているのだろう。

 それでも、かなりビビった。

 ビビったけれど、冷静さは失わなかった。何故なら、何となくそれをいなせる確信めいたものがあったから。

 

 ゲームで鍛えた動体視力も、案外馬鹿にできたもんじゃないなって思った。

 体捌きと盾、そして木剣を駆使してバームおじさんの剣撃をいなしていく。

 どうしてだか力負けすることもなければ、反応が遅れるということもない。体が私の想像を超えて動く。


「へぇ、やるじゃねぇか」

「どう、もっ!」


 さながら、武術の達人でも体に宿ったかのような感覚。私はただタイミングを見極め、体に意思を伝えるだけ。

 ここが攻め時。次は受け流して。今度はガード。

 まるでゲームでもしているような感覚。【キャラクター操作】っていうのはまさか、この感覚のことを言うのかな? それとも【万能マスタリー】に由来するものなのだろうか?

 ともかく。対戦ゲームとあらば私はちょっとしたもんだぞ。


 おじさんの繰り出す剣に合わせ、私は盾を突き出した。インパクトの瞬間、瞬発力を込める。

 小気味いい音を鳴らし、剣を大きく逸らすことに成功した。

 ガチのアクションゲーマーは1フレーム刻みの世界で生きている。無論、私も例外じゃない。一瞬体勢が崩れれば、それでチェックメイトだ

 次にどう動くべきか不思議と分かる。私は直感に抗わず全力でゴーサインを出した。

「チャンス。ここに一撃入れたい」と、そう考えただけ。

 それだけだったんだ。

 

 次の瞬間、おじさんの肩口に私の木剣はめり込み、痛みに顔をしかめたおじさんを間髪入れず盾でかち上げた。

 体幹が異様にしっかりしているおじさんだったが、それを物ともせず仰け反らせ、そこに回し蹴りを叩き込む。突き出すように放ったそれは、おじさんの鳩尾を的確に捉え、ふっ飛ばした。

 信じられるかい? 私がやったんだってさ。信じられないよ。

 

 信じられなかったので、おじさんを蹴飛ばしたあと僅かに息を呑んでしまった。

 が、今は試験中だった。そんなことしてる場合じゃない。

 

「ソフィアさん、失礼します!」

「へ、あ、へぇぇ!?」


 私はおじさんが復帰するより早く、お姉さんをお姫様抱っこして駆け出した。

 全然重いと感じない。なんでだ。力が溢れてくる、なんて感覚はないんだが、これくらいなら問題なくこなせるっていう確信はあった。

 駆ける足も普段の私からは信じられないような脚力でもって、地面を泳ぐように蹴り進む。

 歯を食いしばって追いかけてくるおじさんを寄せ付けることもなく、むしろ引き離し、私はお姉さんとともに訓練場出口の扉をくぐったのだった。

 

 一体、私の体に何が起こっているんだろう。

 あまりの予想外な出来事に、腕の中のソフィアお姉さんも、逃げ切られたおじさんも、そして他ならぬ私自身、開いた口が塞がらないまま少しの沈黙が流れた。

 

「……お嬢ちゃんあんた……一体何もんだ? 膂力も身のこなしも、とても新人のそれじゃねぇぞ」

「あ、あはは……スキルのなせる業、ですかね?」

「やはり私の目に狂いはありませんでした……!!」


 そこからは、バームおじさんの追及をどうにかやり過ごしたり、検証検証うるさいソフィアお姉さんをひたすらスルーしたりするのに無駄な労力を割いた。

 私の冒険者資格試験の結果はどうだったんだ、という話が出来るまでに結構時間がかかってしまった。

 おじさんはまったく問題無い。合格だと大きく頷いてくれ、お姉さんは手続きがあるからと去っていった。

 私はと言うと、後で呼ぶからロビーで待機していて下さいとの指示を受けたので、倉庫で装備を外し、ロビーに戻ってから再びの待ちぼうけである。

 

