第2話 闇堕ち
と、六花につれられ僕は廊下まで来ていた。冷たい視線が僕を射抜き続ける。
「あの、六花………これは………。」
「気にしないこと。」
「え?」
唐突な言葉に、驚きを隠せない。
「それは………何を?。」
「私に関する話。蓮は意外だと思うけど………これが今の私だから。」
「………何があったんだ。」
「………いいや、何にも。」
「相変わらず嘘が下手だな。目を外す癖、直した方がいいぞ。」
「いや………何でもないよ。本当になにもない。」
いや、なんでもはある。まぁ大方予想はついているさ。僕が答えを言えなかったのだから………僕のせいだ。だけど………腑に落ちない。なぜここまで変貌したのだろうか。
「まぁ………そう言うことだから。戻ろ?」
「え!?気まずいって………。」
「なんで?」
「何でって言われても………そりゃ…あ………。」
ふらっと、立ち眩みが僕を襲った。
「蓮、どうかしたの?大丈夫?」
一瞬、あのときのような姿が垣間見える。
「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと寝不足なだけだ。」
「全くもう………何してるんだか。ほら、いくよ?」
「あぁ………。」
いやはや、にしても本当に今の六花の影響力は凄まじい。教室に入った時のあの静寂と言ったら………僕は到底戦えたもんじゃないが、六花はあくまでも堂々としていた。少し仲良くなっただけですがどうかしましたか?と言う………オーラで解らせに来ていた。
クラスメートもそれを察し、それ以上は言及しなかった。
そうして、何事もなく午前の授業は終わり昼休みに突入した。教室に残っていたのは僕と六花の2人だけ。
「さてと………蓮、聞かせてもらうわ。」
開口一番に六花はそう言った。
「………何を?」
「あのときの答え。私の告白に対する答えだよ。」
今朝の冷やかな目線はどこえやら、どこか嬉しそうな彼女の目がこちらを覗く。
「忘れたとは言わせないよ?あの日………私は聞いた、
「忘れねぇよ………僕はその質問から逃げた。結局怖かったからだ。だけど………逃げたまま3年が経って………今、ここにいる。」
「そう言うこと。だから聞かせて?あのときの答えを。」
「僕は………今だからハッキリ言わせてもらうけど、あのときどちらにも好きって感情はなかった………。」
「は、はぁ?なにそれ?私の窮屈だった3年間………どうなるのよ………。」
流石にそこまでは管轄外な訳だが、実際悩んでいた身からすればそりゃあそうだろうな。
「悪い………結局あのあと新川とも付き合ったわけでもなく、何事もなく………。」
「はぁ………なんか馬鹿みたいに悩んで損した気分だわ………本当、ショックで何度死のうと思ったことか。まぁでも、元気そうでよかった。」
話しているうちに、徐々に氷で固められていたような表情が綻んでいっているのが解った。段々と、僕のよく知る六花になっている。
「あぁ、ありがとうな。こっちも、あのときみたいな六花が見れてよかったよ。」
「え?あ、あぁ………この事は内緒で………ね?」
「………はぁ、了解。」
所謂、今の面子と言う奴だ。僕はそれを汚さないように立ち回ればいい。簡単な話だ。にしても………ともすれば六花が豹変した理由って言うのはなんだ?まぁ、踏み込みすぎるのもよくないもんな。その時が来たら話してもらえるかもしれないし。
「あ………。」
「どうした?蓮?」
「いや、ちょっとこれ………ヤバイ。」
「は?」
次の瞬間、僕は座っていながらその場に倒れた。意識など無い。恐らくは………疲れだろうな。
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