第14話 独り

 その日の帰りのことである。僕は六花を待った。気になったのだ………真相が。どう言うことなのか、僕には合点がいかなかった。だから、ハッキリさせるべきだと………数十分待って、ようやく彼女と対面した。


「あれ、先帰ってるんじゃなかったの?」


「いいだろ。たまには。」


「まぁ………いいけど。」


 どこか少し、彼女は嬉しそうであった。


「ま、それはそれとしてだ。1つ聞きたいことができてな。」


「何?」


「六花を虐めてた奴が不登校になったって話についてちょっとな。」


 それを言い終えると、六花の表情が冷たくなった。


「………聞いたんだ。」


「あぁ。曰く、六花が仕返しをしたからだと………これデマだろ?」


「うーん、どうだろ。」


 一瞬、頭がポカンとなる。何を言っているんだ?自分のしたことだし、それに………六花は何もしてない筈だ。なぜそんな答えが出てくる?


「どう言うことだ………?」


「まぁ、簡単に言えば半分デマ。半分本当くらいかな。」


「わからん。マジでどう言うことだよ?」


「仕返しって程の仕返しじゃないよ。さすがにイラっと来たからさ………胸ぐら掴んで壁に押し付けてやった。まぁ結局はその日以降その子は来なくなったんだけどね………本当に私のせいなのかな………?」


「ま、まぁ………そうだな。」


 少し、整理が追い付かなかった。昔の六花なら間違いなく誰かに助けを求めた。何が………何がそんなに………。


「ちょっと解んないって顔してるね。でもさ、全部独りで解決しようとしたらこうするしかないんだよ。誰にも頼らず、独りで生きていこうとするには。」


「え………?」


「私はさ………蓮にフラれた日から独りで生きていけるように努力してた。だってそうしたら蓮を忘れることが出きるから。頼る存在を作らなければ、思い出すことなんて無いから。そのために頑張った。何だってそつなくこなせるようにした。私は、望んで独りになったの。」


「………。」


 何も言えなかった。何も考えれなかった。考えたくもなかった。そうか、全部僕のせいだったんだ。恋は盲目とは………言ったものだな。


「まぁ、そう言うこと。ともかく話を戻すと、あいつに何があったか、なんて私は微塵も興味がないし知らない。」


「そこは………少し安心した。」


「………ちょっと責任感じてる?」


「いいや。」


「嘘つきめ。」


 そう言うと彼女は僕の口元にあった手を取った。高らかに掲げ、そのまま僕に迫る。そうして、じっと見つめる。正直、凍てつくような気分であった。


「もう、嘘はやめて。私も本当をさらけ出した。だから、蓮―――――。」


「あぁ………責任くらい感じるよ。」


「別にいいのに、これは私がなりたくて選んだ道だから。」


 真っ直ぐ、彼女の瞳は僕を見据えていた。


「いいや………ごめん。」


 ただ、そう呟くことしか僕にはできなかった。冷や汗が垂れる。そうだ………僕は六花に恐怖していた。

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