 ロビーでじっとしていると、やはりジロジロとした視線を感じる。

 さっきっから、丸腰の女子がそんなに珍しいのだろうか? 私の容姿なんてこの世界ではさして珍しくもないだろうに。


 嫁を作っているときは確かにノリノリだった。完成した日には、これ以上美しい存在はありえない! って確信して言えたもんさ。

 でも、実際それが自分の体になったら、不思議とそんな自信は消え去った。それにこの世界の人達って造形のレベルが凄く高いからな。私なんて霞んで埋もれるに決まってる。

 だから、ジロジロとこんなに視線を感じる理由が分からない。

 

 それにしても一方的に見られ続けるというのも良い気はしない。どんなやつがこっちを見ているのか少し気にもなったので、それとなく視線の主を探ってみる。

 視界の端っこで捉えるように、こっちをジロジロ見ている人たちの風体を確認すると、いろんな冒険者に受付嬢までもがチラチラとこちらを気にしているようだった。

 こっそり控えめに視線を投げてくる者もあれば、不躾にガン見してくる者もある。

 鬱陶しいことこの上ないし、彼ら彼女らが何を考えているのかも分からないからとてもモヤモヤする。

 

 しかしその中に、私は見つけてしまった。とんでもない美人さんを!

 黒く長い髪。切れ長の目。息を呑むほど整った顔立ち。そして強者のオーラ!

 年の頃は私とそう違わないだろう。物静かな佇まいは、実力者の貫禄のようなものを感じさせた。

 そのくせどこか落ち着きのない視線で、ちらちらこちらを窺っている。

 分かる。私には分かるぞ! 一見クール系超絶美人! でも実は人見知りの恥ずかしがり屋っていうギャップを隠していると見た!

 他人と距離をおいてぽつんと一人で居るところや、時折見せる困り眉。それにこちらをチラ見する時の目は、何かを案じているように見えた。

 是非お話してみたい! これは、何が何でもお近づきにならねば……!


 鼻の穴を膨らませながら、私が黒髪美人の冒険者に近づこうとした、そのタイミングで声がかかった。

 ソフィアさんがカウンターから私を呼んでいる。手続きが終わったらしい。

 くそぉ、いいところだったのに!

 だが今はお預けだ。あの娘も気になるけど、手続きを終える方が先である。

 私は早足でカウンターへ歩み寄り、ソフィアさんの向かいに立った。彼女はそれを確認し、早速一枚の金属板を差し出してくる。

 

「お待たせしましたミコトさん。こちらがミコトさんの冒険者証になります」

「おお! おおお!! これが皆の憧れ、冒険者の証!!」

「おめでとうございます。たった今より、ミコトさんは新人冒険者です」


 お姉さんの短い祝辞に、たまらず目頭が熱くなる。中二病を患って約三年。まさかこんな日が来るなんて……。

 この私が異世界で、まさかの冒険者デビューかぁ。感慨深いどころの話じゃないな。


 改めて受け取ったそれに視線を落としてみる。 

 冒険者証は、例えるなら金属製の運転免許証みたいな大きさ、厚さだった。色は銀色で、何で出来てるのかはよく分からない。

 だが触った感じ頑丈そうだし、これなら持ち歩いても簡単に壊れたりしないだろう。濡れても平気そうだし。


 最後に、冒険者証に魔力を登録するよう指示された。

 魔力を流し込むようにと言われたのだが、意味が分からない。ときめいてはいる。

 どうやれば良いのかと素直に問う私に、ソフィアさんは「冒険者証に手を添え、むむむと念を送るようなつもりで集中すれば大体なんとかなります」だなんて適当なことを言ったけれど、実際出来てしまったので驚きである。

 その際感じたのは、私の中に生じた未知の感覚。これが、魔力の流れというやつか! ほんの微量、私の中のそれが冒険者証に流れた気がした。するとなんかかっこいい印に赤い色が付き、登録の成功を教えてくれた。

 っていうかやっぱりあるんだね、魔力!! ドキドキが止まらない!

