第8話 本音
とある日の昼休憩、ふと六花にこんなことを聞かれた。
「蓮って今、どんな人がタイプなの?」
「あー…それ聞くんだ。」
「ちょっとした興味本位だから変な勘違いしないで。」
表情を崩さず目だけ外す六花を見つめ、少し考える。まぁここで僕も嘘を付くような意味はないか………今度こそ正直にはなそう。
「正直な、今は好きなタイプとか解らないんだ。」
「こういう人がいいとかって無いの?」
「無い。」
「即答だね。」
「まぁ、しばらく恋愛みたいなのはいいかなって。」
「そっか。」
「でも、どうして急にこんなことを?」
「言ったでしょ?興味本位って。」
「………目、ちゃんと見ろよ。」
しばらくポカンとした後、六花は気がついたらしく顔が真っ赤になる。やっぱり根っこは変わらねぇな………相変わらずのポンコツ。安心するよ。
「はぁ………馬鹿ばっか。」
「なんで僕今罵られたんだ?」
「ちょっとはこう………乙女心を気遣うみたいなのはできないの?」
「あぁ………。」
その一言で、僕は全て察した。
「なによ………。」
ふてぶてしく、六花はそう言う。
「いや、やっぱりまだそうなんだなって。」
「………!?そうってなによ!そうって!!」
先ほどまでの冷たいトーンから豹変し、そう声をあげる六花。そこまで恥ずかしがるとは思わなかったが………。
「あぁ、悪かった悪かった。だから落ち着けって。他の人来るかもしれないぞ?」
「あ、あぁ、そうね。でも、そうって訳じゃないから。」
ちゃんと目を見て話してくれた。まぁ、どっちが本当なんだか。
「解ったよ。」
「解ってないでしょ。」
「解ってるって。」
「………なら許す。」
はぁ………相変わらずでよかった。なんだかんだ、六花の本質は変わってないみたいだ。少し安心した。もっとも………僕が変えてしまったわけだけど。
「ありがと。」
「でも、意外だね。中学の時は彼女ほしいって言ってたのに。」
「あぁ………まぁね。色々あって。」
「………酷いフラれかたされたんだ。」
「あぁ………そうだね。」
「でも解んないな。新川さんでしょ?そんなに酷いフラれかたすることある?」
「まぁ、僕もそう思ってたよ。でも、実際そうされた。」
あのときの台詞は未だにこびりついてる。時々反響するくらいには僕にショックを与えた。
「何て言われたの………?」
「あー…驚くなよ?『ちょっと優しくしたくらいで図々しい。』って。」
「え………マジ?」
「マジ。」
普段のあの優しい性格からは絶対に出てこないであろうと思っていたが………これが本当に出てきていたわけだ。恐ろしいことこの上ない。
「そりゃあその後の学校生活相当気まずかったでしょう………?」
「いやそれがな、夏休みが空けて早々にどこかに引っ越したみたいなんだよな。」
「そうなんだ。」
「まぁ、それ以来ちょっと恋愛するのが怖くてな。タイプとかも無いなーって、そう言う話だ。」
「なんか、ショックだけど安心した。」
「どっちだよ。」
「さあ?」
そう言って六花は昔のように笑う。僕が傷つけてしまったはずなのにどうしてこの人は………笑えるのだろう。
「………ひとつ聞いてもいいか?」
「うん。」
「僕が傷つけてしまったわけだろう………それなのに、どうして笑えるんだ?」
「まぁ、色々あるんだよ。」
そう言って六花はまた昔のように笑ったのだった。
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