 

 嬉しさと興奮のあまり一人ではしゃいでいると、お姉さんは構わず淡々と冒険者についての説明を続けた。

 この人、業務となるとホント真面目だな。

 

「ミコトさんは冒険者となられましたが、等級は最下位。Fランクとなります」

「出たな! 謎のアルファベット等級制度!」

「あるふぁべっと……? まぁともかく、Fランク中は研修期間のようなものと考えてください」

「なんかアルバイトみたいですね。したこと無いけど」


 ソフィアさんの説明によると、Fランク冒険者とは文字通りの見習いであり、ギルドの仕組みや依頼を果たしてお金を得るという手順を実際体験し、覚えていく期間なのだと言う。

 そのためFランクからEランクへの昇級は簡単で、担当の受付が資格十分と見なし次第、昇級試験を受けることが出来るのだと。また試験があるのかぁ。

 

「というか、担当って何です?」

「はい。冒険者それぞれに一名の担当者が付き、実力に合った依頼の斡旋や、昇級資格の判断などを行います。受注依頼は原則として、受付を介した斡旋により受けることになりますから、受付が効率よく、より確かに冒険者の実力やコンディション等を把握することで、依頼の達成率、冒険者の生還率等を引き上げるために考案されたシステムですね」

「なるほど。じゃぁ、担当さんが不在だとお仕事ができなかったりするんです?」

「いえ、そのようなことはありませんのでご安心を」


 担当受付以外からも依頼の受注は可能だが、その場合比較的安全マージンを重視される傾向が強いため、より難しい依頼に挑みたいのなら担当との相談が必須となるらしい。

 結構しっかり考えてあるもんだなぁ。もっと自己責任の世界だと思ってたけど。

 

「加えて、常駐依頼や賞金首というものもあります。それらはあちらの依頼ボードに貼り出されていますので、後ほどご確認下さい」

「おお! 依頼ボードで常駐依頼が確認できるのか……読めないけど」

「ご安心を。ミコトさんは担当の私がバッチリ導きますので」

「えっ、いつソフィアさんに担当が決まったんですか?」

「正式にはまだ決まっていませんが、私がミコトさんの担当を誰かに譲るはずがないでしょう」

「あ……はい」


 ソフィアさんの薄く浮かべた笑みに、異様な迫力を感じた。

 これ、完全に目をつけられてるよな。まぁ良いんだけどさ……知り合いができたのは喜ばしいことだし。

 

「常駐依頼ですと、報告義務は発生しません。直接買い取りカウンターで素材等の売却を行って下さい。……ですが、ミコトさんは必ず私に顔を見せに来てください。担当受付権限で、強制です」

「なんですかその謎権力! そういうのパワハラって言いません?」

「そんな言葉は知りません」


 異世界だから通じないのか、知らんぷりなのか。なんかこの人に逆らうと面倒くさそうだから、一応言うことは聞いておこう。くそぉ、綺麗な花には棘があるってこういうことなんだなぁ。

 まぁいいや。とにかくこれで一応仕事ができるはず! ほんとに一文無しだから、今日の宿代くらいはなんとか稼がないと!

 

「早速ですけど、私に出来そうな仕事ってありますか? 切羽詰まっているので、確実にお金になるようなやつが良いんですけど」

「それでしたら焦る必要はありませんよ」

「い、いやいや、さっきもチラッと言いましたけど、私本当にお金がなくて……」

「大丈夫。それなら私の家に来れば良いのです。歓迎しますよ」

「な、何か恐いので、謹んでお断りします」

「宿代も要りませんし、食事も出しますよ。三食昼寝付き! 何ならお小遣いの支給も!」

「私をヒモにでもするつもりですかっ!」

「いえ、どちらかと言うとモルモ……なんでもありません」


 い、今なんて言おうとしたこの人!? モルモット? モルモットって言おうとしなかった!? この世界にもいるの? っていうかヤバい気配しかしない!

 きっとお世話になる見返りに、私のスキルを徹底的に調べ上げた挙げ句、最終的には傀儡とかにされたりするんだ!


 ……とは警戒するものの、流石に冗談抜きで本当にヤバいときは、流石に頼らせてもらうかも知れない。が、今はその時じゃない!

 そもそも、結局満足に親孝行できなかった私が、異世界に来てまで他人に甘えてなんかいられないだろ! 自分の力で出来ることは自力でやらねば!

 

「いいからお仕事下さい! 常駐依頼って言っても、私字が読めないんでソフィアさんが頼りなんですよ!」

「ふふ、嬉しいことを言ってくれますね。とは言えFランクになりたてのミコトさんに斡旋できる受注依頼は準備がありませんので、常駐依頼の中からお勧めのものを、という形になりますが」

「お金になるなら大抵のことはがんばりますよ!」

「あ、それでしたら私のスキル研究にお付き合い頂ければ、報酬は弾みますよ?」

「それ今考えたプライベートなやつでしょう!? ちゃんと正規のやつにして下さい!」


 ソフィアさんはやれやれと言った具合に小さく肩をすくめ、渋々薬草採取の常駐依頼を提案してきた。

 薬草採取! 新米冒険者のド定番じゃないか! これは胸が熱くなるな。


「正直なところを言うと、ミコトさんにお仕事を任せるのは不安なのです」

「なっ……流石にちょっと傷つきますよ、それ。確かにゴミステータスの新米ですけど……」

「確かにそれもあるのですが、ミコトさんが一人でうろついていると、いつ誰に襲われたり攫われたりしても不思議ではないため心配というか……」

「? いやいや、私みたいなのを攫っても誰も得しませんし。そんな杞憂のために渋られても困ります」

「……それを本気で言っているのでしたら、あなたは自分の価値をもっと慮るべきです。現にあなたを狙っている人は、既に少なからず存在するはずですよ。本当に注意するべきです」

「忠告は有り難いですけど……。でも、お金がなければ野宿することになるので、より危険じゃないですか」

「だから私の家に――」

「薬草採りに行ってきます!」


 低ステータスのことじゃないのなら、ソフィアさんが何を心配しているのかいまいちよく分からない。攫われる? 何のために?

 そもそも私からすれば、私のことを狙ってる人筆頭はソフィアさんだと思うんだが。

 心配してくれるのは嬉しいけど、本当にお金が必要なんだ。甘えて厄介になるつもりもない。

 やっとお金を稼ぐ目処が立ったんだから、なんとか夜までに出来るだけ多く薬草を集めてこないと!

 

 しかし一応忠告には従って、警戒して行動するつもりではある。もしかしたら私が考えてるより治安が悪いって話かも知れないしね。日本育ちの私は、確かにその辺の警戒心が弱いのは否定できない。

 ギルドが思いがけずちゃんとしてたもんだから、尚の事気が緩んでもいた。ソフィアさんは私の油断を見抜き、それを引き締めようとしてくれた……というのは強引な解釈かな。


 ともかく、容姿もこの世界基準だと普通。ステータスはゴミ。スキルは喧伝しない限りそう知られることもないだろうし、私を攫うメリットなんて無いんだ。

 だから危なそうな場所に近づかないよう注意していれば、事件に巻き込まれるようなこともないはず。

 

 私は一応用心のため人通りの少ない道を避けつつ、まずは薬草を取り扱っていそうなお店を探すことにした。

 なにせ私は薬草の現物を見たことがない。知識もへったくれもないんだ。どこに生えているかもさっぱり分からない。だからまずは情報を集めなければならない。

 急がば回れだ。日暮れまでどれだけ効率的に動けるかが勝負! 成果を出せなければ、こんな世界で野宿決定という、それこそ危険な事になってしまう。

 女子が一人で野外泊だなんて、流石にカモがネギを背負ってるようなものだ。

 その場合、とても不本意だがソフィアさんを頼らざるを得ないだろう。

 そうならないために急いで情報を集め、なるべく多くの薬草をギルドへ持ち込まなくてはならない。

 

 土地勘のまったくない道を苦労して歩く。時折美人なお姉さんを見かけては声をかけ、道を訪ね、また歩く。

 そんなことを繰り返し、なんとか薬屋さんで薬草の見た目や見分け方、採れる場所なんかを教えてもらい、張り切って足を早めるのだった。

 

 

 ★

 

 

 受付カウンターからミコトさんが早足で出ていくのを呆然と眺め、続いてその後を追うように何人かの男たちが出ていくのを見た。やはりとても心配です。

 突然彗星の如く現れた期待のスキルホルダー、ミコトさん。

 訓練場で見せた、彼女の力は間違いなくスキル由来のものだったのでしょう。彼女自身の驚いた表情がそれを証明していました。

 何がどう機能してあのような身のこなしと、低いステータスを補ってみせたのか。考察するだけで丸一日だって簡単に潰せそうな興味の塊です。


 とはいえ、普通の冒険者であればここまで身を案じることもないのですが。彼女は明らかに危険です。

 どうやら本当に自覚が無いようでしたが、あの人間離れした美貌ははっきり言って凶器です。

 彼女のような浮世離れした美貌の持ち主が、あろうことか一人で無防備にうろついていれば、トラブルが起こらないわけがない。

 ロビーでも完全に浮いていましたし。ミコトさんの美貌に圧倒されて男性冒険者の誰もが声をかけるどころか、近づくことも出来ないなんて。普段の彼らを知っている身としては、何かが起きる前触れを感じずにはいられませんでした。

 放っておけば、きっと碌なことにはならない。そんな確信があります。


 それに問題はもう一つありますね。それは彼女のステータス。軒並みとても低く、まるで病弱な子供のような値でしたが、中でもHPは酷い。

 その数値たるや、たったの3。ちょっとしたことで死んでしまいかねない。本当に冒険者資格を与えてよかったのか……。とても心配です。

 通常、一般人の平均ステータスは大体10程とされています。しかしHPに関してはその約三倍、30前後が平均値です。

 つまりミコトさんは、冒険者でもないただの一般人と比較しても、その十分の一しかHPがないことになる。だからこそ彼女を一人で行かせたくなかったのですが……。


 彼女を私の家に招こうと思ったのは、確かにそのスキルが興味深かったから、というのも大きな理由です。しかしそれ以上に、彼女の安全を思わばこそでした。けれどミコトさんには変に警戒されてしまったようです。

 しかしかと言って、今から打てる手が何もないわけではない。

 ロビーを見回すと、目当ての冒険者を見つけることが出来ました。人見知りな彼女は、なかなか担当の私以外から依頼を受けようとはしません。この時間にここに残っているというのは、私がミコトさんにかかりきりだったため、今日の依頼を受けそびれたのでしょう。

 

「オルカさん。ちょっとよろしいですか?」

「?」


 呼びかけに反応し、こちらへやって来るオルカさん。

 私は手短に要件を伝えます。すると彼女は二つ返事で了承し、すぐにギルドを出て行きました。

 彼女のランクを思えば、不相応な頼み事をしてしまったかも知れません。

 

 ですが未知のスキルを守るためなら、職権乱用と言われようと構いません。じゃなくて、将来有望の新人を守るのは、担当受付の義務です!

 私は受付嬢の矜持を滾らせながら、彼女らが出ていった出入り口を見つめたのでした。

 ミコトさん。どうか、無事に戻ってきてくださいね……!

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